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傭兵貴族は気ままに過ごしたい  作者: 夏風
迷宮都市の傭兵貴族
5/42

05 気になって仕方ない

短めです。

 本邸の事務室で椅子に腰かけたベルハザードは、天を仰いだままで仕事が手に付かない。

 気を取り直して始めようとするも、すぐに彼女の事が脳裏を過って手が止まってしまう。

 彼女とはベルハザードがずっと行方を追っていた故郷の幼馴染アウラだ。

 一座の中にアウラとよく似た人物を見かけた彼は、そのことで頭がいっぱいで集中できず、何も手に付かない状態になっている。


 頬杖をついて今日、何度目かわからない溜息を漏らす。

 アウラと思しき、少女の事が気になって仕方ない。


「そんなに気になるのでしたら、直接確かめてみればいいではないですか」


 彼の状態を見かねたルルティアナが提案する。

 しかし、相手は犯罪への関与が疑われる一座だ。こちらの弱みを握られるわけにはいかないので、迂闊な接触はするべきではない。


「できるわけないだろ。勅命も来てるんだぞ」


 勅命――王家からの手紙にあった旅芸人一座の調査のことだ。

 昨日の公演を見る限りは、特段、不審な点は見受けられなかった。

 だが、初日からそんな簡単に尻尾を出すようなら、とっくに捕まっているだろうし、勅命が来るわけがない。


 正直なところは、黒か白か判別つかないから確かめろってところなのだろう。

 そうなると、本格的に懐に入り込む必要がある。内通者が欲しいところなのだが。


「気になっている彼女に頼めばいいのではないですか?」


 まるで心の内を読んだかのような言葉に、面白く無いベルハザードが僅かに眉根を寄せる。

 ルルティアナの提案は確かに理に適っているのだが、仮に協力を得られたとしても、そんな危ない役を任せたくはなかった。


「そんな危ない役やらせるわけにいかんだろ」

「しかし、犯罪関与のある中にいるのでは、いずれにしても危険が及ぶ可能性が高いのでは?」


 その言葉を聞いたベルハザードは、血の気が引いていく感覚がした。


 確かにルルの言う通りだ。

 どうして今まで気付かなかったのか。

 だがしかし、どうすればいいのか。

 アウラに危険が及ぶ前に対処をしなければ……


 顔色を悪くしたまま黙りこくったベルハザードに、痺れを切らしたかような溜息をルルティアナは漏らす。

 そして、見ていられないといった口調で彼の背中を後押しした。


「若様の手が止まったままでは業務に支障が出ますし、考えていても答えが出ないのなら、まずは動いてみるのが良いではありませんか」

「……そうだな。行ってみるか」


 後押しを受けたベルハザードは意を決した。

 衣装かけの外套を手に取って事務室の外へと向かう彼の背中を、複雑な表情でルルティアナが見ていると、不意にベルハザードから声がかけられる。


「どうした? 一緒に行くだろ?」

「っはい」


 思いもしていなかった彼の言葉に瞠目したルルティアナは、一瞬だけ言葉に詰まりながらも、返事を返して同行するため、自身の外套を手に取った。


 傭兵貴族 ベルハザード――バケモノ級の戦闘能力を持ち、国内最大戦力と呼び声高く、最高難易度の迷宮の管理を任されている。

 そんな彼でもこの時はわかっていなかった。


 恋焦がれた故郷の幼馴染

 妖艶な魔族の美女

 ダークエルフの女戦士

 麗しき侯爵令嬢

 可憐な聖女


 この先にある数々の出会いが待っていることを。

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