4.思い出は何処か
「見つけた!」
路地の奥に人影が見えた。昨日見た奴と同じシルエットだ。
右手をポケットに突っ込んで呑気にタバコを吹かしている姿に心がささくれ立つ。
あいつのせいで爺ちゃんが!!
頭を低く下げて駆け出す。舗装された道に蹄が当たりカツカツカツと音が響く。
そいつは音に気づき突進する僕に向かってこう言った。
「よく来た!!ルドルフ、待ち侘びたぞ!」
「え!?」
何?なんで僕の名前を呼ぶの?知ってる人?
もしかして昨日の奴じゃない?驚いて急ブレーキをかけて止まる。光に照らされたその人の顔を見上げた。
「しかしダッシャーよりも先に来るとはいささか慌て過ぎだろう。いや、慌てん坊はお互い様か。クリスマス前におまえと飛び出したのは何年前だったか?」
目を細めて嬉しそうに笑うこの人に正直見覚えはなかった。
ただ笑い方の特徴というか雰囲気みたいなものが何処か誰かに似ている気がして。なんとなく悪い人じゃないと思ったんだ。
「ごめんなさい。僕あなたが誰かわかんないです。名前を教えてもらってもいいですか?」
その時、一瞬だけ彼の顔が曇で翳った。
「……ああ。俺の名は……ジャック。そう呼んでくれ」
影の中でやっぱり彼は笑っていたんだと思う。