表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/47

第9話 ゾゾゾ…八鬼伝説②

カガリさんが、一拍おいて口を開いた。


「……では、百年前の“八鬼祭”を実際に経験された、我が八乙女家の大巫女――ミタキ様をお呼びいたします」


ざわり、と場がわずかに揺れる。


奥の襖が静かに開かれ、二人の白衣の巫女に付き添われるように、一人の老女が姿を現した。


その歩みはゆっくりと、しかしどこか浮くように軽やかで、まるで歴史そのものをまとっているようだった。


白髪はぴしりと結われ、年輪を深く刻んだ顔に、感情の読めない白い瞳は見開いたまま、瞬きすらしない。


この人が……百年前の儀式を知る、唯一の生き証人か…。


ミタキ様は、無言のまま所定の位置に立ち、誰にも頭を下げることなく、ただ静かに佇む。


その存在感だけで、空気が一段重くなった気がした。


しんと静まり返った広間に、ミタキ様の低く凛とした声が響いた。


「それは、私が物心つく前のことじゃ――」


「村から子が一人、また一人と姿を消し、やがて“鬼による神隠し”と囁かれるようになった」


「夜な夜な現れ、子を喰らう鬼。人々は怯え、なすすべもなかった」


「ある晩、隣家の子が襲われ、その親が鬼を斃した。だが翌日、その家の者すべてが“鬼”となっておった」


「それが、“最初の連鎖”じゃ」


「数年をかけ、鬼の呪いは村に広がり、噛まれた者は処刑されるようになった」


「……そんな中、我が姉ぎみが鬼に噛まれた」


「皆、最期を覚悟した。…だが姉ぎみは鬼とならなかった」


「以来、姉ぎみは“鬼退じの巫女”と呼ばれ、八乙女家は“退鬼の血”を継ぐ家とされた」


「そしてある日、村に七人の旅人が現れた。名も告げず、ただ“鬼を祓いたい”とだけ申した」


「彼らは“水”“知”“商”“建”“技”“癒”“武”の七柱を残し、それを受け継ぐ家が興った」


「八つ目の柱――“巫女”を担う我ら八乙女家を加え、これが“八家”のはじまりじゃ」


俺は思わず、息をのんだ。


……現実離れしすぎてる。


まるで映画かゲームの設定だ。

けど、みんな真剣で、誰ひとりとして茶化さない。


ここにカナタがいたら、興奮して騒いでただろうな――

「すげぇ!超ヤバいってコレ!」

とか言いながら、絶対撮影とか始めてる。


横目でアキラの顔を見ると、

彼は目を輝かせて、真剣な表情でミタキ様を見つめていた。


本気でこの話を、信じてるんだ。


ミタキ様は、ゆっくりと目を見開く仕草を見せ、再び語りはじめた。


「……やがて、八家の力により、鬼は少しずつ数を減らしていった」


「されど、安寧は長くは続かなんだ。

わしが十の頃…巫女である姉ぎみが、重き病に倒れたのじゃ」


「医の者も手立てはなく、姉ぎみは日ごとに衰えていった。

余命いくばくもない中で……その“力”を村に遺すため、我らは儀式を行う決断をした」


「それが、“八鬼祭”の始まりじゃ」


「姉ぎみの力を封じ込めた“聖水”を、この境内の井戸に流した。

そして村人すべてが、それを口にしたことで…鬼は、村から姿を消した」


ざわ、と誰かの喉が鳴ったような気がした。


「されど、その井戸も、百年を経て枯れゆく。

ゆえに、また新しき井戸に、八乙女の巫女の“力”を流し、村を守るのじゃ」


「それが、これより行われる“八鬼祭”…百年に一度の、退鬼の儀である。」


すべてを語り終えたミタキ様は、ただ黙して立ち尽くしていた。

まるで、俺たちを静かに試しているかのように。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ