俺、酸素。試してみたらヤバかった
この作品は、会社で空気扱いされていた男が、本当に「酸素」になって異世界に転生するお話です。
最初はギャグ寄りに進みますが、チートっぽい展開やヒロインとの絡みも盛り込んでいく予定です。
「空気だった俺が、世界で一番必要とされる存在に」という逆転劇を楽しんでもらえたら嬉しいです。
気楽に読んで、クスッと笑っていただければ幸いです!
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それでは、本編へどうぞ!
異世界に酸素として転生した俺。
まだよくわからないが、確かにこの世界に“関与”すると何かしら影響が出るらしい。
「……とりあえず、試してみるか」
⸻
まずは小さな焚き火に近づいてみる。
――ボッ!!
炎が一気に燃え広がった。
「おおっ!? やっぱり俺、酸素だから火を強められるんだ!」
次に、川辺の水面へふわりと漂っていく。
すると――
「……あれ、水の泡、増えてね?」
水中の魚たちがやけに元気よく泳ぎ始めた。
どうやら俺の存在で酸素濃度が上がったらしい。
「なるほど……火も水中もいける。
ってことは、これ……地味に万能じゃね?」
⸻
と、その時。
「た、助けてー!」
森の奥から少女の叫び声が聞こえた。
見ると、小さな女の子が木の根っこに足を引っかけて転び、魔物らしきイノシシが突進してきている!
「やばっ!?」
俺は慌てて突っ込んだ。
イノシシの鼻先に入り込む。
「……今だ!」
――ゴホッ!ゴホッ!
イノシシが急にむせ返った。
酸素濃度をぐっと下げてやったのだ。
息が苦しくなったのか、イノシシはフラフラと逃げていった。
「よ、よかった……」
女の子は涙を浮かべながら立ち上がった。
「誰か……助けてくれてありがとう……」
……って、俺ここにいるんだけど!?
「でも……誰もいない……?」
女の子は辺りを見渡し、首をかしげる。
「やっぱり……また空気扱いか!!」
俺は透明だから当然だ。
助けても、存在は見えない。
「うおおお……! 感謝されたいのに!
俺がヒーローだってわかってほしいのにぃぃ!」
必死に風を起こしてアピールしてみたが、女の子は「急に風が吹いた……?」と不思議がるばかり。
「空気のくせに必死すぎだろ俺!」
⸻
こうして俺は、酸素としての能力を少しずつ理解し始めた。
火を操れる、水中を活性化できる、呼吸にも影響できる。
でも――
存在感は相変わらずゼロ。
助けても、結局“空気扱い”。
「……なんだよこれ、チートなのに切ないんだけど」
それでも。
俺の異世界ライフは、確かに一歩前進したのだった。