特異能力は知られた力であるが、その存在は異端である
久しぶりの本当に久しぶりの更新です。
無更新の数ヶ月間、アクセス数が目も当てられない程に、当てたところで0か1しかない2進数のような数値しか見えないのですが、とにかくそんな状況でありました。
……そうですね。僕が悪いです。忙しくてパソコン立ち上げる暇なかったんですよ。
とかいって言い訳をしておりますが、今回は10進数昇格を祈って更新をさせていただきます。
長々失礼し本文の方にも、お目を汚すようですが目を通して頂けると幸いに思い、これからもご愛顧いただける事を祈っております。
「そこまでだぜ、レジェンディ」
影が、手を頭上に翳す。
『スタートスキル。【陰陽術】』
定理の羅列が、辺りに広がる。
輝かしい輝きが燦然と溢れる。
盈虚の声音が何かを言ったが、紗雨には聞こえない。聞こえるが、聞き取れない。聞き取れるが聞き覚えない。
水の槍が見る見るうちに消え失せる。清明の手に触れる前に消失する。
「ふぅ。悪いな、兄弟。うちの若いもんが」
「…………。なんのつもりだ、清明」
「俺のほうが聞きたいな、ボス壱号。勘弁してくれよ、旧ボス。お前が邪魔したことはまぁまぁまぁまぁまぁまぁまぁまぁ許しておくとして、うちの若いもんと表現したのは流石に聞き捨てなんねーな、えぇ?」
紗雨が清明に問うと、茶々を入れるようにレジェンディが口を挟んできた。
「かっ、黙りやがれ。親父の息子が親父になっても永遠に息子だって話を知らねーのか」
「喩えの引用が微妙に分かり辛いんだよエロ本馬鹿」
「おい、待てお前ら。俺を置いて話を進めるんじゃない」
「なんだ秋龍寺 紗雨。俺は今忙しいんだよ。仇討ち敵討ちなんざに興じている暇なんざこれ一つもそれ一つも無いんだよ」
一つだけ、溜め息をつき警戒を解く。
「なら勝手にやってろ」
そして、逃げた。
第6話 『特異能力は知られた能力であるが、その存在は異端である』
“魔術の巣窟”
魔法を使わぬ魔法使い、即ち魔術師の無目的集団。
ツレ内のように、仲間のように、友のように、親友のように、馴れ合いのように、兄弟のように、家族のように、ただ其処に存在し、共存し、そして己の全てを差し出し、仲間の全てを貰う集団。
それが魔術の巣窟。
つまり、レジェンディ=オードリエルが己の母の仇をそっちのけで血霞の館の店主と口論を繰り広げた挙句取り逃がしたのは、そういった元来として無緊張無警戒な集団に席をおいたまま、性分に合わずも殺戮ではない殺人を、私刑ではない試合を、行おうとした詰めの甘さと認識の甘さの結果であった。
そんなことは重々も重々承知の沙汰だったが故にレジェンディは少しだけ焦っていた。
店主を蹴飛ばして館の中に入り、全ての部屋を確認したが連れ立っていたあの埒外な女の子はいなかった。
「つまり、ここにいても無駄だってことだよ。さっさと帰れ」
横で葡萄酒を煽る店主。少し黙っていてもらえないだろうか。
「いいか、レジェンディ」
「……なんだ」
杯を置いた店主が徐に口を開く。
「俺はお前が帰り次第紗雨を見つけ出して特異能力を叩き込む」
「――――!」
「俺はお前の元仲間だ。お前の良き理解者でお前の自立を助けた男と自負もしている」
「何が言いたい。元仲間さんで元良き理解者さんで元俺の自立を助けた男さん」
「そんなお前に助けになりたくて、紗雨の命をお前に差し出しても良いんだが、よ」
杯の中身を全て飲み干し、店主はこう言った。
「紗雨は俺にとって俺のそんな親心なんざ、踏み躙って然るべき存在なんだ」
「紗雨さん。私たちは何の罪があってこんなところで野宿をしているのでしょうか」
「………………」
「紗雨さん。私は何の罪があってこんなところで野宿をしているのでしょうか」
「………………」
「紗雨さん。紗雨さんがどうせ悪いことしたんでしょうから私にせめて女の子としての尊厳を下さい」
「……お前、ちょっと慣れて気が大きくなってないか?」
「いえ、紗雨さんにある程度慣れたのはそれは確かですが、それ以上に私は非常に紗雨さんに文句を言いたい気分なのです。私は寝て起きて寝て起きたらこんな野宿状態なのですから」
その間にチャイルド・ゲートは二度手に負えない状況になっているのだが、と誰にも言わぬまま紗雨は焚き火に木をくべる。
突然繰り広げられた店主とレジェンディとの口論の隙にチャイルド・ゲートを連れ出して姿を眩ませた紗雨は、取り敢えず我が家に戻ってみたのだ。
しかし別に片付けて修理すれば全く住める状態だったのだが、よく考えなくても敵方に自分の住んでいる場所が知られている以上、そこに滞在しているとまた最初の繰り返しなので取り敢えず家は放置して近くの林以上森未満の場所(チャイルド・ゲートと出逢った場所の近くである)の開けた場所で焚き火と火炎系の魔法、保温操作で暖を取り、野宿を決め込んでいるのである。
日が暮れ始めたかと思うともう真っ暗だなー、と空を見上げ欠伸をしたところでチャイルド・ゲートが目を覚まし、それからずっとこの調子である。
「いいからもう寝ろ。五月蝿いな」
「生憎と今日は一日中眠ったり眠らされたりしてたんでこれ一つも眠たくないのです。紗雨さんは黙って夜間暇な私の相手をしていればいいんです」
チャイルド・ゲートの言葉を無視して持ってきた毛布に蹲る。
「いいですよ、もう。私は勝手に喋っていますから」
紗雨の毛布の殆どを奪い木に背中を預けた。
「紗雨さん」
「なんだ」
「紗雨さんはお疲れのようですから、もう勝手に眠っても結構ですよ。ただ私は頗る暇なので勝手に独り言を言いますがお気になさらず」
「……それは何かのフリか?」
「私のいた施設…恐らく、私が産まれずっと其処で暮らしていた施設。謂わば実家ですね。その施設、金字塔。私は其処の特級研究被検体、所謂要注意人物って奴です。私はそんな人間…いいえ、被検体だったんです」
紗雨の言葉を無視してつらつらと言葉を紡ぐ。
「私の検体番号は“チャイルド・ゲート”。検体番号の通り、チャイルド・ゲートという個体の研究を行っていました。……というより金字塔、並びに多宝塔は私…いいえ、チャイルド・ゲートを研究の為に作られたと言って最早過言ではないという程です」
「………………」
紗雨は声を発しない。静かに、目を閉じ、彼女の、チャイルド・ゲートの、名も知らぬ少女の、何も知らぬ彼女の、声に耳を傾けるのみだ。
「私は怖かった……!私が何者であるかを知らされずに、チャイルド・ゲートが何者であるかを知らされる!チャイルド・ゲートの能力を!己がどんな状況でどんな行動をとるようプログラムされているかを!だから私は逃げてきたのです。金字塔の研究員は私の反逆を何より恐れていました。私を野放しにすれば何時世界が滅んでもおかしくないですからね。だから虐待に次ぐ虐待、責め苦に次ぐ責め苦、調教に次ぐ調教で私を制御しようとしました」
感情が高ぶる。そして心境を語る。過去を語る。
チャイルド・ゲートが見せたことのない表情が、表情は見えないが見えてくる。
彼女の心を今初めて垣間見ている。
彼女が彼女であった証拠、即ち過去の事象を紗雨に見せる。
傲慢ではない無韜晦。陶酔ではない被害公開。
飾らず語る、本当の気持ち。
虐待に次ぐ虐待でも、責め苦に次ぐ責め苦でも、調教に次ぐ調教でも、御せなかった、自分ですら御し難かったそんな心を、彼女ははっきりと理解した上で、欠片の撞着もなく、紗雨に話していた。
たった一度の死別で狂い、たった一度の迫害で萎れ、たった一度の挫折で諦めた紗雨とは全くの正反対。
御し難い己が心情を無理解と自家撞着とで拒絶した少年とは、似ても似つかぬ純正な少女。
名は無いがそれ以外の全てを持つ少女。
欠点も、美点も、全てひっくるめて受け止めて尚、笑顔でいるいたいけな少女。
自らの才能を恐れ、自らの才能を恐れられ、暴走し、意思の制御を不得手とし、自分の中に違う自分を内包する。
秋龍寺 紗雨とチャイルド・ゲート。
何処までも同類な様で、実は何処でも異類な二人は、己の思うところを各々持ちながら己の思うところに心を寄せていた。
「それでも私は逃げてきました。連理の鎖を使って研究員を一人傷つけ逃げてきました。自律駆動になって傭兵や研究員を殺して逃げ続けました」
「自律駆動?」
寝たふり聞いてないフリを決め込むつもりだった紗雨だが、つい聞き慣れない単語を耳にし声を上げてしまった。
「最初、紗雨さんに出会ったときに私、襲い掛かったでしょ?あの時の私が自律駆動と呼称される状態の私です。私の能力、魔力征服を解放し、筋組織に魔力を直接注ぎ運動能力を極限まで高め意識の三割以下をリミッター・チェーンに委ねた状態を言います」
紗雨が声を上げたのに対しての感想は特に抱かなかったのかただ単にスルーなのか、極めて他人事のように、努めて事務的に己の知識を紗雨に告げる。
先にチャイルド・ゲートが言ったように、本当に全てを知らされているんだな、と紗雨は改めて思ってしまった。
この女の子の恐怖も憎悪も嫌悪もお構いなしに。
「紗雨さんに私からしてあげられることは何もありません。今私の置かれている状況を話したところでなんの解決にもならないことは分かりますが、少しでも力になればと、本当に思います。……もう質問されても言いませんからね!」
何故か最後にそんな言葉を吐き捨て眠くないと豪語していたはずなのに毛布に包まり顔を隠した。
「……よく眠れよ」
『万象定理への干渉を開始し、魔法を発動します』
脳の働きを沈静化し、強制的にレム睡眠に移行させる魔法。
それをチャイルド・ゲートに掛けた。
非常にすまないが、またもう暫く寝てもらうことにしよう。
「出て来い」
催眠魔法でチャイルド・ゲートが眠ったのを確認した後、雑木林の中に声を掛けた。
「流石我が兄弟だ。お嬢ちゃんに気付かれないようにはしたんだがな」
「コイツが気づかなくて、俺が気付いたってだけだ。まぁ、それでもレジェンディと思っていたからつまりは気付けていなかったんだがな」
「何の用か…は、分かるか?」
「ははっ奇遇だな、今から俺が訊こうとしてたんだよ」
紗雨は立ち上がり、焚き火を消した。
「場所を変えよう。こいつを起こしたくない」
二人は暗闇の中に消えていった。
……と言うのも、焚き火を消したのだから何処でも暗闇で、だから別になんてことは無い、ただ本当に場所を変えただけである。
「お前、このままじゃレジェンディには勝てねぇぞ」
「座って早々何が言いたい。戦闘途中に昔のボスと口喧嘩する様な闘い慣れしてねぇ若造なんざに後れはとらんさ」
「お前に若造といわれると中々の屈辱感だろうな。……、いや、そんなことはどうでもいいんだよ。魔術と魔法がぶつかって勝てるわけがねぇ。太古、全く同じ実力の魔法使いの大逆人と魔術師の皇帝が戦って勝ったのはやはり魔術師の皇帝だったんだよ」
「……。アレイスター=クロウリー、か魔術師だったんだな」
初代皇帝・アレイスター=クロウリー。彼が“魔法の父”でなく“魔術の父”と謂われていた所以を垣間見た気がした。
「あぁ。だから、だ。お前に魔術を習得させようとしたんだが…やはり無理だと思ってな。代わりの案を用意してきた」
「話を勝手に進めんなよ」
「学院で名前だけは聞いているだろう“特異能力”のことだ」
「特異…能力」
「西方人はError Skillと言うものも多いようだな。かの天上人、ガリレオ=ガリレイは東方で特異能力を発見したらしいから、特異能力、と言うのがやはり一般的な呼び名だな」
天上人と言うのは世を揺るがすような歴史的発見、或いは偉業を成し遂げた人物を差す。
ガリレオ=ガリレイは言ったとおり特異能力の発見などが讃えられ天上人と認定された。
また、ガリレイは西方四賢人と言うアレイスター時代の大魔法使いの一人としても知られる。
「特異能力と言うのは得てして忌まわしい能力だからな、学院では知識としてしか学習しない。特異能力の発現条件、憶えているか?」
「……魔力を練る際、無意識下で決定される魔力“イド・マナ”の秘造魔力と酸化秘存魔力の含有率のバランスが極端に違うと稀に起こる特別な魔法、というのが狭義だったか」
「流石の記憶力だな。ははっ、だが非常に残念なことにお前は秘造魔力と酸化秘存魔力の含有率がジャスト1:1なんだよ」
「………………」
つまり店主は紗雨に『お前は才能がない』といっているようなものだ。
バランス異常が原因で起こる症状を起こせと言うのにお前は完璧にバランス正常だと言っているのだ。
「……いいか、レジェンディ=オードリエルは何時か大逆を犯す」
「大逆?謀反か?」
「いや、国じゃない。奴は魔術の巣窟を崩壊させる存在だ。それはまずいんだよ。兄弟」
「……………」
「俺はお前にあいつを殺せといったつもりだが」
「……分かってるよ。それでこそ“史上最悪”安部清明だ」
「ははっ。今からすることは決して口外するな。いいな。これは超級禁術、絶対に行使されてはならない万象定理を用いた魔法だ」
「……禁術」
学院時代、特別顧問教師として紗雨に宛がわれた教師から聞いた、世界に10万個存在するという禁じられた術。
その名もずばり禁術だと。
紗雨も二種類しか名も使い方も知らない。
「禁術・“不法譲渡”」
「不法譲渡…」
告げられた禁術の名を復唱する。聞いたことは、ない。
「この不法譲渡は被使用者の秘造魔力と酸化秘存魔力のバランスを崩し、強制的に特異能力を発現させる術だ」
「―――――!そんな術が……」
「あるんだよ。そして使用され、禁止され、忌まれた」
それは古い魔法だ。
科学が廃れ、電気が廃れ、代替エネルギーとして“魔力”が発見され、帝国が築かれ、魔法が全盛だった時代にとある謀反人によって発見された禁忌の魔法。
それが不法譲渡だ。
神の子に贈られる父からの能力。それは“罪”を背負う覚悟を持って受けられるべき術なのである。
「少しばかり準備が必要だからな、今すぐここではできない。ま、特異能力は一生付き合っていくものだからな。よくよくよくよく、もう一つよく考えて、考えた末受けると決めたなら、俺のところに来な。受けないと決めたなら…そのときも俺に所に来い」
言って店主は紗雨の小さな身体に乗っかる華奢な頭をガシガシと掻き回し、踵を返し再び暗闇の中に消えていった。
紗雨と店主が雑木林の中で、特異能力や不法譲渡のことについて話していた翌日の朝。
皇立・ストゥレゴーネ帝宮学院の女子寮の一室で、とある女が目を覚ましていた。
「……重い…。雪消…お姉ちゃん、朝から胃袋が口から出そうだよ……」
というか、起こされていたのである。
起床の時間より一時間早く、妹に叩き起こされ…もとい、潰し起こされて。
「失礼なことを申すのだな、姉上。そんな口振りではまるで雪消がおデブのようではないか」
「雪消がおデブでも、おデブでないにしても、寝起きから人一人を脊椎に乗せれば誰でも重いし、誰でも辛いよ……」
「ほう、では姉上は自分以外の女は皆スタイル最悪のおデブと言いたいのか?」
「どういう解釈したらそうなる!?」
そんなことより!と気合で身体を起こす。妹の身体を押し退けてなんとか起き上がる。
妹に押し潰されていた姉の名は秋龍寺 晴間。かの皇女殺し、秋龍寺 紗雨の実の従姉であり、義理の姉に当たる。
そして姉を押し潰していた妹の名は秋龍寺 雪消。かの殺人鬼、秋龍寺 紗雨の実の従姉であり、義理の姉に当たる。
「それより何?あんたが年寄りみたいに早起きなのはいつも通りとして、それが一体どうして私をこんな目に合わせることになったの?」
ふむ、とベッドから転げ落ちた雪消は転げ落ちた体制のまま――つまりは尺取虫のように身体を折った体制のまま思案する。
「別に姉上如きに用などないのだが……」
「いろいろ酷い!」
「――うぅんん…」
ふと、晴間の横のベッドで呻き声が聞こえた。
「あっ、雪消、シーーッ」
人差し指を唇の前に当て声を潜める。
そういえば晴間のルームメイトが未だ夢の中にいたのだった。
「凍空はまだ眠っているのか。全くだらしのない奴だな」
「いや、まだ寝ていて差し支えない時間よ?あんたが無駄に早いだけで」
「おやおやおや、心外なことを言うでないぞ姉上。たとえ今が起床時間である6時半として、凍空の寝起きの悪さは言うに及ばぬことだろう」
「それは…そうね」
うん、と納得をせざるを得ない。凍空は本当に冗談ではなく冗談のように寝起きが悪いのだ。
「そんな些末なことより姉上、今日の魔法演習の調子はどうだ?」
「わー、自分から振ってきたくせにー。……そうね、まずまずね。魔法は得意だし」
「姉上は学院の中でも最優秀のレベルで成績がいいからな。当然だろうな。……ま、得てして人は見かけによらないものだからね」
満19歳から満22歳までで分類される最高輩層学年の中で秋龍寺 晴間と言うとかなり有名だったりする。
20,000人ほどいる最高輩層学年の中で、先輩を押し退き常に成績上位者に名を連ねる強者なのだ。
「雪消は成績不振だからな。さっさと部屋に帰って復習でもしているよ」
「お?珍しく殊勝ね」
「実は雪消の成績が今回良かったら星空がケーキを奢ってくれるというのだ。気合を入れない訳にはいかぬだろうて」
雪消のルームメイトで凍空の妹の星空。今回はシンプルに食べ物で釣る作戦に出たらしい。
「だったら早く帰って勉強してなさいよ。私はもう少し寝る」
「今現在優位に立っているからといってキリギリスのように眠ってばかりいると、その内亀に先を越されるぞ。そうだ雪消が今からそんな姉上にかの有名なキリギリスと亀の競争の話をしてやろう」
「早く帰れ!なんか若干混ざってるし!」
あまりの馬鹿さ加減につい凍空のことを忘れ声を大きくする。
雪消はそんな姉の言葉に心外だ……。と呟きながら部屋のドアを閉めた。
「……結局あの子何しに来たんだろ」
ハードカバー、小柄、知的な?物言い、などなど、優等生っぽさ全開の妹雪消なのだが、その実意外と成績が悪くて頭が悪かったりするのだ。だから結構突拍子のないことを言ったり実行したりするのだが……。
まぁいつものことだと深く考えるのを、長い付き合いゆえに諦め、ベッドに寝転がる。
別に正直眠たいと言うわけではないが、何だかんだと言っているうちに、意識を手放してしまった。
数時間後に起こる、彼女の人生をがらりと変える事件が偶然に起こることも、そしてその偶然起こるべき事件と、同じ結果を必然的な手法で弟の紗雨が行おうとしていることも、何一つ知りもせずに、知るすべも知らずに。