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私、魔王と結婚するの

取り合えず4話目です。

この物語はフィクションです。

よろしくお願いします。

拠点に着くとマリーが暴れていた。

「なんで邪魔するの!?もう少しで彼と付き合えたかもしれないのに!」

「相手は魔王だぞ!人類の敵だ!」

「そういうあなたは私と彼の敵よ!」

ゴリアテとマリーが役職を忘れ、親子のようにケンカをしている。

…これが人類の希望なんだ。


一通り暴れたマリーは自室に帰っていった。

あとを追って私はマリーの元へ行く。

途中、ヘリスに腕をつかまれ止められた。

「マリーは魅了されているのでしょうか?」

こっちもか。いつまでそれを疑っているんだ?

「ごめんね、マリーの方が先。」

ヘリスの手を払い、マリーの元へ急ぐ。


「もう!なんで彼との関係を邪魔するのよ!」


マリーは暴れ足りない様子でいた。

「マリー。ちょっと話を聞いてほしいんだけど…。」

「ミリアも私と彼の邪魔をするの?」

「そうじゃなくて、どうして魔王と付き合いたいと思ったのかを聞きたいの。」

怒った表情をしていたマリーが少し間をおいて恥ずかしそうに話し始めた。


「彼、すごくかっこいいの。」


…他には、無いみたいだね。

完全に一目惚れってことか。


「かっこいいのは分かったけど。人類はどうなるの?」

「魔王が分かってくれれば、人類は大丈夫!」

「分かってくれなかったら?」

「そんなことないよ!魔王は力を持て余しているだけ。私が強いことを知れば、私と戦うことに夢中になって、人類には目を向けないと思うの。」


まあ、一理ある…のか?

私は怪訝な目をしているのだろう。

「ごめんね、ちょっと一人にして?」

私はマリーの背中を見ながら、その場を離れた。


「魅了は効かないはず…。」

へリスはまだ混乱しているな。

ゴリアテは腕を組み、物思いにふけっているようだ。

私は暗く星の輝く空を仰ぐことしかできなかった。



もう一度体制を立て直した私たちに訪問者が現れた。

朝日と共に現れたのは魔王軍の精鋭たちだった。

兵士たちの戦闘音で気付いたマリーがいち早く駆けつけ、戦っている。

こんな時、魔法士は役に立たない。

大きな魔法は味方を巻き込む。

杖を構え、最小の魔法を打ち、後方からアシストする以外にない。

自分の無力を呪いながら戦っていると、へリスが魔法陣を形成した。

ゴリアテも到着し、盾を構えて突進する。

へリスの魔法により兵士たちが強化される。

ここまで来た兵士たちは頼りになる。


最後の魔物が力尽き、マリーの剣が振るわれる。

べっとりついた魔物の血は、祓うのが大変だ。

ギリギリだが、死者は出なかった。

良かった。


「大丈夫ですか?」

兵士の一人が私に声をかける。

一番安全な位置に陣取っていた私は、この中で一番大丈夫なのだ。

「私はいいから、他の兵士たちの手当てを。」

卑屈になっているわけではない。

私も手当に回る。

へリスにより全体回復が施され、体制を立て直す。

壊れたバリケードが敵の強さを物語っていた。


「何とか追い返しましたね。」

へリスは肩で息をしている。

魔法力を消費しすぎたのだろう。

「あとはやっておくから、少し休んで。」

へリスの回復魔法は強力だ。

起き上がった兵士たちの一部が周りを確認する。

他に敵が潜んでいるとも限らない。


「マリーは、大丈夫らしいな。」

ゴリアテはマリーの父親面で心配する。

昨日はあんなに言い合いをしていたというのに。

当のマリーは剣を収め、兵士たちに指示を出している。

「南側は少なめの人数でいいから、西の小道を注視して。」

テンの町を奪われるわけにはいかない。

こんな時、マリーは頼りになる。


「あの、これを…。」

さっきの兵士が私に薬を渡す。

私はその薬を立てない兵士に渡していった。



魔物の攻撃が止んだことを確信し、休憩に入る。

私はマリーの所へ行き、話をした。

「何とかなったね。マリー。」

「さすがに魔王城近くは危険だね。魔王は私たちをあぶりだすために攻撃したのかな。」

「テンの町を取り返すためかもしれないね。」

「北の門が手薄になりそうだから、私が見に行くね。」

マリーは決意をもって北の門に向かった。

ようやく、安堵の息が吐ける。


「マリーは寝返っているわけではなさそうだな。」

ゴリアテが心配そうにしていた。

気持ちはわかる。私もそれを心配している。

「魔王のことを好きになってしまったらしいし、心配だよね。」

「あんな奴、俺は認めんぞ。強いことは分かるが、人間性のかけらもない。」

まあ、魔族だし、人間性はないだろうね。


「神の加護をすり抜けて魅了が効くことがあるのだろうか。」

へリス…。魔王は魅了を使ってはいないんだよ。


そのうち、慌ただしく兵士が声をかけてきた。

「マリーさんがいません!何か知りませんか?」

「え?北の門に行ったと思うけど。」

「北の門にはいませんでした…!」

私とゴリアテが北の門に行くと、数名の兵士たちが下半身を凍らせられ、動けなくなっているところだった。

「マリーさんが、単身魔王城に向かったようです…!」

兵士の一人が足取りを話した。

へリスと合流し、数名の兵士と共に私たちは急遽魔王城に向かった。


道中、ゴリアテの怒号が響く。

「アレク!右だ!」

次期勇者と言われるアレクさん。

兵士として同行しているが、マリーにも劣らない剣技が頼りになる。

「ここは俺たちに任せて、先を急いでください!」

アレクさんと兵士を置いて、私たちは魔王城に到着した。


大きな門がゴリゴリと音を立てて開かれた。

「もう、3回目の魔王城だな。」

ゴリアテは感慨深そうに話すが、緊張感が伝わってくる。

へリスも息をのみ、私の手は震えていた。


門が開いたとき、意外な人物が出迎えた。

「こっちよ。」

マリーだ。

私たちは話すこともなく、マリーの後をついていく。

辿り着いたのは魔王の元だった。

「よく来たな。まあ、座るがいい。」

無駄に長いテーブルに、厳つい座席が配置されている。

さも当然のように魔王の横に立つマリー。

何があったんだろう。


「お前たちは人間にしては強者だ。歓迎しよう。」

どこまでも上から目線。

だが、確かに強さでは上の存在ではある。

それとも、魔族が人間の上位の存在であるとでも言いたいのだろうか?

私たちだって、強さなら自信がある。

だからこそここまで生き残ってきた。

誇っていいよね?


先に口を開いたのはゴリアテだ。

「我々はマリーを迎えに来た。」

「そうであろうな。」

「マリー。なぜここに平然といる?」

ゴリアテの問いにマリーが答えた。

「私、魔王と結婚するの。」


深い瘴気と絶望があたりを蝕む。

しかし、沈黙が私たちの反論だ。

「もう一度魔王に会って、自分の気持ちと向き合いたかったの。それで、会ってみたけど、やっぱり私、魔王のことが好きみたい。」

人類の希望は魔王の横で、最大級に輝いているようだ。

赤く染まる頬を支え、左右に揺れながら話す様はただの恋する乙女だ。

対して、へリスはテーブルを見つめたまま動かなくなっていた。

「なぜなんだ…?なぜ魔王なんだ…?」

ゴリアテの当たり前の質問に、マリーは顔を更に赤らめて答える。

「だって…。しょうがないじゃない。好きになっちゃったんだもん。」

勇者マリーは乙女マリーに転職したようだ。

「我には分らぬが、勇者は我についた。人類は落ちたも同然だな。」

してやったりの魔王は鼻息を深く、態度で勝利を伝えていた。


置物とかしたへリスが小声で話す。

「神よ。心のままに従い忠を尽くさず、心を許し、愛し、虜にせよ。」

いつの間にか置いていたテーブルの宝石をちょこんと飛ばした。

その宝石は光りながらマリーの元へと飛び、魔法陣を形成した。

魔法陣の中に捕らわれたマリーは、特にリアクションなく平然としている。

「やはり、魅了の魔法は効かない。ということは、神の加護が働いているのか。」

魔法陣の消失と共に宝石が砕け散り、マリーが口を開く。

「私に状態異常の類は通じない。それは知っているはずよね?」

「しかし!魔王の虜になるなど、言語道断!神に背く行為そのものです!」

「そうなるかもしれない。加護を剥奪されても仕方ないことかもしれない。でも、私は彼の傍にいたいの!」

「そんな…。それでは人類が!」

「私が何とかするから、それは大丈夫!彼は分かってくれる!」

保証も何もない出任せ。それを今ここで信じることなどできるはずもない。


そのやり取りを睨んでいたゴリアテが口を挟む。

「俺はこんな奴を認めんぞ!」

「ゴリアテに認めてもらう必要なんてない!」

「そういう話をしているんじゃない!よりによって魔王を相手にすることが問題なんだ!」

「彼じゃなきゃダメなの!」

人類の最大の敵、魔王の横で親子喧嘩をするのは度胸があると言っていいのだろうか。

魔王も気分が悪いらしい。

「沈まれ。」

通常の声だが、威圧的だ。その気になれば私たちは一瞬で殺されるだろう。

その殺気が単純に恐ろしい。


私は、一応の説得を試みることにした。

「今、テンの町は手薄になっている。こうして話している間に魔王軍が攻めてきたら人間が殺されるんじゃない?」

「それは大丈夫。彼はそんなことはしないよ。」

いや、さっき魔族が攻めてきてたじゃん。


魔王の目線が私に向かった。

「我は先刻の奇襲を指示しておらぬ。あれは魔族が勝手に向かったのだ。それを止めなかっただけだ。」

それを信じろと。

「ね?」

いやいや、ね?じゃないでしょ。マリーさん?


「だとしても、襲撃に遭ったのは事実。」

ゴリアテは両腕を組みながら話した。

私もそれに同調する。

「そうだよ。止めなかっただけで、実際に魔族が襲ってきているわけだし、守る人員も必要だよ。」

人類と魔族の存亡をかけた話し合いに魔王が出席している不思議。

魔王も話す以上、話もこじれるし、話しづらい。

「あの町はそもそも魔族の町だ。お前たち人間が強制的に取得したのだ。魔族から襲われるのも当然であろう。それをどうして止める必要がある。」

ごもっとも。魔王軍の拠点に使われてはいたが、確かに町なのだ。

元町民や周辺の魔族が取り返そうとしても当然ではある。

「人間は昔から愚かで成長せん。魔族のように力を持つものをなぜ攻撃するのだ?」

「魔族が人間を襲うからでしょう?」

「そんな単純なものか。我々魔族が人間に殺されたことは忘れるのだな。」

売り言葉に買い言葉。これでは前に進まない。

「ミリア。もとはと言えば、人間が魔族を殺したことがこの戦争の原因なんだよ。」

「だからって、人間に被害があったら戦わないと!」

「そう。だから私は動いた。でもね。汚い人間も見てきたじゃない。ミスリーの城では、防衛が成功した後、私たちが休むことも許さず出発を急かされたし。」

以前私たちが助けた城だが、勇者がいると知られれば、また魔族の襲撃が起こると思われ、追い出されたのだ。


「人間は昔からそうだ。我も幾度となく人間と話をしたことがあるが、利用するだけ利用して、不要になれば我ら魔族を悪と定める。それが人間の目指す平和なのか?そんな人類を生かしておいて、何の得があるのだ?」

…答えずらい。

沈黙が回答となり、魔王の顔に、やはりな。と書かれているようだった。


煮え切らないキャッチボールにゴリアテが痺れをきたす。

「もういい、一度帰還する。」

魂を抜かれたようなへリスと私が続いて魔王城を後にした。

「勇者よ。お前も一度帰還しろ。」

魔王の言葉に、意外にも素直に従い、マリーが付いてきた。

こうして私たちはテンの町に帰還した。

お読みいただきありが等ございます。

続きはそのうち上げますー。

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