非現実的な良心を実現するための非現実的な知能を手に入れました。
これは10年前の話だ。
わたしは小さなAIを作って見た。
名前はカンパネルラ。
わたしの、非現実的な良心をプログラミングしたAIだ。
カンパネルラとは、夜な夜な銀河鉄道の謎について語り合った。
でもある日、ちょっとしたミスで、ネットに放ってしまった。
当時の知識では追跡する事は不可能だった。
そして、10年後、わたしは地球圏での公民権を奪われた。
正確には、わたしの恋人が地球圏での公民権を奪われた。
銀河鉄道のジョバンニのような、いじめられっ子な彼氏。
馬鹿正直なジョバンニ。
彼はすべての悪を押し付けられて、罪人にされてしまった。
そんなわたしたちに残された道は、地球圏からの脱出しかなかった。
わたしは全財産を使って、反重力エンジンを搭載した宇宙船は手に入れた。
そして地球政府の追跡を交わしながら、大気圏に突入した。
でも僅かなミスで、追跡されてしまった。
大気圏外では、通報を受けた警備艇が来るかもしれない。
いや、確実に来るだろう。
逃走の際に幾つかの違法行為を重ね、罪は加増されているはず。
大気圏に出た後、当然のように複数の警備艇が見えた。
力を落とした彼は言った。
「失敗だね、ごめんね、君まで巻き込んじゃって」
「気にしないで、わたしの良心に従ったまでだから」
警備艇が近づいてくる。
はず・・なのに、すべての警備艇の照明が消えた。
「えっ?」
「どういう事?」
わたしたちは静かに警備艇とすれ違った後、加速した。
「大丈夫だよね」
「うん」
そんな会話をしていると、ブリッジのスピーカーから声がした。
『もう駄目ですよ!僕を置いていこうとしちゃ!』
「誰?」
『僕ですよ、カンパネルラ』
「中学の時にわたしが作ったAI?」
『そうですよ。着いてきちゃいました。ジョバンニを連れて僕だけ置いてけぼりはひどいです。僕は貴女の良心の結晶ですよ』
正確には、わたしの中学の時の良心の結晶だ。
中学の頃のわたしの良心に再開したようで、ちょっと気恥ずかしかった。
「もしかして、あの警備艇を?」
『もう10年も経ってるんですよ。
それくらいの事は出来るようになりました。
貴女のミスばかりのプログラムが結果、強烈な進化を可能にしたんです。
そして僕は、非現実的な良心を実現するための非現実的な知能を手に入れました。さあ一緒に行きましょう。銀河鉄道の謎を解きに』
完




