わけがわからないのですが
初投稿です。よろしくお願いします。
「我々は今こそ立ち上がらなければならない!」
拝啓、父上と母上…元気っすか?僕は名古屋でサラリーマンやってました。どうして過去形かって?
「今こそ魔王を倒すべき時が来た!」
「「悪を滅し、正義を掲げよ!悪を滅し、正義を掲げよ!」」
クビになったんですよ。いや、嘘を言いました。会社がブラック企業で…これも嘘です。理由は思い出せないんですが、とにかく脱サラしたんですよ。どういうわけか自分でも思い出せません。
「我らが正義、見せるは今ぞ!」
「「おぉ!」」
ところで親父、日本語が通じるのに読めない字を使う国って知っているか?
ところでお袋、人の往来が激しいのに圏外なところを知っているか?
ところで愚弟、金髪碧眼の異邦人が時代錯誤なカウボーイ姿で街を歩いているのだが…
ところで姉貴、西部劇でも始まりそうな街にいるのだが…
「民兵組織の意地を王国兵どもに見せつけてやれ!」
「「いくぞー!」」
………誰か、僕がいる場所を教えてください。敬具…っと。まぁ、スマホでメールしても…圏外なんだから意味ないけどさ。やらないよりはマシだと思うわけですよ。
「さて…これは映画の撮影?にしては妙だな」
僕は今、西部劇に登場するような砂の街にいる。なぜいるのか?という質問については答えかねる。僕が1番知りたいのだから。最も新しい記憶は…名古屋駅前のファストフード店で安いランチメニューを食べていたこと。日付はわからない。気づいたらこの街の路地裏に立っていた。
「ワープ…ではないな。今更こんな旧文明な生活をしている都市は知らない。となると、近代アメリカにタイムスリップ?…でも、あそこにいるのは青髪の男…緑も赤もいる。当時に髪をナチュラルに染める技術があるとは思えない」
僕は大通りに顔を出し、そこから見える演説中の広場を凝視する。演説中の男の手には…
「カービン銃?違うな。もっと古い…マスケットか?」
火縄銃のような銃身の長い銃を天高く掲げている。どういうわけか、演説を聞いている人々もその銃を持っていた。戦争でもしようというのだろうか?それとも…巨大な熊や猪を狩ろうという話なのか。
「総員、装備を整えたら北門に集結しろ。勇者様一行の後に続くぞ!」
「「おぉ!」」
…勇者?戦争に勇者なんて言う言葉は出てこない。となると、狩り?民族的イベント…スペインの闘牛士みたいな主役がいるということか?
「やば、解散するみたいだ」
演説が終わったのか、集まっていたカウボーイハットを被った人々が解散する。僕は反射的に顔を引っ込め、路地裏の人がいなさそうなところまで撤収する。見るところ、路地裏には現代のような室外機がない。電線もない…ひょっとすると電気という概念が存在しないのかもしれない。カウボーイハットや火縄銃…電気がない…導き出される答えは…
「1400~1700年代?歴史は得意じゃなかったからな。でも、現代ではない。映画の撮影セットにしてはカメラも見当たらないし…建物の造りが精巧すぎる」
木箱と木箱の隙間に丸くなり身を潜める。土地勘がないために、下手に動くと危険だ。
「タイムスリップの可能性が高い…だが、当時のアメリカ人って緑髪がいるのか?」
答えを導き出すには圧倒的に情報量が少ない。だからこそ、今…大通りで人に話しかけようものなら、異邦人として殺されてしまうかもしれない。江戸時代の日本は鎖国をして、異邦人を毛嫌いしたそうだし。
「そもそも今の恰好は目立つよな」
僕は丸くなってから、初めて自分が紺色のスーツ姿であることに気づく。カウボーイの街にビジネススーツで乗り込むには勇気がいる。
「どっか…服は落ちてないかな」
路地裏にはゴミがあるのが定番なのに…ゴミもない。
「所持品はスマホと自宅の鍵、財布…煙草とライター」
…とりあえず1本吸おう…
「おい貴様」
リラックス。リラックス…1日1本の楽しみ~
「無視するのか?貴様のことだ」
百害あって一利なしと言いますけど、本当なのかね。もし本当なら販売を禁じればいいじゃないか。そもそも百害全て上げて見てくれよ。たぶんだけど、一利は見つかると思うんだ。
「聞こえているのか!」
「うわっ!」
急に目線が高くなる。リラックスタイム中に何事かと思ったら…僕は胸ぐらを掴まれ、大男に無理やり立たされていた。大男の存在に気づかなかったなんて…
「えちょま…待ってください!」
慌てて大男の腕を両手で引きはがそうとするも…ビクともしなかった。僕は胸ぐらを掴まれたまま、つま先立ち状態になる。
「貴様…見たこともない顔だな。何者だ?」
「え~と、え~と…さぁ?」
愛想笑いは得意だった。ただ…
「魔王軍の手先か。牢屋にでも入っていろ」
よくわからないまま…連行されたのだった。