第17話 最後の足掻き (レナータ視点)
ガリガリガリガリ……
どうしようどうしようどうしようっ!!!
侍女用の部屋に戻った私は、爪を噛みながらどうすればいいのか分からず焦っていた。
死体がなくなるなんてっ
コルネリアが生きているって事!?
だったら、警ら隊に通報されるわ!
「ああ…っ! 何でこんな事になるのよ!」
憎いあの女を刺した時は、最高の気分だったのに!
セルゲイ様に助けを求めていたけれど、薬が効いていたから彼は何の反応も示さなかった。
その時のコルネリアの絶望した顔、ざまぁみろだわ!
後は息絶えたコルネリアの死体を私が発見し、警ら隊に連絡。
荒らされた部屋の状況からして盗っ人と鉢合わせして殺された…そういう筋書きを考えていた。
けど…その死体がない!!
とりあえず、血の跡はテーブルで隠した。
コルネリアは体調が悪く部屋に籠こもっている事にしよう。
それでも…いつまでもコルネリアの体調が悪いとごまかせないし、セルゲイ様の状態も隠しきれない。
下手したら幻魅香を使用した事に気づかれるかも…
こうしている間にも警ら隊が来るかもしれないっ
逃げなきゃ!!
私は鞄を出し、急いで荷物をまとめ始めた。
こんなはずじゃなかった!
コルネリアさえいなくなれば、全て上手くいくと思ったのに!!
コンコン
「!!」
ヒュッと喉が鳴る。
胸を押さえながら声を殺した。
「レナータ、いる?」
仲間の侍女だ。
「な…に? どうかした?」
私は扉をそっと開けて、周りの様子を窺うかがう。
さっきから下で騒めく音が気になっていた。
「…その…エントランスに麻薬調査局の調査官って方々が来ているんだけど…あなたを探しているのよ…、レナータ。あなた何かやったの!?」
彼女は青い顔をして私に問い詰める。
「…さぁ、心当たりないけど…すぐ行くわねっ」
私は動揺を顔に出さないように、微笑んだ。
「…早く行った方がいいわよ」
巻き込まれたくないのだろう…彼女は足早にその場を立ち去った。
警ら隊ではなく、麻薬捜査局の捜査官!?
なんで!?
どうして!!
どこからバレたの!?
もうっ 何もかもめちゃくちゃだわ!!
私は荷物を詰めた鞄を手に、セルゲイ様の部屋へと向かった。
とにかく逃げよう!
セルゲイ様と一緒に!!
でも、どこに?
実家だってすぐに捜査の手が伸びる。
…ううん、とにかく今はこの屋敷から逃げるだけ!
セルゲイ様さえいて下さればそれでいい!
私は愛する人の部屋へ急いだ。
それが破滅への道だとも知らず、駆け出した。




