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魔王登場

上げ直しです…すみません。

さておき、この物語はフィクションです。

よろしくお願いします。

手持ちの道具もなくなり、魔族の猛攻も落ち着き、周りには私たちしかいなかった。

勇者マリー、戦士ゴリアテ、信仰者へリス、魔法士ミリア。

肩で息をする私たち。

私の魔法力も切れかかっているし、ゴリアテは自慢の斧にもたれかかっている。

へリスはマリーの治療に専念しているようだ。

白を基調とした軽鎧のマリーは…片腕を失っていたが、へリスによって再生された。


再生した左腕に力を込め、回復したことを確認しているマリーの前に、一人の男が現れた。


雷鳴が轟き、大気が震える。

その音が来場の歓声のようにも聞こえた。

男の赤黒いマントが揺れ、重苦しい雰囲気を纏った鎧が姿を現す。


魔王だ。


フルフェイスのヘルムから、まるで地獄より天への挑戦を目指すようにそびえる角。

魔族は角の大きさが強さを表すと言っても過言ではない。

私たちが見てきた魔族の誰よりも大きく、どっしりとした角だ。

ゴリアテの喉がゴクリと音を立てる。

それを合図に警戒心がMAXに達する。


「よく来たな。褒美をやろう。」


私は、その一言を聞き終えると同時にへリスがいないことに気が付いた。

途端に吹き荒れる突風と轟音、へリスが吹き飛ばされたことをようやく理解した。


目で追えない攻撃になすすべもなく、地面に尻餅をつく。

格が違う、違いすぎる。

こんなの、どう戦えというのだろうか。


ゴリアテは盾を両手で構え、マリーと私の前に出る。

マリーは後方へ飛びのき、へリスの元に移動した。

私は道具袋から宝石を取り出し、ばらまいた。

両手で杖を握りしめ、祈りをささげる。

「神よ!怒りを鎮めたまへ!魔を払い、退けたまへ!」

へリスの得意な結界魔法だ。

魔法士の私には、どのくらいの効果を発揮できるのだろうか。

投げた宝石をたどって、周囲に幕が張られた。


魔王はゆっくりと歩きだし、ゴリアテに攻撃を行うようだ。

到底、魔法とも呼べないほどに未完成な魔力の塊を強引に投げる。

ゴリアテは盾とともに吹き飛んだ。

結界の中にはとどまったが、ゴリアテの両腕がひしゃげてしまっていた。


へリスの元に行っていたマリーがへリスを引きずって結界内に入ったが、へリスの下半身が見当たらない。

一撃目で消滅してしまったのだろうか。


ふと目線を前にやると、魔王の姿があった。

すでに結界内に入ってきている魔王は、邪悪な剣を握った片腕を振り上げる。

私より早く気付いたマリーが代わりに防御を担う。

金属音を至近距離で浴びているが、結界魔法を解くわけにはいかない。

私は動けないのだ。


魔王の手に魔力が集中する、チャンスだ。

魔王がため込んだ魔力が形を成し炎の剣が現れる。

マリーは足に力を込め、一気に前進した。

魔王が放った炎の剣はマリーに当たる前に消滅した。

そう、この結界は魔法の効果を消すものなのだ。

その隙をついてマリーの攻撃がヒットする。


その予定だった。


マリーの剣は魔王の頭をかすめただけだった。

フルフェイスのヘルムは傷つき、右の頬が見えるようになった。


「ほう、我の鎧に傷を付けるとはな…。」


魔王はおもむろにヘルムを外した。

私は、にやりと笑む魔王の表情に恐怖を覚えた。


そのうち、結界は解かなければいけない。

このままでは、へリスが回復の祈りを行えない。

そう考えていると、横で剣が地面に落ちた。


マリーが剣を手放し、両手で口を押えていた。

まさか、毒の攻撃か。

私たちの中でもずば抜けた身体能力を持つ、要となる存在。

それが勇者だ。

その勇者が落ちてしまうと、私たちに勝ち目はなくなる。

考えるよりも早く結界を解き、へリスの元に走るしかない。

私の速度ではすぐに追いつかれるが、先ほどと違い今動けるものは私以外にいないのだ。

自分の体に小さな防御の結界を張り、魔王に背を向けた。

それを察知し、魔王は魔力の塊を放ってきた。

私の背中に当たり、防御の結界が音を立ててはじける。

吹き飛んだ私はへリスにぶつかるように止まった。

道具袋から最後のポーションを出し、へリスの傷口にかける。

淡い緑色の光が発生し、少しの間の止血が始まる。

へリスは強引に回復の祈りを行い、下半身の再生が始まった。

よかった、繋がった。


魔王からの追撃が来てもおかしくはない。

しかし、静寂が私たちを包んでいた。


私たちは状況に甘え、へリスの回復とゴリアテの回復を急いだ。

私の折れた背骨も直してもらったとき、不思議な光景を目の当たりにする。


「あの、付き合ってください!!」


声の主は、勇者マリーだった。

魔王は困惑し、固まっている。

私たちも固まっていた。


そういえば、道中にマリーが言っていた。

世界が平和になったら、イケメンと結婚すると。

確かに、魔王は私が見てもイケメンだとは思う。

でも、今じゃないだろう。


「まさか…魅了の魔法か!」


へリスが声を荒げる。

うん。へリスはマリーが好きだったな。

聖職者とは思えないほどに憎悪した目線を魔王に向けるへリス。

魔王は困惑しながら答えた。

「何もしておらん。」

「いや、魅了か何かを使ったに違いない!でなければ、こんな初恋の告白のような甘ったるい言葉など口にすることはない!」

へリスはマリーをなんだと思っているんだ…。


冷静に考えると、勇者は神の加護によって、ステータス異常の類から影響を受けない。

よって、魅了されることはないのだ。

では、なぜこうなったのだろうか。

私はマリーに声をかけた。


「マリー…もしかしてストライクなの?」


マリーは首を縦に振った。

そうか、勇者は恋に落ちたのか。

私たちはもうおしまいだ。


がっくりと肩を落とす私をゴリアテが憐みの目で眺める。

落ちた剣を拾おうとしないマリーに目を向けられないへリス。

敵意を一切向けられておらず、放置される魔王。

そして、目がハートになっているマリー。


私たちは、もう、おしまいなのだ。

お読みいただきありがとうございます。

続きはそのうち上げますー。

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