Prologue
同じだ。
悲鳴と怒号が部屋に入り混じる中、誰かがポツリと呟いた。
あの時と同じ……10年前と。
10年前、この家の家長だった城之内蔵之介が殺された、あの時と。
あの時も確か、雪が降っていた。明け方、中庭には数10cmに及ぶ雪が積もり、その上に、犯人のものと思われる足跡が……。
「中庭はどうなってる!?」
城之内達彦が書斎の向かい側にある窓を開けて、中庭を確認した。羊たちも死体から目を引き剥がし、急いで窓から顔を覗かせる。そう、その時、羊は確かに確認した。中庭に面する窓に鍵はかかっていた。確かに、2枚とも。
「どうなってる……」
達彦の声は、次第に当惑を帯び始めた。目の前に広がる白銀の世界に、羊は目を細めた。
違う。
同じじゃない。足跡がなかった。現在は、同じ殺人事件だったとしても、10年前とは状況が異なっていた。今回の密室は、書斎だけでなく寝室にも、二重に鍵がかけられていたのだ。
そしてその中で、再び死体が発見された……。
「荒草くん……これって」
「オイ、羊……」
「…………」
不可能殺人。
呪いだの超能力だの、オカルトめいた言葉がふと頭を掠める。だけど、違う。10年前と同じ館で、同じ日に起きた殺人事件。決して偶然じゃないはずだ。
羊はゆっくりと皆の方を振り返った。できるだけ冷静に。合理的に判断を下さなければならない。皆の視線を浴びながら、羊は静かに、慎重に言葉を紡ぎ出した。
「……つまり犯人は、この中にいるってことです」
その前日。羊たち6名は、冬休みを利用して、北海道旅行に訪れていた……。
〜登場人物紹介〜
城之内蔵之介 …… 元社長。2014年死亡
城之内俊哉 …… 社長
城之内達彦 …… 会社員
城之内麻耶 …… 主婦
新沼誠 …… 客①
新沼理恵 …… 客②
佐川圭 …… 客③
佐川心 …… 客④
山下 …… 管理人
田島 …… 管理人
荒草羊 …… 高校生
立花照虎 …… 高校生
伊井田鉄郎 …… 高校生
犬飼賢二郎 …… 高校生
因幡りょう …… 高校生?
因幡兎子 …… 高校生?