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傭兵貴族は気ままに過ごしたい  作者: 夏風
ルルティアナ編
31/42

01 注意散漫

最近、意欲低下が激しくてすみません。

 今日の辺境伯邸内は使用人が慌ただしく動き回っていた。

 特にベルハザードの執務室周辺は目まぐるしい限りであり、何人もの使用人が何度も入退室をしている。


 何故こんなに忙しないのかというと、各地に出張っている国家傭兵団のメンバーから報告が上がってきているからだ。ちょうど、成果報告の時期が被ってしまったらしい。

 こればかりはどうしようもないので、ベルハザードは雑にならないよう迅速にかつ丁寧に報告書に目を通して問題の無いものは処理済みとし、そうでないものは助言もしくは今後の指示を出す。


「はぁー」


 書類を渡した使用人が出て行き、部屋にいるのが自分だけになってからベルハザードは溜息を一つこぼした。

 別に煩雑さに嫌気がさしたとか、疲れたわけではない。ベルハザードは戦場で剣を振るうだけが能の男ではない。最初の頃は悪戦苦闘していたが、今ではこれぐらいの書類仕事は造作も無くやってのけるだけの能力が備わっている。


 ベルハザードの溜息の理由は仕事の煩雑さではなく、幼馴染で想い人であるアウラとの関係が進展しないことにある。

 離れていた時間が長いこともあって、どうやって距離を詰めればいいのかわからないのだ。

 そうしているうちに、ベルハザードの周りに女性が増えていることも心配の種だ。全員が全員とても魅力的なだけあって、この調子ではいつか愛想を尽かされてしまうのでないかと危惧している。


 ところが、そんなベルハザードの心配をよそにアウラは、彼のことをとても誇りに思っており、以前にも増して惹かれるようになっていた。

 困った人を放っておけないお人好しなところや、王太子をはじめとする様々な人に慕われている姿、他のことをしていながらも自分が近くにいれば、必ず気にかけて視線を送ってくれるところなどなど、挙げればきりが無いのだが、なにぶんアウラも接し方に迷いがあるため、なかなか踏み込むことができないでいた。


 そんな感じなのでベルハザードが心配するようなことは一切ないのだが、相手の心の内などわかるはずもなく、頭を悩ませることとなっている。


 ――ふぅー。


 そして、ベルハザードとは別に頭を悩ませている人物がここにも一人いた。

 ルルティアナである。


 出会った当初、ルルティアナは持ち前の面倒見の良さで、自分の弟のようにベルハザードの世話を焼いていたのだが、それがいつしかベルハザードは彼女の中で、弟から一人の男性へと変わっていた。


 今は秘書的な立ち位置で仕事に励むことで気持ちを誤魔化している。


 そんなルルティアナの努力の脇で、ベルハザードの周りには魅力的な女性が増えていく。彼が仕事の傍ら血眼になって捜していた幼馴染で想い人のアウラだけでなく、ミスティスやシェリルと言った亜人種に加え、ついには正統派令嬢とも言えるアリシアまで気が気じゃない。

 しかも、シェリルは積極的にアプローチを繰り返しているのも、余計に焦りを増長させる要因だ。

 幸いなことにベルハザードは全く靡く気配を見せないが、同時に自分も同じようにあしらわれたらと、ルルティアナは前に踏み出せずにいる。


 業務や戦闘はやり手だが、こと恋愛に関しては初心者のルルティアナはそんな可愛い悩み事を抱えていた。

 それだけに注意力が疎かになってしまっていた。

 普段であれば、決して見逃さない気配に気付けなかったのだから。

ご覧頂いている皆様、ブクマ登録・評価などをして下さる皆様のおかげで意欲が保てています。

誠にありがとうございます。

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