表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

地味で平凡な僕ですが、後輩でかワンコに懐かれました・番外編SS

作者: 早桃 氷魚

Kindle本の番外編SS。本編で、千尋が大雅への苦手意識がなくなった頃のお話です。




 最近は、大雅のことが苦手じゃなくなった。

「千尋、悪いが、夏井を呼んできてくれないか?」

「え? 大雅、まだ来てないの?」

「どうせ居残りさせられてるんだろ。あいつ、この前のテストも危なかったみたいだからな」

「そうなんだ」

 そういえば、大雅ってD組だし、勉強も好きじゃないみたいなんだよね。

 うちの学校は成績順にクラス分けされるから、大雅は成績の低いクラスにいる。時々、D組の人達を「落ちこぼれ」なんて馬鹿にする生徒もいるけど、大雅はぜんぜん気にしてない。

『先輩、見て下さい! また赤点取っちゃいました!』

 なんて、明るく笑いながらテスト用紙を見せるくらいだ。

 その後で澤田に説教されてたけど。

「千尋、頼んだぞ」

「うん。行ってくるね」

 澤田に頼まれて、僕は一年生の教室に向かった。

 少し前までは、大雅のことが怖くて避けていたけど、それも僕の思い込みだったんだよね。

 大雅はいつも笑顔で話しかけてくれたのに、素っ気ない態度ばかり取ったことを、ちょっと後悔していた。

 その罪滅ぼしというわけではないけど、僕からも大雅に歩みよろうと思って、澤田の頼みを引き受けたのだ。

 放課後の教室は、昼間と違って静かだ。ほとんどの生徒は部活にいってるか、すでに帰宅している。

 たまに友人同士で居残っておしゃべりしてる人達もいたけど、大半の教室はガランとしていた。

「えっと、D組……」

 一年生の教室にやや緊張しながら、大雅のいるD組を覗き込む。

 窓際の机で、寝そべっている大雅が見えた。

 近くには、男子生徒が二人いて、大雅に何か話しかけている。

「お前、生徒会いかなくていいのかよ?」

「コレおわんねーし」

「真面目にやれって。お前が終わらせないと、オレ達も帰れねーだろ」

「じゃあ、答え教えろよ」

「バカ! それじゃ意味ないだろ!」

 どうやら、クラスメイトが大雅を励ましているみたいだ。

 だけど大雅は、寝そべりながら窓の外に視線を向けている。

 この調子じゃ、廊下で待っていても、大雅は出てこないだろう。

「……大雅」

 教室の入り口から、声を掛ける。

 その瞬間、大雅はガバッと上体を起こして、こっちを見た。

 僕を見たとたんに、ぱぁぁっと笑顔になる。

「千尋先輩ッ!!」

 大雅が立ち上がった拍子に、ガタンと椅子が倒れる。

 だけど、大雅は椅子に見向きもせず、一直線に僕の所まで駆け寄ってきた。

「先輩、先輩っ! どうしたんですか!?」

 巨人が迫ってきて少しドキドキしたけど、大雅は弾けるような笑顔で尋ねてくる。

 まるで、尻尾をブンブンと振って飛びつくコムギみたいだ。

「あ、えっと。澤田が、大雅を呼んできてって言うから」

「迎えにきてくれたんですか!!」

「うん……」

「すげぇ嬉しいですッ!!」

 大声にちょっとビビったけど、満面の笑みを見たら、大雅がどれだけ喜んでるか分かる。

 可愛いなぁ。

 本当に、愛犬のコムギと似てるから、つい笑ってしまった。

「フフ。まだ終わらないの?」

「すぐ終わらせます! ソッコーで!」

「分からないところあったら、教えてあげるよ」

「ホントですか!!」

 大雅の目がキラキラと輝く。

 後ろを振り向くと、友人と思われる男子生徒達にテンション高く話しかける。

「なあ、お前ら! 喉渇いただろ!?」

「あ、ああ……飲み物、買ってくるよ」

「ったく。戻ってくるまでに終わらせておけよ」

 二人とも、呆れたような顔でそう言うと、入れ違いに教室を出て行った。

「スミマセン。あいつ、よろしくお願いします」

「あ、はい」

 なぜか頭を下げて頼まれる。

「先輩、先輩っ! ここ、座って下さい!」

 席に戻った大雅が、隣の椅子をすぐ真横においた。

 隣は分かるけど、距離が近すぎないかな?

「千尋先輩っ、はやく!」

「うん。今いくよ」

 ニコニコと笑顔で待つ大雅が可愛くて、僕は素直に隣の席に腰掛けた。




(終)





お読みいただき、ありがとうございます!


少しでも面白い!と感じていただけましたら、

評価・ブックマーク・レビューを、よろしくお願いいたします(*^^*)


お話を書くモチベーションが爆上がりしますヾ(o´∀`o)ノワァーィ♪


評価は、このページの下側にある【★★★★★】から、えらべます!!

ブックマークは、下側の【ブックマークに追加】より、追加することができます!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ