表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/3

会社で空気扱いの俺、転生したら酸素になってました

この作品は、会社で空気扱いされていた男が、本当に「酸素」になって異世界に転生するお話です。


最初はギャグ寄りに進みますが、チートっぽい展開やヒロインとの絡みも盛り込んでいく予定です。

「空気だった俺が、世界で一番必要とされる存在に」という逆転劇を楽しんでもらえたら嬉しいです。


気楽に読んで、クスッと笑っていただければ幸いです!

感想やブクマをいただけると励みになります!


それでは、本編へどうぞ!




俺の存在感は、会社の中で限りなくゼロに近かった。


会議で意見を言っても誰も反応しない。

むしろ数分後、隣の席の同期が同じことを口にすれば――

「さすが○○くん!視点が違うな!」と拍手喝采。


……いや、それ、さっき俺が言ったんですけど?


さらに昼休み。

上司に「コーヒー買ってきて」と頼まれ、律儀にコンビニまで走った俺。

汗だくで差し出したその瞬間、後ろからひょこっと出てきた後輩がこう言った。


「ついでに俺の分も買ってきました!」


結果。


「おお、気が利くなぁ!」

褒められたのは後輩。


俺が渡したコーヒーは、誰の記憶にも残らなかった。


……これもう、空気じゃん。


名前すら覚えられていないのも日常茶飯事だ。

「えーっと……君、えーっと……」

「うえまつです」

「ああそうそう、うえだくん!」

……違います。


そんな扱いを受け続けて二十四年。

気づけば、心の中で自虐することすらルーチンワークになっていた。



その日も、終電ギリギリの時間まで残業して、会社を出た。

冷たい夜風が、頑張った俺をせめて労ってくれる。

「はぁ……」

白い息が街灯に溶けて消える。


ふと。


視界の端から、大型トラックが突っ込んできた。


「……え?」


クラクション。

ブレーキ音。

俺の身体は、あっけなく宙を舞った。



気づけば、真っ白な空間に立っていた。

いや、「立っていた」というより――浮いていた?


「おっ、君か~。なんか一人ぽっかり死んじゃったから、転生させるわ」


サングラス姿の、軽いノリの神様らしき存在が目の前にいた。


「え、俺死んだんですか!?」

「死んだね。トラックにドーン。チーン。南無」

「そんな軽い感じで!?」


俺が動揺している間にも、神様はスマホをいじりながら言葉を続ける。


「んで、転生特典あげるから。君ねぇ……“空気扱い”でしょ?」

「……ええ、まぁ」

「じゃあ、本当に空気にしとくわ」


「は?」


「はい、“酸素”」


「ちょ、ちょっと待ってください!? もっとこう、剣とか魔法とかチートスキルとか――」

「酸素、最強だから。人、酸素なきゃ生きてけないから。モンスターも魔法も燃えねぇから」

「理屈はわかるけど納得はできない!!」


俺の抗議は無視され、神様は指をパチンと鳴らした。



次の瞬間。


……透明になった。


「え、待って。俺、手がない。体がない!? ちょっと!!」

呼吸しようとしたが、そもそも俺が呼吸だ。

肺がどうとかいう以前の問題だった。


「うわぁぁぁぁぁっ!!!」


気づけば俺は、森の中に漂っていた。

木々が風に揺れ、鳥が羽ばたき、草花が朝露に濡れている。


……あ、酸素って、完全に空気じゃん。


試しに小さな炎に近づいてみる。


――ボッッ!


瞬間、炎が勢いを増した。


「おおお!? 俺、関与しただけで火が強くなった!?」


次は、森を歩く獣の鼻先へ。


「クシュン!」


盛大なくしゃみをされた。


「……俺のせい?」


酸素として関与するだけで、世界に影響を与えてしまう。


どうやら俺は、本当に「いなきゃ死ぬ」存在になってしまったらしい。



会社で空気扱いだった俺は、今や本物の空気。

透明で、形もなく、存在感ゼロ。

だが――


この世界は、俺なしでは成り立たない。


「……これ、チートすぎない?」


俺の新しい人生(?)が、今、始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ