婚約破棄と泣いた欲しがり妹~~欲しがり妹に婚約者と別れさせられた姉の話
人類の歴史は、欲しがりの歴史と言っても過言ではない。
文明の発展は、欲しがりの心が母体であると言っても、妄言だと否定出来る者は、そう、多くはないはずだ。
今日も、欲しがり妹は・・・・
『オープニングはスキップ!メモリーは昨日から!・・・』
・・・・・・
チュン♩チュン♩
「メアリー様、お目覚めのお時間でございます」
「フニャ、アン、また、変な夢をみたの~~~」
「まあ、黒髪のお姉さんになった夢ですね」
そう、私は、鏡のような画面に向かって、私を操作する夢を見ている。
いや、私に似ているが、目が大きい・・・
あれは、何なのだろうか?
私はメアリー・スー、10歳だ。
スー商会の二番目の娘。
お父様とお母様は、外国に拠点を設けるために、長期、出張中。
この王国の本店は、お姉様に一任されている。
お姉様は、今年、貴族学園経営科を卒業し、店の経営を一任されている才媛だ。
私は、午前中は、お勉強。
「メアリー様は、数学はマスターしましたね・・・」
しかし、
午後のマナーとダンスは、今ひとつ。
貴族年鑑の暗記も苦手だ。
さて、夕方になったので、
お姉様の執務室に行って、おねだりをする。
これが、唯一、お姉様との会話みたいなものだ。
トントン!
「入るの~~」
部屋に入ったら、先客がいた。
お姉様の婚約者、ロバート様だ。歳は21歳、貴族、伯爵家の次男様だ。
「助かったよ。エリーゼ。おかげで、兄の病気が治った。今は聖王国でリハビリ中だ。しかし、滞在費がかかる。スー商会の宣伝もしたいと言っているが・・・」
「まあ、良かったですわ。滞在費と社交費はお任せ下さい。あら、メアリー、勉強は終わったのかしら」
「うん。終わったの~~」
「・・・それで、今度は、妹に婚約の話が来ているのだが、ほら、ダイア侯爵家・・」
「まあ、すごいですわ!」
「父上が頑張って、結んだのだ。スー商会の助けになるかもと・・・しかし、結納金が・・」
「そうなの。分かったわ。任せてね」
・・・・おや、また、援助の話だ。
こいつは、商売敵だ。私のおねだりの邪魔だ。
今日は、ヌイグルミの新作を買ってもらおうと思っていたのに、
出来ないじゃない!
「ウヌヌ・・・なの~」
しばらくすると、
食事の量が減った。
「目刺しとパンとスープなの~~」
「メアリー、商人は、倹約よ」
使用人も減った。
「アン、他所行きの服を来て、どうしたの?」
「・・・お嬢様、今まで、お世話になりました」
「閑を出したわ。メアリー、自分の事は自分でしなさい」
日に日に、貧乏になっていく、
「大丈夫よ。私、一人でやれるわ。元々、一人で出来たのよ!」
お姉様は頑張り屋だ。
執事と、御者で、商会を回すようになった。
家庭教師も来なくなった。
自習だ。
「ミャー、ミャー」
「ミディちゃん。隠れて、お姉様が来たの~」
猫が庭に迷い込んだ。薄いオレンジ色の女の子だ。ミディちゃんと名をつけた。
おねだりして、一緒に暮らしたいのだが、今は、言いにくい。隠れて、一緒に暮らしている。
持ち直したら、正式に家族に迎えるように、お願い、おねだりをしよう。
「今日は、遠方まで、馬車で、仕入れに行きます。メアリー、ご飯は、執事に頼んでおきました」
「はいなの~」
と言っても、パンとチーズだ。スープがなくなった。
贅沢は言ってはいけない。
「今をしのげば、王国中に商売の手を広げられるのよ。侯爵家と、縁続きになれるのよ・・」
「無理をしてはいけないの~~」
・・・・
「ミャー、ミャー!」
「目刺しあげるの~頼んでおいたの~」
「ミャン!」
「ミディちゃん・・・・ガリガリに痩せて、グスン、ふがいないお母さんでごめんなさいなの~」
「ミャン?」
「あの、お嬢様、私、今日でやめさせて頂きます・・・」
「そうなの?」
お爺ちゃん執事は、兼職で体がもたない。お姉様が留守の間に、退職願を書いて、私に渡した。
「旦那様と奥様に、メアリー様から、ご連絡ください。エリーゼ様に意見具申しましたが、無理でした」
え、お父様とお母様に連絡を取っていないの?
これは、大事だ。
手紙の書き方は、習っている。
手紙の出し方は・・・冒険者ギルドだ。
いくら、かかるだろうと、お小遣いで足りるか?と思っていたら、
ロバートがやってきた。
「お姉様はいないの~~」
「知っているよ。君に用事があったのだ。フン、苦労知らずな顔をしているな」
何?態度が違う・・・
「さあ、馬車に乗って、いや、乗れ!」
「やーなの~~~」
「「「さっさと、こっちに来い!」」」
「ミャー!」
屋敷には私独り、無理矢理、馬車に乗せられた。
☆☆☆伯爵家
「え、何?カーター様、病気じゃなかったの~~~」
「アハハハハ、馬鹿だな。姉妹そろって」
何?
伯爵家の跡取り息子のカーターは、25歳、病弱で、聖王国の教会で治療を受けているハズでは・・・・
「そろそろ、刈り入れは終わった。エリーゼと婚約破棄をする」
「ヒドイの~~」
「フフフフ、原因はお前だ。お前は、俺に横恋慕をして、伯爵家屋敷に乗り込み。暴れて、婚約契約書を破いた・・ことにする」
「そして、我が伯爵家は、このような我が儘娘のいる商会とは、縁を結べない」
「お前は、寂しく修道院に行くのだ」
ビリビリビリ~~~
私の目の前で、お姉様との婚約契約書を破いた。
「さあ、暴れたように見せかけないとな。ドレスを破け」
「「「はい!」」」
ゴロツキのような使用人達に囲まれた。
「ミャー!ミャー!」
「ミディちゃん!」
心配して、付いてきてくれたのね。危険よ!
「シャアアアアーーーーーー!」
「何だ。この猫は!」
ミディちゃんを抱き上げようとしたら、
ガシ!
馬鹿息子ロバートが、ミディちゃんを蹴った。
「ミャアアーー」
許せない!
頭が真っ白になったら、
体が動いた。自然に。
シュン!
「「「何、飛んだ!」」」
バサ!
ミディちゃんを抱きかかえた。
言葉が出る。ポエムのようだ。
「ひとーつ、平民の血税をすすり・・・無為に過ごし、
ふたーつ、それでも足りず。不埒な頂き三昧・・
みーつ。ド腐れ外道、猫を虐める暴虐馬鹿貴族・・・」
「このガキ!」
シュン!
ポエム途中に、襲って来たが、これも、自然とかわせた。
ドタン!
「いてー」
空を斬って、転んだようだ。
「よ~つ、成敗してくれよう。この欲しがり妹が!
【欲しがり妹奥義!THE!Flower garden in the brain!!】」
私は、右手で、ミディちゃんを抱いたまま、左手を挙手し、そのままグルグル回る。
すると、体から、ピンクの花びらが出現し、つむじ風のように、奴らを襲った。
「ホエ~、何だか、どうでも良くなったでポエ~~」
「ハニャ!お花畑が見える~」
「欲し~の。真実が欲し~の。お姉様に、正直に言うの~~~」
「「「はい、メアリー様!」」」
「欲し~の。お金が欲し~の。だまし取ったお金を返すの~~~」
「「「はい、メアリー様、しかし、足りません」」」
「使い込んでしまいました」
「なら、働くの~~~」
「「「あい、メアリー様」」」
「お姉様と婚約破棄をして欲し~の。違約金も欲し~の!」
「あい、それでは、屋敷を売り。爵位もうりましゅ~」
「ミディちゃん。治って欲しいの~~」
ミディちゃんが光る。
「ミャア!」
・・・・・・
フウ、疲れたわ。でも、これをしのげれば、王国中に商売網を広げられる。
あら、商会に灯りがついているわ。まだ、メアリーは寝ていないのかしら、魔石が無駄だわ。
叱らなければ・・
「ロバート様と伯爵、と夫人、カーター様!・・・」
伯爵家のご家族達がいる。金貨の入った袋?
ドサ!
「お金は、返します。今ある有り金全部です。足りない分は、働いて返します」
「実は、今まで、貴女を騙していました!」
「改心しました。故に、婚約破棄をします!」
「え、婚約破棄、改心したのなら、また、結びますわ。大丈夫ですわ」
「いえ、いえ、メアリー様からのご命令で、これは、破れないのです」
「ヒィ、グスン、メアリー!!余計なことを!」
・・・人は理屈では割り切れない。
お姉様は、あの馬鹿息子を本気で好きだったのだ。
力に目覚めた今なら分かる。
私は、屋敷の外から、様子を確認して、踵を返す。
「ミャア!」
ミディちゃんと、この欲望の大海を、欲しがり妹として、舵を切るのだ!
分かっていた。
お父様とお母様は、お姉様の言い分を全て、聞くだろう。
この能力は説明不可能だ。
「行こう。ミディちゃん。我が征く先は、欲望の大海なの!~~」
「ミャア!」
「グスン、グスン、涙が出てくるの~」
割り切れないのは私も同じだ。こうするのが最善と分かっていても、涙が出てくる。
私もお姉様が好きだったのだ。
ペロペロペロ~
「ミャン!」
ミディちゃんが、手をペロペロなめてくれた。
後に、女神信仰圏、最高の商人と呼ばれたメアリーの旅立ちであった。
最後までお読み頂き有難うございました。