始まり
雨が降っている。何日も何日も。
梅雨の時期だ致し方あるまい
そんな雨の中でも郵便局の配達員は律儀に手紙を届けてくれる
いつもの担当の人に軽く会釈をしながらボクは手の中の封筒に視線を落とした
封筒は至って普通の大きさ。ただ、漆黒とも言えそうな色をしていた。
金の縁取りの骸骨が描かれた悪趣味な切手。赤黒く書き込まれた住所や名前はしっかりとボクの名前だった。
「間違えて送ったわけじゃないよなぁ…」
差出人不明あからさまに怪しい封書。
取り敢えず中身を見てみる
『拝啓 時雨恭子様
突然のお手紙失礼致します
この度、我が漆黒の館にご招待したく筆を執らせて頂きました
つきましては後日使いの者を送らせていただきますのでよろしくお願い致します』
は?え?
まず、館に招待するようなリッチな知人はいない
そして、ボクの意思はこの手紙で確認されていない。
色々とツッコミどころの多い招待状だ。
後日とは何時の事なのか気になったがボクは取り敢えず無視することにした。
万が一に備え、外出用のカバンに色々と詰め込む
非常食、マッチ、ライター、救急セット、充電器、その他色々放り込んでおく。
数日後…
使者が来た。骸骨のような面を被りタキシードを着こなした執事らしき男がボクの家の前に立っていた
「あなた様が時雨恭子様でよろしいでしょうか」
「えぇ。まぁ」
声は壮年か老年だが、ハリがありもう少し若いのだろうか。
不思議な執事はリムジンのドアを開ける
「さぁ、どうぞお乗りください」
「ちょっと待ってください。荷物とってくるんで」
「畏まりました」
ボクは備えておいたバックパックを掴み、停められていたリムジンまで戻って行った。