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34話 『カウントダウン』

 ガタガタとまだ舗装されていない道のりを、馬車で移動する。

 馬車の中には、私と父、兄、レオンの4人がいる。エイリ、シノ、マルタはその後ろの馬車にいて、2つの馬車を囲うように騎士や歩兵が何メートル先まで守っている。


「……リディ、レオン。このような結果になってしまい、本当にすまない」

「あの噂を早い段階で対処しておけばこうはならなかった。我々の怠慢が招いたことだ。本当に申し訳ないことをした」

 馬車の中で、父と兄は申し訳なさそうにそう言った。

「お父様とお兄様は何も悪くありません! 仕方ないことだと分かっていますから!」

「そうですよ、姉さんの言う通り僕らはお父様たちのせいだなんて微塵も思っていません」

 私たちは2人を宥めるようにそう言ったが、やはりまだ申し訳なさそうに俯いている。

「それはそうと、ミュンシスタまではどういったルートで帰るのですか?」

 私は重い空気を一掃するため、話題を変える。

「それ、僕も気になっていました。海上からではないということは、プトロヴァンスを通過して帰るのですよね?」

 トルティ王国からミュンシスタまで陸上から行くのであれば、プトロヴァンスを通過するしか他はない。緊張状態にある今危険な道のりは避けるのが道理であるため、別のルートを私たちが知らない間に開拓したのだろうか?

「ああ。プトロヴァンスは通過する」

「「!?」」

「最初は海上から渡ろうかと考えたのだが、ミュンシスタは水軍に乏しい。それに、今の時期は嵐が起きやすい季節だ。難破してしまう可能性の方が危険だと判断したのだ」

「不安だと思うがよく考えてみろ。こっちには5万の大軍と、獅子王の私がいるんだ。安心できるだろう?」

「そうですね。よく考えてみれば、プトロヴァンスはこの大軍を相手にする力なんてありませんし、政府の中枢は我々との衝突を避けたいと考えているのですよね。今回の騒動も、一部の過激派が行ったことですし。となると、警戒しすぎる相手ではないのかもしれません」

「レオンの言う通り、私たちを狙うのは一部のイカれた過激派。国としては国力の差を考えて戦わないという選択を取っているため、些細な力しかないのは確かだと思います。ですが……」

「どうしたんだ、リディ。何か思うところがあるのか?」

「いや、些細な力しかない彼らがミュンシスタの大軍に勝つには……いや、不可能ですね。非力な私やレオンを人質に取ることなんてできる訳ありませんし」

 人質を取れば、彼ら――というか、プトロヴァンスは我が国に勝つことができる。まず、世間にも自国にも嫌われている過激派の面々が後ろ盾を得るには、戦いに勝つことが必須である。

 その戦いに勝つための手段は、何度も言うが人質を取ること。

 ただその人質は、使い方を誤ったならば宝の持ち腐れだ。私ならミュンシスタとプトロヴァンスの国境ギリギリに建っているオルビ城に持ってくる。

 なぜなら、そこで籠城戦を仕掛けるからだ。攻撃する城に人質がいるため、ミュンシスタ軍は迂闊に攻撃できない。兵糧攻めをしようにも、人質の命も危うくなるためできない。

 こうして攻めることが満足にできないミュンシスタ軍は、プトロヴァンス軍に城の上から総攻撃され、敗北するだろう。

 また、国境ギリギリの位置にあるため、向かう途中で村が焼き払われたり、略奪を受けたりなど、平民が犠牲になることはほぼない。

 戦後復興も苦ではないだろう。


 ということを考えていたので心配に思っていたが、もう『人質を取ること』自体が不可能であるため、不安に思う必要はない。

 過激派たちは勝てる方法があったにも関わらず、あまり賢くないせいでチャンスを棒に振った。ざまあみろ。

 彼らの最大の誤算は、マルガレータ様への評価だろう。彼女はとても賢い。だから、あの暴動の意図を的確に見抜き、私たちを馬車一台と僅かな従者だけで帰さなかった。

 ざまあみろ。


「安心してくれ。奇襲にあったとしても我らの軍が一網打尽にしてやるさ」

 一抹の不安も消え去り、私たちは久々の家族団らんの時間を過ごした。



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