結婚式にはミリアも来てね!
取り合えず11話目です。
この物語はフィクションです。
よろしくお願いします。
観客はどう思っているのだろうか。
へリスは困惑し、私たちもどうすればいいのかわからない。
へリスはアルティミアに、取り合えず棄権するよう声を掛けた。
しかし、言葉が通じないアルティミアは頭を傾け、何をして欲しいのか尋ねるようにへリスの顔を覗き込む。
悩んだへリスはアルティミアと腕を組んだまま舞台を降りた。
そのまま宰相の所へ行き、棄権を宣言する。
宰相は棄権の意志を確認しようと声を掛けるが、通じていない。
へリスが小さく頷くしぐさをすると、アルティミアも一緒に頷いた。
宰相はそれを返事として受け取り、舞台に上がった。
「…なんとも、うぉっほん!ドラ・アルティミアの棄権を確認した!」
…あ、そうだ!私も宣言しないと!
「あの、宰相さん!私も棄権します!」
「おお、そうだった、ドラ・アルティミア棄権で人間2人の戦闘になるのであったな。聞いての通りだ!人間、ミリアが棄権し、人間、マリーが勝者となった!」
良かった。これで私たちは生き残った。
「これで!これで魔王と結婚できるのね!」
本当に良かったのか?
観客は意外とブーイングをしない。
そんなことより、あの、ドラ・アルティミアが人間の腕にしがみ付き離れない様子が気になるようだ。
気になるというより、啞然か。
私たちは舞台で立ち尽くし、安堵のため息を吐く。
そこに魔王が登場し、話を始める。
「我の妃候補が選ばれた!この人間の勇者、マリーが候補となる!次からは大会ではなく、この人間を倒してから申すように!」
なるほど、そういうことか。
魔王は強者を所望。
そのため強い女が寄ってくる。
結婚したくない魔王はそれが疎ましく、特に魔王より強いかもしれないドラ・アルティミアも遠ざけ、魔王の独り勝ちというわけか。
お開きとなり、私たちは魔王城の長テーブルに移動した。
そこには宰相と魔族の兵士、魔王と生き残った出場者が集った。
魔王が席に着くと、隣にマリーが立つ。
今度はフィリアも声を上げなかった。
代わりに舌打ちは聞こえたけど。
私を含め、それぞれが席に着く。ただ、へリスの隣にはドラ・アルティミアがいる。
アレクさんの隣にはエルが着いた。
なんだかなー。
最初に宰相が声を掛ける。
「うぉっほん!これで、妃の候補が決定した。人間の勇者、マリーが候補となる。異論があろうと、実力で決定したものだ。覆すことはできん。」
うう、見なくてもエルが睨んでいるのが分かる。
あの場ではあーするしかなかったんですよ。
「では、これで大会は終了だ。解散!」
宰相の合図でそれぞれが席を立つ。
マリーが私の横に来て話しかけてきた。
「ふふ。これで魔王と結婚できるわ。結婚式にはミリアも来てね!」
「うーん。相手が相手だから、祝福できないんだけど。」
「なんで?私と結婚すれば、魔王は人類に目を向けなくなるから、人類としても平和が訪れる結果になると思うのに。」
「そんなに上手くいくかなー。」
「大丈夫!私がそうして見せるわ!」
いやいや、人間は魔族と違って、寿命が短いんだから、平和が来てもあっという間に元通りになるんじゃないの?そう考えていると、ゴリアテが意外なことを話す。
「わっはっは!いいじゃないか!俺は祝福させてもらうぞ!たまには遊びに来るからな!」
雰囲気が笑ってませんが?
絶対変なこと考えてるでしょ。
「やっと分かってくれたのね!」
喜ぶマリーは上機嫌だ。
「あのー。」
エルにへリスが話しかけていた。
「エルさん。アルティミアに掛かっている魅了はいつ解けるのでしょうか?」
「あら、言ってなかったかしら?サキュバスの魅了は解けないわよ♡」
「ええ!解けないんですか!そんなー!」
ああ、へリス。どんまい。
エルはアレクさんに振り返り、アレクさんの手を取る。
「ねえ、私、役に立ったでしょ?褒めて♡」
「いや、そういいながら魅了を掛けるのやめてくれ。」
「えー♡いいじゃない♡でもなんで魅了に掛からないの?」
サキュバスの魅了は解けない。そういえば、その矛盾が目の前にいた。
確かに私も魅了を解いたアレクさんが気になるけど、一旦、手を放してもらえます?
ったく、どいつもこいつも。
ため息をつく私にフィリアが声を掛けてきた。
「私はこんな奴に負けたのか…。」
フィリアと私のため息がコーラスを奏でる。
ちょっと気持ちわかるよ。
「ミリアとか言ったな。私の火球を打ち消した水魔法は見事だった。」
「あ、ありがとう。あなたの炎の矢は早くて、マリーが守ってくれなかったらやられてたかも。」
村であった戦闘のことだ。
フィリアが私を褒めるなんて、どうしちゃったんだろう。
でも、悪い気はしない。
「私は強い者は認めるんだ。だから、ミリアを認めてやる。マリーとか言う人間は許さんけどな。」
「ありがとう。私もフィリアの強さは認めてる。」
フィリアと握手をし、お互いに笑顔を見せた。
背中を見せたフィリアは片方しかない羽を揺らし、去っていった。
なんか、変な結果になってしまったなー。
この大会出場者の話だけど、魔族の出場者の中で、魔王を好きな人はいたのだろうか。
フィリアはテンの町に奇襲をかけるくらい好きなのかと思ったけど、権力を欲しての出場だったようにも思える。
オーガの女性は…分からなかったけど、最初の顔合わせでも特にそういう雰囲気を感じなかった。
エルは兵士の男目当てだって言ってたし、ドラ・アルティミアはそもそも言葉が通じない。
今となっては魅了でへリスにくっついているけど。
唯一魔王を好きだったのは、人間のマリーだけだったんだなって。
私は、ちょっとだけ魔王に同情した。
長テーブルのある部屋から出ようとしたところ、ゴリアテに呼び止められた。
ゴリアテは周りを気にしつつ、小声で話す。
「ミリア。今なら魔王を討伐できるんじゃないか?」
おお?どういうことだ?
「今いるのは宰相と魔王だ。エルはアレクの味方、ドラ・アルティミアもへリスの魅了で落ちた。であれば、エルは参加するかわからんが、好機なのではないか?」
なるほど…。一理あるけども。
そう話していると魔王が席を立ちあがる。
「我も休む。お前たちも拠点に帰るがいい。」
そう言って背を向ける魔王。
そこにゴリアテが歩きながら近づく。
本当にやるんだろうか。
私の杖を握る手に力が入る。
それを察知したかのようにエルが反応する。
「私は知らない。」
はい。そりゃそうだ。
エルはアレクさんの手を引いて部屋を出ようとした。
しかし、アレクさんはその手を振り払い、私のそばに来る。
無言のまま目で合図が通った。
ゴリアテの射程距離に魔王がいる。
条件反射の様に放たれる斧の振り下ろしに、魔王がサイドステップで反応する。
魔王が避けたところにゴリアテが移動し、更に斧を振る。
併せるようにアレクさんが右側に回り込み、魔王を挟む形になった。
金属のぶつかる音が部屋に広がった時、ゴリアテの斧がこちらに飛んできた。
私の後ろの壁に当たり、地面に斧が転がる。
「何してるのよ!」
ゴリアテの斧を弾き飛ばしたのは、マリーだった。
「今が魔王討伐の好機!お前も正気に戻れ!人類の悲願だぞ!」
ゴリアテが盾を背中から外し、前に構える。
「確かに、ドラ・アルティミアを魅了した今はお前たちにとって好機となろう。だが、我は加減をせんぞ!」
魔王の怒号は城全体を揺らすほどに響く。
城の震えが収まった時、魔王の後ろから魔法が飛んだ。
「嘆きは水。収束した後、鋭く敵を穿つだろう!」
宰相の水魔法だ。
それをゴリアテが盾で防いだ。
「魔王様、お下がりください。ここは私目に。」
魔王が下がり、宰相が前に出る。
魔法士のようだが、魔族である以上、身体能力は高いはず。
始まったからには私も魔法を構築する。
「声は雷鳴に、頭上より来りて敵を切り裂け!」
宰相に向けたが、簡単なシールドで防がれた。
しかし、その隙にゴリアテが斧を振りかぶる。
その斧、何本あるんだ…?
宰相の右手側に振り下ろされた斧が、宰相の肩をかすめた。
少し出血をしたものの、特に気にしていない様子でゴリアテを蹴飛ばした。
宰相の右肩に淡い緑の光が走り、傷が回復していく。
その横に宝石が複数飛び、へリスの声がする。
「神よ!怒りを鎮めたまへ!魔を払い、退けたまへ!」
宰相の周りを囲んだ宝石が光を放ち、フィールドを形成する。
私が使った、魔法効果を消滅させる祈りだ。
宰相の右肩の傷が治りきらない状態でアレクさんが剣を振る。
宰相を切りつけ、胸元から血が流れた。
「ぐうぅ!私を切るか!魔法も使えん!神の奴め、厄介な補強をしおって!」
宰相は衣類の隙間から筒を取り出し、手前に投げ落とした。
「お前たち!働け!」
筒が割れ、中から魔獣が出現する。四足歩行タイプの魔獣だ。
遠吠えを行い、3体の魔獣が更に出現する。これで魔獣は4体になった。
1体はアレクさんに、1体はゴリアテを狙って跳躍し、1体は私に向かって飛びついてくる。
「怒りは炎に。炎よ、敵を焼き尽くせ!」
私の魔法で魔獣が吹き飛ぶ。
ダメージがあるかはわからないが、距離は稼げた。
遠吠えをしていた魔獣がへリスの元に駆け寄り、へリスが祈りを構築する。
「神よ!力を貸したまへ!眼前の魔獣に裁きの…
言い終わる前に魔獣が宰相の横を飛んで行った。
ドラ・アルティミアが槍を構え、宰相を見据えている。
へリスの敵はアルティミアの敵であると言わんばかりだった。
宰相は悔しそうな表情で愚痴を漏らす。
「ぐうぅ!ドラ・アルティミアめ…!魔人四天王が私に楯突くか!」
残念ながら、アルティミアにはその言葉は理解できないようだ。
アルティミアが特攻し、長テーブルが吹き飛ぶ。
宰相に槍が向けられ、へリスの構築した祈り諸共破壊する。
宰相の左肩と脇腹が抉られ、背中から壁に当たる。
その宰相を緑色の光が覆い、回復が始まった。
呼吸を荒くしている宰相の前に魔王が立つ。
「もうよい。我が相手をしてやろう。」
その表情は、意外にも笑っているようだった。
魔王が左手をアルティミアに向け、魔力の球を構築する。
ゴリアテを包めるほどの魔力の球がアルティミアに襲い掛かる。
それを槍と左手で防ぐが、堪えきれずに吹き飛んだ。
壁に当たると、そのまま突き抜け、外に放り出された。
一瞬の出来事に驚き、私とへリスは動けずにいた。
何とかアレクさんも魔獣を倒し、ゴリアテも魔獣を倒したようだ。
二人は再度魔王を挟むように立ち、突進をする。
魔王は魔法とも呼べない魔力の塊を飛ばし、ゴリアテとアレクさんが簡単に飛ばされた。
私は閃光魔法を構築する。
「力は怒りに、怒は炎に。敵を排除する怒りの炎で敵を滅せよ!」
杖から直進する閃光をシールドで防御する魔王。
シールドの魔法は簡易的な魔法で、最下級に位置する。
対して閃光魔法は上から数えた方が早いほど位の高い魔法だ。
本来なら魔法特化のシールドでも耐えられるかどうかだが、魔王は簡単なシールドを展開する程度で耐えている。
その間にアルティミアが戻り、ヘリスを確認する。
ヘリスは魔王を指し、アルティミアは魔王に突進した。
アルティミアに気付き、魔王が両腕を広げて構える。
アルティミアの槍は魔王に届く前に叩き落とされた。
「やめて!」
マリーが魔王とアルティミアの間で叫び、剣で槍を押さえていた。
魔王に向かって左からゴリアテ、右からアレクさんが攻撃を仕掛ける。
しかし、それをマリーが防ぐ。
魔王が右手に魔力を集め、アルティミアに放つも、マリーが剣で弾く。
続けて魔王がゴリアテに蹴りを繰り出すもマリーが受け流し、魔王の前に立つ。
「あなたも!やめて!」
マリーは怒っているようだ。
一歩下がったアルティミアが息を大きく吸い込み、ファイアブレスを吐いた。
その炎は部屋の温度を急激に上げ、ヘリスと私とゴリアテとアレクさんが地面に伏せた。
さすがに魔王も両手でガードをするようだ。
その時、マリーが持っている宝石を投げた。
一瞬でアルティミアの炎が払われ、アルティミアがヘリスの横に付いた。
「やめてって言ってるでしょ!今日は婚約記念日なの!」
アルティミアを味方につけ、アレクさんも参戦し、又とない好機なのは確かだが、マリーにとっては婚約記念日だったのだ。
うーん。
お読みいただきありが等ございます。
続きはそのうち上げますー。




