私の方が良いってことね
取り合えず9話目です。
この物語はフィクションです。
よろしくお願いします。
3試合が完了し、休憩が伝えられた。
アレクさんを入れて、私たち5人は魔族の兵士が案内した部屋に戻った。
「うーむ。これは分が悪い。マリー棄権しろ。」
「…。」
「マリー。私からもお願いします。あれは規格外です。正直、魔王よりも強い可能性があります。」
「…。」
ゴリアテもへリスも声を掛けたが、私は声を掛けなかった。
正確には、まだ恐怖に飲まれ、声が出せないでいた。
もしかして、マリーも…。
沈黙が部屋に満ちた時、意外な訪問者が来た。
「お前たち、予定を変更する。この後はマリー、ミリア、ドラ・アルティミアで戦闘を行ってもらう。」
宰相は事務的に内容を伝えた。
それにへリスが対応する。
「では、2対1でも問題ないと?」
「そうなるかもしれんな。しかし、王からの命令故、私が理由を知る必要もないし、お前たちが知る必要もない。ただ、3人を舞台に上げるだけだ。開始前には呼びに来る。この部屋で休むがいい。」
「分かりました。では後程。」
「一点伝え忘れていた。私にはわからんが、『せっかく呼んだのだ。負けは許さん』と、王からの伝言だ。」
「…わかりました。」
宰相は私たちの返事を聞き終えると、すんなりと部屋を出て行った。
私とマリーが、あの魔族と戦うのか…。
緊張とかそういうことじゃなく、自分の死期を悟ったかのようで、気分が悪い。
しかも、魔王から負けは許さんと…。棄権も選択肢には無いようだし。
結局、マリーが発言するまで、マリーの顔を見ることはできなかった。
「勝とう。うん。勝つしかない。作戦を練るわよ!」
マリーはやる気のようで、私は驚いてマリーを見た。
ゴリアテとへリス、アレクさんも同じ感想のようだ。
「マリー、奴とどう戦うのだ?案を考えようとも、あの槍の攻撃は見えたのか?」
「見えなかった。でも食らわなければ何とかなると思う。」
「何とかって…回復は限られています…!兵士たちから分けてもらっても、損傷率60%を超えるとどうなるかご存じですよね!」
「だから、食らわないようにするの。」
「…私は身体能力も高くないし、相手は近接メインだと思うから、援護も満足にできる自信はないよ…。」
「うん。でも、勝つしかないの。」
「骨は拾ってあげるわ♡」
「お願いね…って、え?」
そこにいたのはエルだ。
いつの間に…!
「あーん♡ア・レ・クちゃん♡」
ちゃん?
エルはアレクに抱き付いた。
胸を腕に押し付けやがって…!何してんだ!
私の怒り顔を見てエルが話す。
「その粋よ、ミリア。あなたの魔法は人間にしては上出来。策はあるわ♡」
「策って?」
「アルティミアはオーガの人形に何をしたの?」
「槍で人形を吹き飛ばした。」
「そうね。その時オーガには何が起きた?」
「後退りを始めたけど、たぶん、その時には既に体が切り裂かれていた。」
「そう。確かに槍の攻撃は見えないほどに速い。でも、あんな風に圧を振るっていたら、オーガの後ろの観客席が崩壊するはず。でも、崩壊はしていない。ってことは?」
「あの攻撃は魔法の攻撃!」
「そう。魔法の攻撃を行うには原則、何が発動条件になる?」
「呪文の詠唱?」
「そうね。へリスちゃんはマリーに何を渡していた?」
マリーに宝石を渡していたこと知ってたんだ。
ということは…。
「魔法を打ち消す宝石を…。そうか、槍に風の魔法を刻んでいる!」
「その通り♡」
「で、どうするの?」
「槍を奪っちゃえ♡」
「どうやって?」
「知らない♡」
だめだ。糸口になるかもしれないと思ったけど、それを知っても、身体能力では向こうが上だ。
どうやっても槍を奪える気がしない。
マリーは神妙な表情でエルの案について話した。
「あの槍を奪う方法かー。槍は基本的に両手で持つし、握力も相当ありそうだから、弾いて奪う方法は無理よね。手を放してもらう必要があるのかな。」
確かに、私たちに見えない速度で槍を振るうためにも、強力な握力は必要だ。
正攻法以外の方法を考えなければ。
「ゴリアテは無理として、へリスはいい方法思いつく?」
マリーの言葉に、ゴリアテが反応するが、文句が出なかった。
ゴリアテは正攻法派なのだ。
「私は…。槍を手から離せばいいなら、筋力低下の補助を構築することを考えますが…。」
そう、それはへリスだからできることだ。
戦闘中に外部からの干渉は見逃してくれないだろうし、無理がある。
しかし、その言葉を聞いてエルが口を挟んだ。
「良いこと思いついちゃった♡」
ヤなことではなく?
「へリスちゃんが筋力低下を掛けられるならさ、へリスちゃんを連れてけばいいじゃない♡」
…?
エル以外の全員が面食らった表情をした。
「エル、私とミリア以外に出場することはできないんだけど…?」
「『出場者』としてはそうね♡」
「どういうこと?」
「武器としてへリスちゃんを持ち込んだら?」
「武器として…!」
なるほど。意味わからん。
ゴリアテが笑い出し、へリスと私は驚愕した表情だ。
マリーは…その手があったか、と言わんばかり。
笑いついでにゴリアテが言葉を投げる。
「それができるなら、ミリアの武器として俺が出てもいいわけだな!」
通ればの話だが、それで全員出場が可能になる。
そんなに上手くいくものか。
エルは提案してくる♡と、どこかへ飛んで行ってしまった。
パーティーで出場するとして、勝てる見込みがあるのかは別の話。
やるだけやるしかないのは確かだが、負けは『死』に直結する。
負けるわけにはいかないし、勝ったら勝ったで勇者が魔王と結婚してしまう。
私たちは何のために戦っているのだろうか…。
「いいって♡」
帰ってきたエルが喜びながら報告してきた。
4人で出場できれば勝率は上がるわけだし、ブーイングが出たとしても魔王の名の下に開催している以上、通ってしまう感じか。
まあ、その方が私たちに都合がいいわけだけど。
その報告を聞いて、案出しを中断、休むことに集中した。
宰相から直々に声が掛かり、会場へと向かう。
途中、魔王も来ていた。
「話は聞いた。我からも人間を武器として出場することを認めておこう。」
マリーは軽く礼を言いつつ、魔王に近づく。
距離に魔王が嫌がっているようにも見えるが、マリーは気にせず話した。
「この戦いで勝ったら、結婚してくれるんだよね?」
「候補になるだけだ。」
「でも、なんで私に手紙をくれたの?」
「お前個人にではないが…。出場を依頼したのは、あのドラ・アルティミアという女が苦手だからだ。奴は何を考えているのかわからん。」
魔王にも苦手な人がいるのか…。
「私の方が良いってことね!絶対に勝って見せるわ!」
両手に拳を軽く握り、上から下にバウンドさせるポーズは乙女そのものだった。
私たち4人が舞台へと上がると、既に舞台にいたドラ・アルティミアがこちらを見た。
確かに何を考えているのか読み取れない。
敵意を感じないのが不気味だ。
しかし、槍を握りしめて立つ姿は凛々しくもある。
我々はアルティミアの正体も分からないが、強さも特に知っているわけではない。
不安が私たち4人を撫でるかのようだった。
開始前にそれぞれ確認を行う。
もちろんアルティミアに聞こえないように。
「開始と同時に私が補助を構築します。ゴリアテ、その間の時間稼ぎを。」
「承知した。あの槍だ。長くは持たん。」
「私が強化されたら突撃するから、ミリアは魔法の準備をお願い。」
「分かった。とりあえずサンダーを構築する。」
既に起こっているブーイングは気にしない。
私たちは勝利する以外に生き残ることができないだろう。
ブーイングなんて可愛いものだ。
宰相が舞台に上がり、観客に説明する。
「決勝戦だが、ドラ・アルティミアと人間二人、まとめての戦闘となる!人間二人は武器として、他の二人を使うことになった!魔王様がお認めになったのだ!文句のあるものはいるか!」
さっきまでのブーイングは収まり、文句がないことが示される。
確認が完了したのか、宰相が舞台を降りた。
いよいよ、魔人四天王の一人、ドラ・アルティミアとの戦闘が始まる。
私たちの武器を握る手に、いつも以上に力が入っていた。
お読みいただきありが等ございます。
続きはそのうち上げますー。