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第17話 ゾゾゾ……白昼悪夢

耳鳴りがしていた。


ザァァ……と、どこからともなく水音が響く。


気づけば、俺は祷り湖の畔に立っていた。

昼間なのに、やけに赤い。


空も、水面も、すべてが赤黒く染まっている。


「……ツグミさん?」


ぽつんと、湖の中央に誰かが立っていた。


ゆらゆらと――炎のように揺れながら近づいてくる。


目を凝らすと、それは――


血に濡れたツグミさんだった。


顔にも、腕にも、白い長襦袢にも、べったりと深紅の染み。 その腕には――聖杯らしき器が、しっかりと抱えられていた。


「……待って!!」


声が裏返る。


「待てよ! なにしてんだよ!!」


叫びながら、俺は走り出す。


足元の赤黒い泥――

血のような水が、足をとらえて進まない。


それでも、必死に手を伸ばす。


ツグミさんは、ゆっくりと井戸の縁に立った。


「ツグミさんっ!!」


「これは……村の定めです」


血の気の引いたような、冷たい声。


目が合う。


でも…その目には、もう何も宿っていなかった。 ただ虚ろな、光のない瞳。


そして彼女は、聖杯を抱いたまま、ふわりと身を投げた。


「やめろ!!!!!」


バッシャァァアアアアン!!!


水音が、鼓膜を引き裂く。


間に合わなかった。


伸ばした指先は、空を切っていた。


「ツグミっ……!!!!!」


必死に井戸へ駆け寄る。


中を覗こうと身を乗り出した、その時――


う゛あ゛あ゛ぁぁああアアアッ!!!


井戸の底から、鬼の面をかぶった“何か”が湧き上がってきた。


人とも、化け物ともつかないそれらが、 何体も、何体も、這い上がってくる――!!


「うわああああああああ!!!」


――叫んだ瞬間、


「……はっ、はあ、はあ、はあ……!」


俺は――目を覚ました。

布団は、汗でぐっしょりと湿っていた。

Tシャツも、絞れそうなくらい汗を吸っている。


「……夢、か……」


窓の外に目をやると、まだ少し明るい。


スマホを見ると、時刻は16時を指していた。


そっと布団から起き上がり、着替えようと立ち上がった瞬間――


「あれ……?」


身体の怠さが、嘘のように消えていた。


額に手を当てる。

……熱も、完全に引いている。


「八砥家のくすり茶……すごいな、これ……」


漢方の一種だとしても、ここまで効くものがあるなんて…。


そんなことを考えながら、服を着替え、軽く汗を拭き取ると、


さっきの悪夢が、鮮明に脳裏に甦ってきた。


血塗れのツグミさん。

聖杯を抱えて井戸に飛び込んだ、あの瞬間。


……確か、ソウイチが言ってたな。


“今日は聖杯の中身が満たされる日”だって…。


警備の交代が18時…あと、2時間か。


「……やっぱり、確かめなきゃダメだ」


その儀式の正体を、この目で見てやる。


家には、サクラしかいないはずだ。


見つかれば、止められるか、ついてこられるのがオチ。


余計な心配もかけたくない。


俺は、足音を殺して、そっと玄関へ向かう。


「……よし」


サクラにバレないように、静かに外へ抜け出した。


――御社に忍び込むチャンスは、警備が交代で手薄になる“あの時間”しかないっ!


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