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26話 『楽しい学校生活と不穏な影』

「――――というように、この物語の作者は自分の境遇に嘆いていたのではなく、むしろ誇らしく思っていたのではないでしょうか?」

 エイリが発表すると、教室中があっと驚かされたようにざわめいた。

「ありがとうございます。エイリの意見は斬新で面白いわね」

「そう言っていただけて光栄です!」

「では、この物語をエイリと違う解釈をした人はいるかしら?」

 マルガレータ様がそう言うと、私含めほとんどの生徒が一斉に手を挙げる。

「ではリディア。あなたの意見を聞かせて頂戴」

「はい!」

 私は教卓の前へ立ち、今日も楽しく授業を受けるのだった。






「うーん、どうしようかな」

 机の上にある便箋に何を書こうかと頭を悩ませる。兄への手紙へ何か書こうと思っても、特別なことがある訳でもないため、内容に困っていた。

 入学して3週間、トラブルがなかったわけではない。

 私にいきなり求婚してきたハラード王国の第二王子だったり、マルガレータ様と親しくしていたことで嫉妬され、陰口を叩かれたりはした。というように、色々あったがそれも解決し、今では友達と楽しくやっている。

 だが、それも既に手紙に書いて送ってしまったため、また同じ内容とはいかない。


(最近楽しかったのは文学史の授業だっけ。本の研究として、その本の作者の人生やどういう人だったかを考えるのは面白かったな)


「あ、そうだ! ここへ来て感動したことを書こうかな」

 私がここへ来て一番感動したのは、ミュンシスタでは見たことのない大きな図書館である。

 校舎から出て十数分ほどのところにある2階建ての建物が図書館で、一生かけても読み切れないほどの膨大な蔵書があった。

 あれを見た時は思わず感嘆の声をあげたものだ。

 この世界にきてから本は何百冊も読んだが、これほどまでに大量の書物が並んでいるのを見るのは初めてだ。

 吹き抜けの構造になっており、二階はやはり本棚に占拠されている。

 各所に机と椅子があるのは、やはりここで勉強する者が少なからずいるからだろうか。

 調べ物をするにも丁度いいだろうし。


 それを知って以来、私たち5人はいつも授業が終わると図書館に入り浸っている。

 あの時の感動を伝えようと、私は早速筆を動かした。




      ☆      ☆




「ママ、痛いよお!」

「お願いです! この子を助けて下さい!」

「黄炎病患者め、まだ生き残ってやがったのか!?」

「こいつらを捕らえろ! 子どもだけじゃなく母親も感染しているかもしれない。まとめて殺しておけ!」

「「はい」」

「うわあああああああ!!!!」

「いやあああああああ!!!!」

 ここはプトロヴァンスの田舎町。ここに黄炎病患者がまだいるとの情報を聞きつけた政府は、兵を出し、患者の処刑を命じた。

 飛び散る血しぶきが、村人を震撼させる。

「いちいち見てないで働け!」

「昨年収めた税金が足りなかったのは誰のせいだと思っている!? お前たちの怠慢が招いたんだ!」

「そ、それは人手不足で――」

「言い訳など聞きたくない! そんな暇があるなら田畑を耕せ!」

 空高く昇っていった銃声に怯え、集まった村人たちは一目散に逃げていく。


「怠惰な奴らめ。あいつらが怠惰に過ごしているから、昨年は規定の税を納めることができなかったんだ」

「本当にその通りです。国家が貧しくなったのも、税を納めない農民のせいです」

「……僕はそう思いません」

「何!? お前、俺の意見を否定するのか!?」

「い、いえ! 隊長の意見も正しいです! ただ、真の黒幕は別にいる気がして……」

「別に?」

「元王妃のことか?」

「いえ、元王妃もそうですが、本当の黒幕は、多分――――ミュンシスタ」

「「!?」」

「プトロヴァンスがここまで落ちぶれたのは、ミュンシスタのせいです! ミュンシスタが黄炎病を広めたに違いありません!」

「た、確かに……!」

「ミュンシスタだけ黄炎病の被害が確認されていないのは、明らかにおかしい!」

「そうでしょう。なので真の敵は――」



「「「ミュンシスタだ」」」


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