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第21話 ゾゾゾ……その日まで生きる

「おい、ショウ…」


ツグミさんが立ち去った直後、アキラが俺の腕を軽く引いた。


「なあ、何があったんだよ。」


隣でソウイチも不安そうに頷いている。


だけど――


俺は、シズカさんのほうを見た。 目が合いそうで合わない。


彼女の震えた感覚が、まだ腕に残ってる。


……俺は、何も言えなかった。


「……いや。大丈夫。何でもない」


そう返すと、アキラが少し目を見開いたあと、肩をすくめた。


「ま、ショウがそう言うならいっか! ソウイチ、よしっ交代だっ!」


「はいっ!任かせましたっ!!!」


ソウイチが、やたら誇らしげに敬礼っぽいポーズを決める。


そんな二人の様子が、なんだか胸に引っかかった。


……この祭りの核心は、ただの水。


みんな、騙されてるんだよな…。


御社に張られたしめ縄や、篝火台の重厚な飾り付けが視界の端に映るたび、妙な息苦しさがこみ上げる。


そのとき、背後から杖の音が聞こえた。


「ショウタロウ!!こんなとこで何してるんだ!?熱はどうした!!?」


ゲンキチさんに支えられながら、じいちゃんがゆっくり近づいてきた。


「……じいちゃんっ!?どうしたの!?」


「ガハハハ!ちょっと梯子から落ちてしまってな!」


「……ぇぇ…人の心配してる場合じゃないじゃん……。」


「ガハハ!ちょいと来い。今、飾り付けが終わったところだ!ショウタロウにも見せよう!!」


俺はふらりとその背を追った。


広場の櫓を囲むように、朱と金の垂れ幕、紙灯籠が何重にも吊るされていた。 まるで儀式そのものを神に奉げるような、荘厳な雰囲気だ。


「……百年に一度の祭りだ。明日に、次の百年がかかっとるんだ。」


じいちゃんが静かに言った。


「……明日、爆弾とか落ちて、村ごと吹っ飛んだらどうすんの?」


ぼそっと吐いた俺の言葉に、じいちゃんは一瞬だけ目を細めた。


「――その日まで、ワシらは生きるんだ。」


返す言葉もなく、俺はその場をそっと離れた。


村の通りを歩いて帰る足取りは、妙に重い。


家に戻ると、玄関を開けたその先――


サクラが無言のまま立っていた。


表情はいつもと同じなのに、鈍感な俺にもわかる――怒ってる


しかも、かなり本気で…


その無言の圧が…凄すぎるっ……


「何も言わずに出掛けてごめん!」


「本日は、前夜祭です…」


俺の謝罪はあっけなくスルーされる。


「……あっ、サクラーー」


俺の声に重なるように、玄関の戸が開く。


ガラッーー


じいちゃんがタイガに肩を貸されながら、ゆっくりと歩いてくる。


「ショウタロウ! もう体調が良いなら、今夜は関係者だけで前夜祭をやるから行ってこい!」


「え、前夜祭って……?」


「かがり火を焚いて…明日の成功を祈願する!それに、精進料理も振る舞われるぞ!!」


「へぇ……じいちゃんは?」


「腰がイカれてるからな、ソゴロウに診て貰う手配をした!」


そう言って、俺の背を軽く叩いた。


「顔を出すだけでもいい。前夜祭も百年に一度だっ!おまえも、少しは神妙になれ!」


正直…気乗りはしなかった。


だけど――


カナタとも連絡を取りたい。


……ちゃんと話さなきゃな。

アイツ、ガッカリするんだろうな…。


「……わかった。行ってくる」


俺はポケットの中のスマホを握りしめた。


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― 新着の感想 ―
心のざわつきを、何気ない会話の中でじわじわ伝えてくるのがすごく上手ですね……! アキラやソウイチの明るさが逆に不安を際立たせてて、めちゃくちゃ効いてました。
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