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幕間その3

今回の幕間は2話構成です。

 ここ迷宮都市リンドリオルにはステイクホルムでも有数の設備が整備されている。

 中でもとりわけ有名なのは上下水道だろう。いち早く、衛生環境を改善するのに必要なこの設備を整えたリンドリオルはその画期的な機構を王家へと献上し、首都メルゲニクはこれにより更なる発展を遂げたことは、内外を問わず広く知られている。


 上水は常に清潔さを保てるよう、引き入れた時点から所定の地点に、水を浄化するための魔法式を組んだ魔石が配置されている。

 下水は上水と混ざらないよう低い場所に流す必要があったことから、家々の脇に側溝を作り、そこから地下の下水道へと導く構造とした。


 下水道を通る水は専ら汚れた水のため、不衛生であり悪臭が伴う。汚物混じりであることからも、上水よりもその対処を考えるのに苦労したが、聖女ルナリアの法術をヒントにしてベルハザードとルルティアナがこの問題を解決した。

 機構は上水のそれと大差は無く、特定の魔法式を組んだ魔石によるものだ。

 ただ、下水は上水と違って人の体に入るわけではないので、浄化を継続して行う必要は無い。代わりに固形物を取り除くもしくは流れを妨げない程に細かくすることや、悪臭を防ぐことなどに焦点が置かれている。


 家から出た汚水が初めに通る側溝には『粉砕』の魔石があり、地下へと入る前に『消臭』の魔石がある。そして、全ての汚水が合流し、都市外の川に戻される前、その都市の出口付近に『浄化』の魔石がある。

 加えて地下を通る下水道内は作業を行う者たちを配慮し、空気が淀まないように換気口がいくつも設けられ、地下内の空気が循環するよう魔石が配備されていた。


「それじゃ、今日も仕事を見に行くか」

「はい」

「? 出かけるのか、旦那様」

「シェリル……旦那様はやめてくれって言ったろ?」

「これは失礼した。ご主人様」

「……わかってやってるな?」

「すまない。ベル殿。して、どこに行かれるのか?」

「ああ、通常業務だよ」


 ベルハザードはルルティアナを伴って都市機構の状態を点検するため、出かけようとしていたところにシェリルから呼び止められた。

 ちょっとした掛け合いの後、この地を管理する辺境伯家の者として、都市内を巡回するのは彼らの日常である。

 それに興味を示したシェリルは好奇心に満ちた目で同行を願い出た。


「私も同行させてくれないか?」

「何か気になることでもあるのか?」

「気になるどころではない! ここに来てから初めて見るものばかりで興味は尽きん!」


 シェリルはダークエルフ族だけでなく、グレイスフォレストに住むエルフ全体の中でも1,2を争う程の猛者だった。

 当然、その腕を見込まれ、エルフの里の守護者として同族からの信頼は厚い。

 そのため、グレイスフォレストを長く離れることができず、彼女の知見は里を中心としたごく狭い範囲に留まっていた。

 それだけにステイクホルムの国領に入ってからというもの、シェリルは目を輝かせっぱなしであり、リンドリオルに来てからは更に好奇心を刺激されたようだった。


「そうか。それでは一緒に行こう」

「おお、ありがたい!」

「わからないことがあれば、何でも聞いてください」

「ルル殿も申し訳ない。では、早速――」


 シェリルの願いをベルハザードは快諾した。

 同行するルルティアナも、初めて見るものに興味が湧けば疑問に思うだろうから――と、嫌な顔一つせずに声をかける。

 そんなシェリルから早くも疑問があると言われた。出発前にもう聞きたいことがあるのか――と、彼女の好奇心に二人は内心少し驚かされた。


「二人はいつから夫婦(めおと)なのだ?」


 シェリルから放たれた予想だにしなかった質問に、ベルハザードとルルティアナは氷のように固まった。

 そして、そのやりとりを陰から複雑な心境で覗くアウラとミスティスがいたことに、ベルハザードは気付かなかった。

ご覧頂いている皆様、ブクマ登録・評価などをして下さる皆様のおかげで意欲が保てています。

誠にありがとうございます。

本年の傭兵貴族の投稿はこれで最後になります。

来年もまたお付き合い下さればこれほど嬉しいことはございません。

皆様のご健勝とご多幸をお祈り申し上げます。

良いお年をお迎えください。

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