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傭兵貴族は気ままに過ごしたい  作者: 夏風
ルルティアナ編
35/42

05 そして決意する

ルルティアナ編は終了です。

 ベルハザードは辺境伯領の食糧庫であるゼルプスに、アウラ、ソフィア、ルルティアナを伴って訪れていた。

 加えて彼らの後ろを四人の男女がついてきている。中年期に差し掛かろうかというその四人の容貌は、一組はベルハザードに、もう一組はアウラとソフィア姉妹に似通っている部分が見受けられる。


 それもそうだろう。彼らはベルハザードたちが捜し続けていた自分たちの両親なのだから。



 両親はアウラやソフィアと別ルートで運ばれ、労働力として売られていた。

 売却先は『竜の庭』と呼ばれる数多くの野生竜が生息する地域を抱える国――チェンバレンが保有する鉱山だ。そこで父は鉱夫、母は世話係として働かされていた。


 奴隷商を締め上げて居場所を聞き出したベルハザードは、電光石火のごとく迅速にことを進めた。

 まず、エゼルバルドに頼んで王に出国許可をもらい、国家傭兵団として顔が利くウォーレン、道中の哨戒とエルフは比較的竜に警戒されにくいことからシェリル、両親との邂逅を考えてアウラとソフィアを伴い、チェンバレンへと発った。

 ベルハザードは当初ソフィアを同行させるか迷っていたが、アウラの後押しもあって連れて行くことにした。


 世の中何があるかわからない。もしかすると、これが最後になるかもしれないのだから。


 ベルハザード一行が片道を半月強かけて赴いたチェンバレンでは、ある人物の協力もあって特に大きな障害も無く両親と再会することができた。

 これほど順調にことが進んだのは、やはり彼らの要請に応じて派遣した国家傭兵団が、十分な活躍を果たしたからだ。

 奴隷商から買われて鉱山労働に従事させられていた割には、体に大きな傷も無く、健康状態も良好で、体のどこにも奴隷を示す印なども無い。

 ベルハザードたちはお互いの再会を喜び、四人分の対価を払って帰国の途に着いた。


 両親はまずベルハザードたちが暮らしている辺境伯の邸に吃驚し、ベルハザードが冒険者としても大成し、今では辺境伯代行を務めていることに驚愕した。



 ベルハザードとアウラの提案を断り、両親たちはゼルプスに居を構えることを希望した。

 村にいた時から働き者だった四人は何もしないでいるのに耐えられないらしい。

 そのため、穀倉地帯にあるゼルプスで畑仕事に携わることとなった。

 彼らのためにベルハザードは、しっかりとした家を二軒用意させ、道具も一通り揃えさせた。

 配下にあれこれ指示を飛ばすベルハザードの姿を、二人は万感の思いで見つめていた。


「ベル……大きくなったな」

「急にどうしたんだよ? そりゃあ、これだけ歳を取れば体も大きくなるだろ」

「いや、体の成長もそうだが……なあ?」

「ええ。あなたは自分の夢を叶えたのね」

「えっ? ああ、まあ……そういうことになるかな」


 ――『いつか誰もが知る冒険者になって、でっかい家を買うんだ』


 まだ小さかった頃の大それた夢だった。

 幼さゆえに見ることができた身の程知らずな夢――しかし、今はそれが現実となっている。


「ベル。お前は俺たちの誇りだ」

「父さん」

「あなたは私たちの自慢の息子よ」

「母さん」


 ベルハザードは目頭が熱くなり、自分の視界が揺らいでいることに気付く。

 思わず右手で両目を押さえた彼に、両親はそっと寄り添った。


 ベルハザードは両親と別れ、ルルティアナと歩いていた。

 アウラとソフィアはまだまだ両親と積もる話があるようで、邪魔するわけにはいかないので、散策して時間を潰すことにした。


 ベルハザードは長閑な畑の広がる風景を見ながら歩いていたが、後ろを歩くルルティアナが立ち止まったのに気付いて足を止めた。


「どうした?」

「私、決めました」

「何をだ?」

「この前のことです」


 ――『大切だと思ってる。同じ家族でも、ウォーレンたちとは違う。……うまくは言えないが』


 ルルティアナは以前にベルハザードから言われた言葉を反芻する。


 ――あなたも私に、家族の親愛以上の感情を抱いていると思っていいんだよね? それなら、絶対に振り向かせるんだから。


 言葉の意味を察することができず、思案を続けるベルハザードを追い抜き、颯爽と先を行くルルティアナの表情は晴れ晴れとしていた。

ご覧頂いている皆様、ブクマ登録・評価などをして下さる皆様のおかげで意欲が保てています。

誠にありがとうございます。

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