ユ メ ジ デ
「おっ、俺、なのか?」
「あっはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは」
それ、いや、彼のノイズは消えていた。声変わりのしていない、あどけない笑い声。
彼は、俺に抱きついてきた。
「お兄ちゃん、理解して。分かって。お願い」
彼は泣いている。俺はなんだかいたたまれない気持ちになった。
「なんで俺がいるんだ? お前は俺なのか?」
彼は無言で頷き、俺の胸から顔を離した。そして少し笑って駆けて行った。彼はジェットコースターの階段を登っていたのだ。咄嗟に俺も追いかける。
「おい! ちょ、ちょっと待て……」
彼は聞く耳を持たずにジェットコースターへと向かって行き……飛び乗った。瞬時、発車のベルが鳴り始める。
ジリリリリリリリリリリリリリリ……
「まっ、待て!」
時既に遅し。コースターは発車してしまった。
俺は階段を急いで降り、地面から走り出したコースターを眺めた。
丁度てっぺんで……彼は落ちた。
慌てて駆け寄る。彼は傷だらけだ。辺りに鮮血が飛び散っている。
「お兄ちゃん、ぐっ、ゲホッゲホッ……分かった?」
その言葉を最後に彼は消えた。跡形もなく。
理解したくはない。だが、分かってしまった。
俺は死んでいる。中学一年生の時に。ジェットコースターから落ちたのだ。
これで全てが繋がった。よくよく考えてみると俺は高校生だが高校に行った記憶がない。というか、ここ数年の記憶がない。
僕は夢の中にいたんだ。夢路を彷徨っていたんだ。
もう、現実を見たい。辛く、寂しくて、苦しいけれど。
「この遊園地もニセモノなんだろう? 俺の想像なんだろう?」
秋風に語りかける。それに答えるように風が風景を切り裂く。視界が文字通りひび割れていく。
俺は都会のど真ん中に立っていた。メリーゴーランドもなく、ジェットコースターもなく、ただ高層ビルが立ち並んでいる。帰宅中のサラリーマン達の後ろ姿を見ながら。
「ここも、都会になったな」
なんて心の中で呟いた。同時に俺の手が、足が、体が消えていく。
残夏の穏やかな暖かい風が、ビル街にひっそりと吹いた。それに気づいた数人のサラリーマン達は。
「また夏に逆戻りですかなぁ」
なんて笑って我が家の帰路を歩んで行った。




