付き合ってください!
取り合えず3話目です。
この物語はフィクションです。
よろしくお願いします。
道中には、やはり魔物が配置されており、連合兵たちが対応してくれていた。
前回通った時よりも強い魔物を配置しているところを見ると、私たちの強さを理解しているように思う。
配置された魔物は魔法耐性が高いようだった。
それでも、光栄にも人類の代表として立っているのだ。簡単に退くわけにはいかない。
魔王城城門前へと到着すると、魔王直々に出迎えてきた。
「やはり来たか。城内だと埃が立つのでな。ここで応対しようか。我と付き合ってくれるか?」
私たちは武器を構え、魔王を見据える。
マリーは剣を。
ゴリアテは盾を。
ヘリスはメイスを。
私は杖を。
それぞれの想いと信念を胸に、今、新たな戦いが始まろうとしている。
おそらくこの戦いは「目を覚まして!」だろう。
だが、私たちは「あなたは力に溺れているだけなの!」わけには行かない!
ん?
「どうしてもあなた自身の力を試したいなら、私が相手になるから!」
え?マリー?
マリーが剣を構え、先行して向かっていった。
魔王は手のひらに魔力を集中させ、マリーに放つ。
それはまるで大砲のような衝撃を感じた。
が、
それをマリーが剣で逸らす。
逸れた魔弾がヘリスに命中した。
一瞬の出来事に唖然としてしまったが、ヘリスは回復を始めた。
私もヘリスに駆け寄り、回復の手伝いをする。
「マリーが周りを見ていない!」
そう。マリーは振り返ることもなく魔王と戦闘を始めている。
ゴリアテもヘリスと私の前に立ち、盾を構えて回復を待つ。
「まずいぞ!マリーが落ちれば戦力が傾く!何とかしてマリーを援護するんだ!」
ゴリアテの言葉に回復しきったヘリスが動く。
「とりあえず、マリーに耐性上昇と自然治癒力向上を行います!」
ヘリスは宝石を周りにばら撒きメイスを構えて集中する。
発動するまで時間がかかるのだ。
その間に私は魔法を準備した。
ゴリアテはそれを守るようだが、魔王は私たち3人を無視するかのようにマリーと戦闘を行っていた。
「我の攻撃を止めるとは…なかなかやるじゃないか!」
「えへへ。」
「言動はおかしいが、強き者は良い!」
「やだー!」
「隙あり!そこだ!」
「好…き?本当!?」
剣と剣が磨れる音。
意味不明な会話。
空気さえも裂けるほどの検圧。
頬を赤らめた勇者の表情。
魔王の恐ろしい闇の攻撃。
どれも理解しがたく。
私の魔法を命中させるには魔王の動きを止めなければならない。
そのタイミングは経験から連携するはずだが、マリーがこちらを見ない。
声で合図を出そうにも簡単に察知されて避けられるだろう。
ヘリスの魔法は場所が限られている。
マリーには一定時間魔方陣の中に入ってもらわないといけない。
それもマリーとの経験からくる連携で受け取ってもらうのだが、こちらを見ない。
ゴリアテも魔王とマリーを目で追うがこちらには攻撃が来ない。
全く何もできないまま、魔王とマリーの戦闘を見ているだけになった。
策がないので、一旦ゴリアテがヘリスの魔方陣に入る。
ゴリアテの耐性と自然治癒力が上昇した。
隙を伺い、魔王とゴリアテの距離が一番近くなった時、ゴリアテが動いた。
盾で魔王を吹き飛ばしたのだ。
魔王は意外にも驚き、背中から普通に倒れた。
私はそのチャンスを逃すまいと、大技である渾身のサンダーアローを放つ。
「怒りは炎に、悲しみは涙に、哀愁は風に。炎と涙と風よ、雷鳴となり敵を穿て!」
火と水、それに風を併せた魔法で調整が難しい。
プラズマ化した魔力の塊が魔王へと向かい、おおよそ目で追えない速度に達する。
勝った!
私たちは確信した。私たち3人は…。
「危ない!」
サンダーアローは魔王の横の地面に当たって消えた。
マリーの剣はあらゆる魔法を弾くことができる金属で作られている。
サンダーアローを弾くこともできるらしい。
私とヘリス、ゴリアテの3人は言葉すらも出なかった。
最初に口を開いたのはマリーだ。
「あの、お願いします…。」
何をだ?
魔王に向かって丁寧に話すマリー。
勿論魔王は困惑している。
ゆっくりと立ち上がった魔王が質問をする。
「どういうつもりだ?」
明らかに魔王は怒っている。
地面は微かに震え、魔王の怒りに呼応していた。
「だから…。付き合うんでしょ?」
んん?
「さっき、好きって言ってくれたし。」
んんん?
「付き合ってって…。」
ああ、城門前で言っていた魔王のセリフか。
「仕切り直しての再戦ということか?」
困惑しっぱなしの魔王は確認を取る。
「そうじゃなくて…もう!私とあなたが、恋人になるってことでしょ?」
もう、終わりです。
やっぱり前回で終わってました。
「まさか…魅了の魔法か!」
ヘリスが声を荒げる。
そうだよね?そうなるよね?
「そ、それで?どうなの?」
マリーが魔王に催促する。
「何を言っているのだ?戦いの最中に別のことを考えているのか。我はこんな者を相手に…。」
プライドが傷ついたと言わんばかりの悲しい表情をする魔王。
マリーはそわそわしているが、返事は決まっていた。
そして魔王がつぶやく。
「よくわからん。」
魔族間で"付き合う"という行動はないらしい。
恋人とかの関係性はないのだろうか?
マリーの表情が少し曇ったが、いいことを考えたようで、また明るくなった。
「じゃあ、私が助けたのだから、私の言うことを聞きなさい!」
私の放ったサンダーアローから助けた恩を返すように言っているのだろう。
これが勇者のすることだろうか?盲目すぎる。
「それで…付き合ってくれるの?」
マリーはマイペースに口走る。
あきれ果てたゴリアテがマリーの首根っこをつかみ引きずっていった。
私たちも帰ろう。今日はもうだめだ。
眉間に皺を寄せた魔王の目線を感じながら、今回も撤退するのであった。
お読みいただきありが等ございます。
続きはそのうち上げますー。