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13/13

私、いいこと思いついたの!

取り合えず13話目です。一旦完結ですー

この物語はフィクションです。

よろしくお願いします。

次の日には準備が整い、馬車に乗る。

馬車の周りは兵士たちが警戒をし、私とアレクさんが馬車内で一緒になった。

私は気になっていることを聞いてみる。

「あの、アレクさん。エルとは何してたんですか?」

「あー、話をしていただけですよ。」

「何の話ですか?」

「それは…、すみません…。」

言えない話か。エルが口説いていたとか?それが過激で言えないとか?

アレクさんの顔を見ると、ほんの少し赤くなっていた。

それを見て、ちょっとイラっとしてしまった。

「アレクさんはエルのこと、まんざらでもないように見えましたけど。」

「いや、そんなことはないです!僕は…いや、とにかく、エルにそういう感情は持ちませんから!」

必至だね。ちょっと悪いことをしたとは思うけど、なんだかなー。

私たちはしばらく無言で揺られ、モヤモヤしていた。


数刻をかけて魔王城があった瓦礫に到着、一旦キャンプを張った。

マリー、ヘリス、ゴリアテ、私、アレクさん、そして兵士たち。

敵襲を警戒しつつ、各々休みを回していく。

幸い、何事もなく朝が来た。

「ミリア、私、絶対に魔王のことを諦めたくない。」

「マリー。その気持ちはわかるけど、いま私たちが向かっているのは魔王を討伐するためだよ。また邪魔をするの?」

「私は誰にも傷ついて欲しくないだけだよ。でも、私の強さにも限界があるから、守り切る自信はない。」

「魔王が強いことは知っているし、宰相も一緒だろうからね。ただ、人類の未来が掛かっているの。」

「それも分かるけど、魔王を討伐できたとして、次の魔王が登場するだけだと思う。それなら魔族自体を殲滅しなきゃいけない。でも、魔族の中でも人間に味方する魔族もいるじゃない。」

…。私は外を警戒しながら歩くゴリアテをちらっとを見た。

「ミリア、私の決意は揺るがない。平和とは人間のためだけにあるものじゃない。そこには魔族も含まれるのよ。魔族は人間と違って、個々のことを認め合うことができる。人間は認めることができない者も多い。私はそれを変えたいの。」

「魔族側の意見に賛成ということ?」

「そうじゃなくて、仲良く手を繋ぐだけが平和じゃなくて、別の道を選択して、あえて交わらないことも必要だと思うの。そのためには魔王が必要。あの人を討伐して完了するものでもないという話よ。」

要するに、今の人間の考えを変えたいと。

確かに、人間の考えに従わない存在を殺して完了する平和なんて想像できない。

同じようなことは起こると思う。ただやらなきゃやられる状況なんだよ。

マリーの言葉は重く、未来を見ていることが分かる。

私は今の状況しか見ていないんだろうか。


私たちはキャンプから館へと移動した。

数日かかったが、森の中に大きな館が見える位置まで来た。

その場所に馬車と兵士たちを残し、私たちは前進する。

鬱蒼(うっそう)とした木々の中を歩くと、そのうち館の全貌が見える。

紫色のツタが館を覆っており、部屋からは所々灯りが漏れている。

ここに魔王がいる。エルの情報が正しければだが。


先に向かったゴリアテが偵察から合流し、結果を報告をする。

「入口に3名、1人は連絡用に軽装だ。館の周りにも兵士を配置している。もし奇襲をかけるなら、軽装の兵士を逃がさぬようにしろ。周りの兵士は俺とアレクが抑える。その間にへリスが特攻しろ。ミリアはへリスと距離を取ってついていけ。」

やっぱり、マリーは戦力外か。

それを聞いてへリスが反応する。

「私が特攻するのですか。それはアルティミアさんを動かすためでしょうか?」

「うむ。アルティミアは魅了が解けていない。先日の戦闘でもへリスが危険になればアルティミアは動いた。言葉が通じない以上、その方が早いだろう。」

「アルティミアさんなら、おそらく私が合図を出せば動くと思います。」

「そうか。ならアルティミアを先頭にするように特攻しろ。へリスの補助はアルティミアに掛けろ。門番くらいはアルティミアで手に余る。余力は欲しいが、作戦を理解できないだろうしな。」

へリスは、どこか迷いがあるように静かに頷く。

へリスは優しい人だ。たとえそれがアルティミアであったとしても、心配なのだろう。

続けて、ゴリアテは腕を組みながら話をする。

「しかし、決定打に欠ける。マリーが魔王に止めを刺せるなら話は別だが、おそらく我々の攻撃を弾く行動に出るだろう。今回の奇襲は魔王討伐ではなく、宰相に的を絞りたい。宰相相手にはさすがにマリーも手を出すまい。魔王はアルティミアが止めてくれればいい。俺とアレクは館の周りを片付けて駆けつける。へリスとミリアは話をするでもいいから時間を稼げ。マリーなら魔王と話をするために時間をかけるだろう。それを利用してもいい。」

なるほど、全員集合しての戦闘になるのか。

それなら宰相を仕留められるかもしれない。

先日も宰相一人なら追い詰められた。

アレクさんの剣技も頼りになるし、何とかなるかも。


アレクさんは左側に、ゴリアテは右側に位置し、へリスとアルティミアと私が門前の茂みに身を隠す。

一足飛びに届く距離ではないが、軽装の兵士を逃がさずに討伐しなければならない。

もし逃がしてしまうと、早々に宰相が登場する可能性もある。

兵士数名と宰相なら勝てる可能性が薄くなる。


そう考えているとマリーが顔を出す。

「ミリア、私普通に正面から訪ねたいんだけど。」

「ダメでしょ。作戦が台無しじゃん。」

「魔王と話をしないと何も始まらないでしょ?」

「魔王城の一戦で既に始まっているんだよ。私たちはもう引けない。」

「戦うだけが道じゃないよ。」

「マリーはそう思うかもしれないけど、マリー以外は魔王討伐を目標にしているの。今回は魔王討伐ではないから、マリーはそこにいて。」

むすっとするマリー。

気に食わないのは分かるけど、今のマリーが動くと作戦がダメになる。


ゴリアテの合図と共に、へリスが指を刺した。

その先には軽装の門番だ。

アルティミアは一瞬で門番の前に移動し、槍で腹部を一突きした。

そのまま振り返るように別の門番を攻撃する。

右側ではゴリアテが斧を投げ、突進する。

アレクさんは上空に飛び上がり、着地と同時に敵兵士を切り裂いた。


門番が倒れたのを確認し、へリスと私が駆けだす。

しかし、門の前に魔法陣が現れ、宰相が登場した。

ちょっと想定外だが、ターゲットが来たからにはここで応戦する必要がある。

右から大声が聞こえた。

「先に始めろ!アルティミアをうまく使え!」

へリスは一瞬表情を歪めながら宰相を指さす。

その前にアルティミアは宰相に特攻していた。

アルティミアは先日の戦いから宰相を敵認定していたようだ。

「うおっほん!ここを通すわけにはいかん!」

宰相が両手をこちらに向け、詠唱を開始する。

「守護は心、心は氷に!敵を凍結し、強制的な和平を(もたら)せ!」

周囲が瞬間に冷え、アルティミアが氷に捕らわれる。

しかし、それは一瞬の妨げにしかならないようだ。

強引に氷の檻を破壊し、間合いを詰める。

「くっ!早い!」

アルティミアの槍が宰相に近づくと、宰相が霧のように消え、少し離れた場所に移動した。

宰相の右わき腹に傷が見える。

そこに向けて私が魔法を放つ。

「怒りは炎に、悲しみは涙に、哀愁は風に。炎と涙と風よ、雷鳴となり敵を穿て!」

サンダーアローが宰相に降り注ぐが、宰相はシールドで防御した。

元々攻撃をするためではない。防がれるのはそれでいい。


私の攻撃の間に、へリスが宝石を投げ、祈りを捧げた。

「神よ、信仰を受け取り、我らに力をお与えください!」

宝石を辿って線が走り、フィールドが形成される。

へリスはそこを指さし、アルティミアを誘導する。

素直にアルティミアがフィールドに入り、補助が掛かる。

これで腕力と速度が上昇するだろう。

私の魔法はその時間稼ぎなのだ。


アルティミアが宰相の前に突進し、槍を向けた。

今度こそ避けられないだろう。

ゴリアテもアレクさんも外周の兵士を倒したようで、こちらに向かってきた。

ついに宰相が倒せる。

魔王とセットで登場すると、回復や補助など、厄介なのだ。


アルティミアが槍を振るい、宰相の心臓を一突き。

私からはそう見えたのだが、宰相は生きていた。

槍を止めたのは魔王だ。

「我の館に来たからには、覚悟はできているのだろうな!」

魔王の全身を覆うような魔力は雷を発し、門の一部を破壊する。

魔王の登場に、宰相が館内へ移動した。

まずい。

そう思った時には遅かった。


魔王は足を振り上げ、アルティミアの頭部を蹴り落した。

アルティミアは頭から地面にめり込み、轟音と共に大きなクレーターができる。


静寂。


アルティミアが起きてこない。

比較的魔王に距離が近いへリスは後退りを始めた。

まさか、あのアルティミアが一撃でやられるとは。

アルティミアは魔王と同等かそれ以上だったのでは?


ゴリアテとアレクさんが私とへリスの間に留まり、へリスを先頭に、不利な陣形を作る。

魔王が右手をこちらに向けた時、へリスの前にマリーが割って入った。

魔王の右手から魔法にもならない魔力の塊が放たれるが、マリーが剣で弾いたのだ。

その塊はゴリアテを掠めるように飛び、後方を吹き飛ばす。

魔王城程度なら跡形もなかっただろう。


魔王が怒りに満ちた表情で声を掛けた。

「何のつもりだ?我を討伐する気か。なら相手をしてやろう。」

マリーは少し悲しい表情をして返答する。

「そうじゃないの。私はあなたと話をしに来たの。」

「そのために門番を殺し、ゴルアに槍を向けたのか。それは我々魔族に対する敵対以外の何ものでもない。」

「それに言い訳はできないわ。でも、話を聞いて。私は本気であなたを…。」

魔王は鼻で笑うように表情を変えた。

「そこの信仰者が言っていた。魅了が掛かっているのだろう?それをどうして我が信じるのだ?」

「違う!魅了なんて関係ない!私、いいこと思いついたの!」

「話をしても意味などなかろう。実際に門番を殺し、ゴルアを殺そうとしたのだ。貴様らにできることは、我の怒りを受けることだけだ!」


魔王が話し終わると、呪文の詠唱を始める。

「恐怖は重み、我の眼前にいる虫けらどもは地を這うがいい!」


私は地面にぶつかり、足に痛みを感じた。

確認することすらできないが、おそらく、折れている。

微かに見える視界から、ほぼ全員が地面に潰されているだろうことが分かる。

マリーは耐えているようだ。

私の左から骨折する音と共に叫び声がする。

アレクさん…!

声を掛けたいが、今口を動かすと顎が折れる。

そのうち私の左腕が折れ、右腕に乗せていた右わき腹の肋骨が折れた。

悲鳴を出したいが、まず呼吸ができない。

時間をかけると全身の骨が折れるだろう。

呪文を詠唱しようにもその行動がとれない。

へリスもゴリアテも、アレクさんも声を発することができないようだ。

この地獄はいつまで続くのだろうか…。


「あら♡大変なことになってるわねー♡」

エルだ。安全圏にいるらしく、魔王の魔法の影響はないようだ。

「それー♡」

紫色のフィールドが周辺全体を包み、魔王の影響が和らいでいく。

ある程度魔王の影響が落ち着いたとき、へリスがよたよたと駆け寄り、私を回復させた。


アレクさんは地面にめり込んだまま動かず、ゴリアテは立っていたが腕も片足も折れていた。

マリーは骨折こそないものの、血を吐いた跡があった。

魔王のちゃんとした魔法が発動したのは初めてだ。

それがここまでの威力とは、私たちは魔王を倒せるのだろうか。


「貴様!何のつもりだ!」

魔王はエルを睨み、怒号を飛ばす。

「キャー怖い♡じゃあねー!バイバイ♡」

周囲を囲んでいた紫のフィールドが、魔王を中心に縮まっていく。

魔王はエルを睨んだまま、そのフィールドに飲み込まれ、消えてしまった。


へリスによって回復した私はエルに質問をする。

「今のは?魔王はどこ?」

「さあ、どこかしら♡まあ、いいじゃない♡あなたたち、殺されるところだったのよ?私に感謝しなさい♡」

まあ、正直感謝してはいる。

でも、魔王がどこに行ったのか把握しないと、もし死角から攻撃が来たら、次はない。

「お願い!どこに行ったのか教えて!」

「じゃあ、ヒントね♡魔王様は誰と消えたのでしょう?」

え?誰と?


へリスがゴリアテとアレクさんを回復させ、アルティミアにも回復を用意していた。

そこに…、そこにマリーがいなかった。

「へリス!マリーは!?」

「いません!マリーさんは先ほどのエルさんのフィールドに飲み込まれて…!」

エルは杖を振り上げ、リアクションをする。

「正解♡魔王様はマリーちゃんと一緒にいます♡」

怒り狂った魔王とマリーが一緒にいるということは、1対1。

へリスの補助もなくどう戦えというのか。

それに、マリーはおそらく魔王を傷つけられない。

嬲り殺されるのだろうか。

そう考えると、全身に震えが来た。


「エル!マリーだけでもここに連れてこれないの?」

「ダメ。マリーちゃんの恋を応援するの♡」

「恋って、さっきの魔王を見なかったの?」

「それはあなたたちが怒らせるからでしょ?」

正論はダメ。今はそんなこと言っている場合じゃない。

「マリーが殺されたらどうするのよ!」

「さっき魔族を殺していた人たちがそういってもねぇ。やるってことは、やられるってことじゃないの?」

私がイライラしていると、回復を終えたアレクさんが私の肩に手を添えた。

アレクさんは、エルに向かって語り掛ける。

「エル。魔族を殺したことについては別件だ。マリーさんは俺たちの希望なんだ。返して欲しい。」

「アレクちゃんに言われてもダメよ♡」

「せめて、どこにいるのかを教えて欲しい。」

「…まあ、デートしてくれるなら考えてあ・げ・る♡」

「分かった。デートでもいい。マリーと魔王はどこにいる。」

肩に触れた手から、アレクさんの怒りが伝わってくる。

怒り…なのかな。魔王の攻撃に恐怖しているのもあるのだろうか。

私の震えは、魔王に対する恐怖がある。

そりゃ、あんなの、怖くて当然だよ。


アレクさんの返事を聞いて上機嫌になるエル。

「本当?約束ね♡ 魔王様とマリーちゃんは、私のフィールドに閉じ込めているの♡」

「フィールドに?」

「そう♡ いくら魔王様でも、私の全力のフィールドからは出られないわ♡」

フィールドで隔離したってこと?

「マリーさんだけでも出すことはできないのか?俺たちの中で魔王に対抗できるのはマリーさんだけなんだ。」

「解除したら両方出てくるわ。マリーちゃんのことはもう諦めたら?」

「諦めるという選択肢はないよ。マリーさんに何かあったら、分かってるな?」

アレクさんは剣を握る。

その手は怒りに震えているようだ。

「こわーい♡ 私を脅す気?でも、今解除したら私も危ないんだけど♡」

フィールドに魔王を飲み込んだわけだし、魔王からすれば敵対行動ではある。

ここにいる全員が魔王の敵になっているわけだ。


ふと、アルティミアを見ると、空中を見ながら警戒態勢になっていた。

その唸り声は地鳴りを呼び、ここにいる全員がアルティミアを見た。

「何だ?何が起こっているのだ!」

ゴリアテが斧と盾を手に、最大警戒に移行する。

へリスも後退りをし、アレクさんはへリスの前に出る。

魅了が解けたのか?

へリスと目が合い、合図を送るが、へリスが首を振る。


轟音が鳴り響き、アルティミアが見ている空中に雷が走った。

同時に、後ろにいたエルが声を上げる。

「あぁん♡」

空中の雷から紫色の破片が降り注ぐ。

どうやら、エルのフィールドを破ったようだ。

そこから魔王が登場し…、あれ?

よく見ると二人の魔族がいる。

重苦しい雰囲気を纏った鎧を着た魔族が後方に位置する。そして、もう一人の魔族が前に出た。

もう一人の魔族は白を基調とした軽鎧を纏い、額には真新しい小さな角が生えている。

雷が落ち付き、顔が見えると、私たち全員が唖然とした。

それは、まぎれもなくマリーと魔王だった。


「どうも、新魔王です!」


ああ、私たちにはどうしても魔王が倒せません。どうしたらいいでしょうか?

お読みいただきありがとうございました。

続きはそのうち上げませんー。

次回作にご期待ください。

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