第18話 ゾゾゾ……御社に潜入!!!
御社へ向かうため、俺は屋敷の裏手にある北側の石段を目指していた。
正面から行けば、準備中の人たちに見つかる可能性が高い。
忍び込む以上、見つかるわけにはいかない。
石段の手前、畑のそばを通りかかったそのとき――
「……あれ、ショウタロウくん?」
明るい声に振り返ると、マユカさんが鍬を手に、笑顔でこちらに手を振っていた。
「マユカ…さん」
って、さっそく見つかってるじゃんっ!
「一人でどうしたの? 男性陣は祭の準備じゃない?」
「ああ……えっと…。 ちょっと風邪ひいてて。今はもう平気だから、これから準備に合流しようかと……」
歯切れの悪い言い訳に、マユカさんはほっとしたように笑った。
「そっか、治ってよかったね! あ、見て見て!」
彼女は背後の畑を指差す。
「朝までに獲れた分! ぜーんぶ八幡家さんに運んでもらって、街で売ってもらうの!」
「へぇ……この村、そうやって成り立ってるんだな」
「そうそう。八幡家の人たちが商売の窓口って感じでさ。うちは作ってるだけ!」
にぱっと笑って、泥のついたとうもろこしを掲げる。
「明日は八鬼祭でしょ? だから、これを炭火でじっくり焼いて売るんだ~! マユカ特製の“激辛坦々ソース味”でね!」
「……う、うまそうだね」
好む人は選びそうだけど……
「でしょ!? ショウタロウくんにも一本サービスしてあげる! ……あ、でもちゃんと来てくれたらね!」
八重歯をのぞかせて、マユカさんはいたずらっぽく笑った。
……えっ? よく見ると……マユカさん、めちゃくちゃ可愛くないか?
「楽しみにしてます!」
そう返すと、マユカさんに軽く手を振って別れ、俺はそっと北の石段へと足を向けた。
鳥居をくぐり、人に見つからないように、コソコソと石段を上がっていく。
途中、茂みに身を潜めてスマホを見ると、時刻は17時15分。
……そのとき、誰かの話し声が聞こえた。
「おっ!もうお清めは終わったんか?」
アキラの声だ。
「うん!ツグミ様が聖杯を満たしたから、アタシたちの役目は終わったよ!」
この声は――コハル?
「すげえな! お疲れ!俺、18時から交代なんだけど早めに着いちまった!」
「アハハ!アキ兄はせっかちだなあ!」
……コハルって、アキラにはこんなふうに笑うんだな。
「あっねえ、シズカ様見てない?」
「いや、こっちでは見てないな!」
「もーっ!」とコハルが軽く声を上げ、足音が遠ざかっていく。
「……そいや、あの二人は許嫁か……」
俺は、茂みの中でじっと息を潜めながら、 静かに心拍がおさまるのをまっていた。
ガッターンッ!!!
突然、何かが倒れる大きな音が響いた。
「うわっ、梯子が倒れたぞー!!!」
「誰かー!人手が必要だー!!!」
ソウイチとアキラが振り向き、御社の東側の坂道を駆けていった。
辺りの警備が一時的にがら空きになった。
……よし、今だっ!
俺はそっと茂みから姿を現す。
社の屋根が、夕陽を受けて朱に染まっていた。
俺は、御社の裏手にある小さな隙間から、静かに足を踏み入れた。




