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見つめられて
窓辺の席、一人で黙々と本を読み続けている女の子がいる。
ずっと同じクラスだったはずなのに、なんでかその子とあまり喋った覚えがない。
切りそろえられた前髪とセミロング 。夏の西日にキラキラと光っていて眩しかった。
あんまりじいっと見ていたからか、目が合ってしまった。何となく気まずくなって、目を逸らそうとした。瞬間、名前を呼ばれてしまった。
「川上さん」
今まで本に落とされていた視線が、真っ直ぐに、わたしに向けられている。居た堪れないほど見つめられているのに、目を逸らせなかった。
「あれ、川上さんで合ってるよね?」
コテリと首を傾げながら、更に声をかけられる。声を出さない私に痺れを切らしたのか、本を閉じてわたしの目の前までやってきた。
「なんで、何も喋らないの?」
少しわたしより大きなことに、今気が付いた。わたしは本当に何にも彼女のことを知らない。
「そんなにわたしと喋るのは嫌?」
そう言って離れていこうとする彼女の、白いセーラ服の裾を必死に掴んだ。