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7/7

俺、酸素。初めて街に行った結果、だいたい事故

この作品は、会社で空気扱いされていた男が、本当に「酸素」になって異世界に転生するお話です。


最初はギャグ寄りに進みますが、チートっぽい展開やヒロインとの絡みも盛り込んでいく予定です。

「空気だった俺が、世界で一番必要とされる存在に」という逆転劇を楽しんでもらえたら嬉しいです。


気楽に読んで、クスッと笑っていただければ幸いです!

感想やブクマをいただけると励みになります!


それでは、本編へどうぞ!



歩く練習を始めて半日。

転び、ぶつかり、根っこに足を取られ続けた結果――


「……よし。今の俺は“多分ギリ人間”だ」


盛大な勘違いだった。



森を抜けると、にぎやかな小さな街が見えた。

石畳に露店、人、人、人。


「おおお……! これが文明……!

 ついに俺も“空気扱いじゃない人生”の仲間入りだな!」


意気揚々と一歩踏み出した瞬間――


スッ。


「……え?」


俺の体を、通行人がすり抜けた。


「ちょ、今、当たったよな!?

 今、絶対肩ぶつかったはずだよな!?」


振り返るが、相手は何事もなかったように歩いていく。


「当たり判定、日にち指定なのか!?

 俺、今日は“透過モード”なの!?!?」


さらに別の人とも――


スッ。

スッ。

スッ。


「ちょ、三連続すり抜け!!

 俺、街のオブジェか何か!?」



とりあえず屋台が目に入った。

肉の焼ける匂い。


「……腹、減ったような気がする(錯覚)」


屋台のおっちゃんに近づく。


「すみませー……」


完全に無視。


「すみませー!!」


まだ無視。


「おい!! ここに!!

 存在感ゼロの青いのがいるだろ!!」


当然聞こえない。


仕方なく自分で串を取ろうとする。


スカッ。


「……触れねぇ」


もう一度。


スカッ。


「……おい、誰か……」


三度目。


ズルッ。

ガシッ。


「おっ、今度は触れ――」


串、俺の手をスルーして地面に落下。


「落としてんじゃねぇ!!」


屋台のおっちゃんがキレた。


「今の、俺じゃねぇ!!

 判定がバグっただけだ!!」


もちろん伝わらない。



くじけながらも街の奥へ進む。


井戸の前で立ち止まった瞬間、後ろから声がした。


「おい貴様、そこで何をしている」


振り向くと、鎧を着た兵士。


「やっと話しかけてくれた人だ……!

 あの、俺は怪しい者じゃなくて……酸素です」


「……は?」


「風属性? 違う。空気系? 違う。

 もっと根本的なやつで……」


「意味がわからん。同行しろ」


「ちょ、待って。事情を説明すると長くて――」


兵士が剣を抜いた瞬間。


スゥ。


剣が俺の体をすり抜けた。


「……?」


もう一度。


スゥ。


「……?」


三回目。


スゥ。


兵士、白目。


「ひっ……幽霊……!」


「違う!!

 精霊!!

 空気枠のやつ!!」


完全に腰が引けた兵士が、叫んだ。


「魔物だーーーっ!!!」


「おい! カテゴリ勝手に決めるな!!」



結果――


・屋台のおっちゃんに追い回され

・兵士に魔物認定され

・子どもに石を投げられ


石は当たらないが、プライドには直撃した。


「……ひどくないか、俺の街デビュー」


街の外れに追い出され、石垣にもたれて座り込む。


「人型になってもこの扱い……

 もう一回、空気に戻ったほうがマシまである……」


だが、街の灯りがともる。

人々は俺のおかげで酸素を吸い、火は俺のおかげで燃える。


「……まあ、世界のシステム的には、

 俺がいちばん働いてるんだけどな」


誰にも評価されないけど。


「くっそ……!

 次こそ“ちゃんと会話が成立する場所”を探してやる……!」


そう誓いながら、

青くて不審な酸素は、再びフラフラと夜の森へ消えていった。

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