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異能調査官 作者:まさし

1章 断ち切れない女

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9話

康介が発砲した銃弾を受け、飯田イイダは衝撃に耐えられず後ろへと倒れこんだ。
肩に走る激痛に飯田は思わず肩を手で押さえると、ぬめりとした感覚が伝わってきた。
濡れた手を恐る恐る見た彼女はようやく自分が銃で撃たれたことに気がついたらしく、驚愕の表情をうかべたあと、叫び声をあげた。
そんな彼女の様子を見ていた康介は渋い顔をしながら舌打ちをする。心臓を狙ったつもりが目標をはずしたことに苛立っているのだろう。

(やはり銃は苦手だ。)

康介は一瞬そんなことを考えたが、すぐには気持ちを切り替え銃を構えなおす。今度は外すわけには行かない。康介はそう思い玄関に踏み入ると半狂乱になっている飯田との距離をつめる。そして再び飯田の心臓に狙いをつけた。

「何をしているんですか、相場さん!」

康介が引き金を引こうとした瞬間、近藤が慌てて康介の右手に飛びついてきた。

「何をするんだ!近藤さん。」
「いきなり撃つなんて何を考えているんです!」

康介は近藤を振り払おうと、つかまれた右腕を振り回す。そんな康介に対し、近藤は必死の形相をうかべながら、放すまいと必死に食らいついてくる。

「相手は異能者だ。遠慮する必要はない。」
「彼女が異能者かどうかなんて、まだ分からないじゃないですか!」
「可能性があるだけで十分だ。異能者かどうかなんて相手を殺したあと調べればいいことだ!」
「そんな無茶苦茶な!」

康介は何とか近藤を振り払おうともがくが、近藤の体格は康介よりも大きいため康介の力では振りほどくことができなかった。
力ずくで抜け出せないことに焦った康介はどうやって近藤を言いくるめようかと思案していると、飯田香織がポケットからカッターナイフと取り出す姿が見えた。飯田はそのまま取り出したカッターを康介目掛け大きく振り上げる。

「近藤さん、離れて。」

康介はそう叫んだあと、近藤の腹部目掛け右足でおもいっきり蹴飛ばす。蹴り上げられた近藤はたまらず、康介から手を放し後ろに倒れこむ。それは飯田香織がカッターを振り下ろすよりわずかばかり早かった。
何もない空間にカッターを振り下ろす飯田の意図は理解できなかったが、康介は即座にそのことを思考の脇に押し込み、右手の銃を飯田に向ける。その瞬間、康介は右手に凄まじい違和感を覚えた。

(右手が軽い?)

持っているはずの銃の重さが急になくなったことを不思議に思い、康介は右手に視線を送る。すると、自らの右手が手首から先がないことに気づいた。

(どういうことだ?)

突然の出来事に一瞬呆ける康介。ふと足元に視線を送ると、銃を握ったままの自らの右手が地面に転がる様子が目に映った。

(右手を切られたのか!?くそ。薄気味悪い。)

右手がないのにその感覚は途絶えていない。康介はその奇妙な感覚に嫌悪感を抱く。
康介が右手をなくし戸惑う姿を見て、飯田は自分が優位にたったこと知り凶悪な笑みを浮かべる。飯田は恐ろしい笑みを浮かべたまま、再度康介目掛けカッターを振りかぶった。

「近藤さん!部屋から出るぞ、今すぐに。」

康介は叫びながら玄関を飛び出てドワの脇に隠れる。近藤は事態を飲み込めていない様子だったが、康介の焦る姿を見て恐怖を感じたのだろう。不恰好に這い蹲りながら玄関から転がり出る。
二人が玄関から脱出したことより一テンポ遅れ。飯田がカッターを振り下ろす。その一撃は空を切り、ビルの手すりを真っ二つに切り裂くのであった。
攻撃が外れたことを悟った飯田は、憤怒の形相をうかべ康介をにらみつける、それを見た康介はたまらず、ドアを蹴り扉を閉めることで、飯田の視線から逃れる。ドアが閉まったあと少しの間をおいて中から鍵を閉める音が聞こえた。

なんとか飯田をやり過ごすことができた。康介はそのことに対して安堵を浮かべた次の瞬間。ないはずの右手に走る激痛に、康介はたまらずめき声を上げる。

(カッターで刺された?しまった、銃を手放してしまっ…)

康介が自分が犯したの失態に後悔する暇もなく、室内から銃声が2発鳴り響く。その後やってきたあまりの痛みに康介は悲鳴をあげ、涙ながらに転げまわるのであった。

「どうかしました!?相場さん」

康介の突然の奇行に対し,近藤は心配そうな顔つきで康介に声を掛ける。そんな近藤に対し、康介は何も言わず、手首から先がなくなった右腕を差し出し近藤に見せつけた。

「どうしたんですか、その手は!?」

康介の惨状を見て近藤は、驚きの声を上げた。

「相手がカッターを振り下ろしたら右手を持っていかれた。どうやら、対象の異能は、距離が関係なくカッターを振り下ろした直線上にあるものは何でも切断できるらしい。切断した右手は部屋の中に忘れてきちまった。」
「そんな…それじゃいまの銃声は。」

事態を理解したの近藤の表情が驚愕で歪む。それに対し、康介は目に涙を浮かべながらないはずの右手をさするような仕草をした。


「カッターを刺されて、思わず銃を放しちまった。何も撃つことないだろ!くそ野郎め。」

相手を先に銃で撃ったことを棚に上げ、康介は相手を一方的に攻め立てる。

「これではっきりしたな、相手は異能者だ。よかったな。これで心置きなく銃をぶっ放せるぞ。」

近藤に対して非難めいた言葉を口にする康介、そんな康介の言葉を受け近藤はいたたまれない気持ちになった。

「すみません、私が余計なことをしたばかりに…」
「そんなこと気にするな。ようやく面白くなってきたところだ。近藤さん銃で鍵を壊してくれ。」
「このまま突入するんですか…その、応援を要請したほうがいいんじゃないですか?」
「事態は一刻を争う。相手も手負いだ。早くしてくれ近藤さん。」

予想していた事態を超える出来事に遭遇したためか、近藤はしり込みをしたかのような弱気な態度だ。そんな様子に対し、康介は堪えきれないのか急かすようにドアを開けるように要求した。


「迷っている暇はない。近藤さん早く。」
「その…私は…」
「…近藤さん。銃を貸してくれ。」

なおも言いよどむ近藤に業を煮やしたのか、康介はうろたえる近藤から無理やり銃を奪い取ると、鍵穴目掛け銃弾を打ち込む。2発ほど打ち込むと鍵は壊れ、ドアを開けることができた。
壊れたドアを康介は乱暴にこじ開ける。そこには既に飯田香織の姿はなく、残された血痕が部屋の奥まで続いていた。

「対象は奥に逃げたようだ…俺が中に突入する。近藤さんはここで待機して、対象が逃亡した場合、取り押さえてくれ。」

近藤に対しそう言い放つと、康介は返事も聞かずに部屋に飛び込む。その顔はまるで興味深いものを目にした子供のように無邪気な笑みをうかべていた。
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