第13話 ゾゾゾ……不穏な夜
屋敷に戻ると、すぐに風呂場へ直行した。
浴槽に体を沈めると、じわぁ〜っと全身の疲れが溶け出していく。
「……っくぅ〜……」
そのまま天井を見上げていると、ふと思いついて手を叩く。
「パンパンッ」
パチン、と音が響いた瞬間―― 天井の照明がふわっと灯った。
「……いや、いちいちハイテクなの意味わかんねーから」
湯に浸かりながら、今日一日のことをぼんやりと思い返す。
……やっぱり、不自然すぎる。
おかしなところを挙げだしたらキリがない。 けど――
一番気になるのは、やっぱり…… シズカさん。
『うふふ、誰にも言わないわ。だけどね、この村の“秘密”なんて、探ろうとしちゃダメよ』
……“この村の秘密”
絶対、“何か”隠してる。
そのあと、ふっと耳に蘇るのは―― シズカさんの唇の、あの柔らかい感触。
「……いかんっ、いかーーーん!!」
耳がカッと熱くなるのを感じて、湯船の中に頭まで潜る。
よし、明日は気をつけながらも、もう一度話しかけてみよう。
――サバーン。
俺は風呂から上がり、遅めの夕飯をかき込む。
食卓では、じいちゃんとばあちゃんが元気すぎる声で盛り上がっていた。
「明日は祭りの前日で今日より大変だから、しっかり休めよー!! ガハハッ!」
「ショウちゃん来てくれて、私たちも嬉しくて若返っちゃうわ!」
これ以上パワフルになるのは……マジで勘弁…
苦笑いを浮かべつつ、ふたりに挨拶をして自室へ戻る。
布団に潜り込んだ瞬間―― 気を失うみたいに眠りに落ちた。 ……が。
「……うっ」
ふと、体の奥にズキッと鈍い痛みが走って、目が覚めた。
肩、腰、太もも、腕。 使い慣れない筋肉たちが、悲鳴を上げてる。
しばらく天井を見つめたまま、ごろごろと寝返りを打ち続ける。
……マジか…もう、寝れないな……
スマホを手に取り画面を確認する
画面に浮かぶ時刻は――
「……0時、ちょうど」
カナタ、まだ起きてるかもっ!
ゆっくり布団を抜け出し、音を立てないようにそろそろと立ち上がる。
足腰がやや重い。けど、動けなくはない。
俺はそのまま、屋敷の廊下へと歩き出した。
相変わらず、この屋敷……夜中は妙に薄気味悪いんだよ…
廊下の板がきしむたびに、心臓が一拍ズレる。
よし……行くか。
俺はそっと門を開け、月明かりに照らされた石畳の道を、ゆっくりと歩き出す――
その時
どこかの屋敷の前に一台の白いバンが、エンジンをかけたまま停まっているのが見えた。
えっ…こんな時間に……?
思わず足を止めた瞬間、バンの扉が開く。
暗がりの中から現れたのは――
ワシオ…さん…?
「……!」
反射的に、近くの塀の影に身を隠す。
ワシオさんは無言でバンに乗り込み、扉を閉めた。
バンのフロントライトがボンヤリと点く。
今の……絶対、ワシオさんだよな?
なんでこんな深夜に……?
手に、アルミケースみたいの持ってなかった?
本能がざわついていた。
俺はスマホをそっと取り出し、身を隠したままバンの写真を一枚撮った。
カシャ――。
シャッター音を鳴らさないように消音していたのが幸いだった。
……けど。
その瞬間、バンの中から“誰かの視線”を感じた気がした。
……今、目が合った?
けれど―― バンは何事もなかったように、静かに走り去っていった。
俺はその場に、しばらく立ち尽くしていた。
……なんだったんだ、今の…
俺は、少し早足になりながら北の石段の方へと向かった。




