3.物証は何処か
ふと、気が付いたんだ。
サンタクロースが殺られたというのは納得いかないけれど理解した、だがそうなると。
今年のプレゼントは一体誰が配るのだろうか?
これは重大な問題だろう。全世界の子供達の夢と希望がピンチだ。
そもそも手に入れてしまったこの袋はどうする?
くたりとした中身の入っていない空っぽの袋が風に揺られる。
昨夜行き場なく凍えていたらその辺に座ってたオッちゃんが寒いだろうと恵んでくれた。拾ったオッちゃんは毛布代わりにしていたが、話によると誰かが捨てていったものを拾ったらしい。袋を捨てたという事は強盗殺人ではないのか。いつも一緒にいたトナカイははどうなった?
未だ犯人が捕まったという報道はされていない。
建物の壁に背を預けタバコを燻らし一息いれる。
さすがに追われながら家に帰るという選択は取れなかったので少しばかり疲れた。
遠くで太陽がやっと顔を覗かせる。吐き出した煙が光りの中に溶けて消えた。
と明るくなってようやく気付く。コートの裾が少し汚れていることに。
「なんだ?」
裾を持ち上げ近くで見てみると色は赤黒く茶色に近い。乾燥して少しパリパリとしている。間違いなくシミになってしまう。お気に入りのコートが!
シミがポケットまで続いている。被害は甚大のようだ。
ここで違和感。
ポケットの中に入っている物な〜んだ?
恐る々る手をポケットに入れてみる。
硬くて冷たい何か。力加減を間違えれば切れてしまうのは自分の指だろう。
ポケットから出てきたのは赤く染まったちょっと持ってちゃいけないタイプのナイフ。
アイテム名:血塗られた凶器。
物証が揃った。
ああ、これなら推理小説の苦手な俺でも犯人がわかるぞ。
一、不審者と全て一致する身体的特徴
二、奪われと見られるサンタクロースの袋
三、凶器の所持&それに付着した指紋
四、被害のモノと思われる血痕
これだけのものを並べれば答えは自ずと見えてくる。
犯人は俺か。
いや、そんな筈が無い。