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5/7

俺、酸素。魔女に出会って人型になる

この作品は、会社で空気扱いされていた男が、本当に「酸素」になって異世界に転生するお話です。


最初はギャグ寄りに進みますが、チートっぽい展開やヒロインとの絡みも盛り込んでいく予定です。

「空気だった俺が、世界で一番必要とされる存在に」という逆転劇を楽しんでもらえたら嬉しいです。


気楽に読んで、クスッと笑っていただければ幸いです!

感想やブクマをいただけると励みになります!


それでは、本編へどうぞ!


女の子を助けた――はずなのに、感謝されたのは操ってた男のほう。

「……また空気扱いかよ」


風の中を漂いながら、俺は自分の存在感の薄さに泣きたくなった。

助けても誰にも見えない、聞こえない、触れられない。

「俺、ほんとに空気だもんな……ってそのまんまか!」


そんな自虐ギャグを言っているときだった。



◆森の魔女との遭遇


「ふむ……珍しい波動じゃのう」


低く響く声。振り向くと、黒衣をまとった老婆が杖をついて立っていた。

長い白髪を編み込み、目の奥がまるで風そのもののように光っている。


「え、ちょ、まさか……俺が見えてる!?」


老婆は口元を歪めて笑った。

「見えておるとも。おぬし、“酸素”じゃな?」


「な、なんでわかるんですか!?」

「わしは森の魔女。空気と命の循環を読むことぐらい、朝飯前じゃ」


……来た! ついに俺を認識できる人間が現れた!

感動で酸素濃度が上がりそうだった。



◆魔法実験、開始


「おぬし、形を持たぬゆえ苦労しておるじゃろう」

「はい……もうずっと透明で、助けても空気扱いで……」

「ならば、形を与えてやろう」


魔女は杖を高く掲げ、淡い光をまとい始めた。

空気が震え、風が渦を巻く。


「風よ、空よ、命に宿れ――!」


「ちょ、なにこれ!? まぶしい!? 熱い!? 俺、燃えるタイプの酸素だけど!?」


光が一瞬で辺りを包み込んだ。

身体の中に走るビリビリとした感覚。

“空気なのに”心臓がドクンと鳴った気がした。



◆酸素の精霊、誕生


光が収まる。

……俺の両手が、ちゃんと“手”の形をしていた。

腕が動く。足が地面を踏みしめる。


「おおおお!? 俺、立ってる!? しかもちゃんと見える!?」


鏡の代わりに水面をのぞくと、そこには淡い青髪の青年が映っていた。

髪は空のように透き通り、肌はわずかに光を反射している。


魔女は満足そうにうなずいた。

「うむ。これでおぬしは“酸素の精霊”じゃ。姿も声も、これで世界に干渉できる」


「せ、精霊!? 俺、ついに進化したのか!?」


「ただし、力を使いすぎれば形は崩れる。ほどほどにせい」


「了解っす! これでやっと誰かに見てもらえる! やった!」



人生で初めて、自分の姿が“世界に存在する”という実感を得た。

いや、正確には酸素生だけど。


「よし……次はあの女の子にもう一度会って、今度こそちゃんと“ありがとう”って言わせてやる!」


そう言い残し、俺――酸素の精霊(仮)は、風を切って森を駆け出した。

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