異世界領主
頭空っぽになった時に妄想した奴だから特に気にせずに読んでね。
妄想した中身を文に起こしただけだから細かい話は無しで。
読みにくいのは妄想だから仕方ないね!
「今日こそこのアグネス領を貰い受けに来たわよ!」
元気一杯を絵に描いて額に収めたら飛び出して来たかのように高らかに笑う少女は、何やら自信満々に指を差してきた。
「人に指を向けるんじゃありません。」
対して、少女の前で書類仕事に勤しむ男は、冷えきった目で少女の相手をしていた。
「ふふん!その余裕も今日で終わりよ!なんたって我が父であらせられる皇帝陛下は、とうとう本腰を入れてこの地を落としに来たのよ!例え貴方が、アグネス領の領主、シゲル・フォン・サガワ辺境伯が連戦連勝の戦上手でも父上には及ばないわ!なぜなら今回は、父上にお願いして……「相変わらず元気だなオイ。メイドさ〜ん。この元気っ子にお茶出してあげて。」って聞けよ!話を遮るな!」
余程不服だったのか、少女は地団駄を踏んで怒り出すが、目の前の男、シゲル・フォン・サガワこと佐川茂は特に気にすることも無く、女中が淹れたコーヒーに口をつけた。
「あのな……。俺だって暇じゃないの。人質姫の相手なんかしてられないの。今月の決算書がこーんなに沢山束になってんの。」
「誰が人質姫だ!私はヘレン・セラ・アインス!栄えあるアインス帝国の皇女よ!」
元気っ子もといヘレンは、佐川の渾名に文句をつけるが、やはり佐川は何処吹く風とヘレンの抗議を右から左に流した。
「だってもう71回目だよ?71回目。お宅が宣戦布告の度にお嬢さんを差し向けてきて71回目だよ?最近聞いたけど衛兵もノーチェックで通してるらしいじゃん。どんだけ顔馴染みになってんの?」
「衛兵は見所があるようね。高貴なる私に出入門検査など必要無いということに。」
「いや、いつもお金と入れ替わりで出てくからもういいかな、ってなってるらしいわ。今、報告書に書いてあった。」
「ふざけんなっ!」
ドンッ!と佐川の机を叩いたところで女中が紅茶の入った器を入れて部屋に入ってきた。
「おまたせしました。ヘレン様、こちらにどうぞ。」
「え、ええ……。ほら!見なさいよ!領主は兎も角、使用人は敬う相手として私を見てくれてるわよ!」
「阿呆か。基本的にウチに来る来客には丁寧な対応を命じてるからに決まってるだろ。レナさんだって毎週のように来る人質姫の相手には辟易してるかもよ。なっレナさん?」
佐川が話を入ってきた女中、レナに振るとレナは、紅茶の器を机に置いてから佐川の方に向き直る。
「いえいえ。そんな事ないですよ〜。」
「ほらね!ちゃんと敬って……」
「年の離れた妹みたいで癒されてます。」
「うおいっ!誰が妹だ!?誰が!」
「執事のウォルター様は、ヘレン様が来ると遠くにいるお孫さんを思い出してるそうで。ヘレン様。もうちょっと来る頻度上げれません?具体的に週3回くらいのペースで。」
「そんな頻繁に戦争できるかァァァ!!つーか何で使用人の要望に合わせないといけないのよ!?」
傍から見ると野良猫を餌付けしようとしてるお姉さんの図に見える光景に佐川はほっこりしながらコーヒーを啜る。
「くっ……!もう怒った!いい!?今回の軍勢は今までとは違うのよ!」
「そう言って何回負けてる事やら。」
「うっさい!……今回はね。単なる軍じゃないのよ?」
意味深なヘレンの発言に佐川は神妙な面持ちでコーヒーを机に置く。
「我が帝国の歴代皇帝が飼い慣らしてきたドラゴン……その数なんと17頭。1頭1頭が1万の軍勢に匹敵するドラゴンを17頭!更に、上空には我が帝国が誇る竜騎兵が5000!更に地上軍には15万人を導入したわ!」
「……」
「ふふふ……。流石に事の次第の大きさが理解出来たようね?今回は父上も本気よ?」
「……」
「でも、寛大なる父上は、この大戦力を貴方にぶつける前に猶予を下さったわ。……今すぐ降伏し、我が帝国の軍門に降りなさい。そうすれば、爵位も領民の命も保証してあげるわ。」
「……」
「言っておくけど猶予はあまり無いわよ。貴方に残された道は2つ。帝国に降り合併するか、若しくは滅ぼされるか……。さあ、返答は如何に?」
ヘレンの突きつけた条件を前に、佐川はコーヒーを軽く啜る。
「惜しいな。」
「は?」
ウイーン……と音を立てて佐川の机の上に1つのボタンが押し出てくる。
佐川は、それをポチッと押すと、領内全域にけたたましいサイレンが響き渡る。
「何!?何をしたの!?」
「まあ、見とけ。」
サイレンの響きに領民達はまるで雷でも打たれたように動きを止め、すぐに今までしていた作業を打ち切り、片付けを始める。
農家は農機具を倉庫に戻し、牧畜業者は慌てて牛や豚などの家畜を牛舎などに押し込む。
商店は店を閉め、大工も家に戻る。
それを見計らったタイミングで領内が大きな揺れを起こし、地面がせり下がっていく。
家一軒分位地面の下に下がると、地面が2つに別れて領内のど真ん中に大きな正四角形の空洞が現れる。
そして、その空洞の中から巨大な大砲が姿を現した。
「第1、第2、第3安全装置解除!」
「エネルギー臨界点まで到達!何時でも撃てます!」
大砲の根元で作業をしていた油と汗にまみれた機械工達は、その中で唯一綺麗な服を着た老紳士に目線を送ると老紳士は近くにあった電話機を取る。
「御館様。ウォルターです。対大軍用撃滅砲の投射準備完了しました。」
「了解。速やかに投射せよ。」
「了解!!」
青と白の光が大砲の砲塔内部に充填されていく。
「ちょちょちょ……ちょっと!何よアレ!?」
窓の外に映る異常な光景に回答を求めるヘレンは、佐川に詰め寄るが、佐川は、コーヒーを口に含んで答える気は無かった。
そして、佐川が答えることも無く、その答えは返ってきた。
耳を劈く程の爆音と内臓を抉るような衝撃波に乗せて。
ボッッッッッッ!!
人体を破壊しかねない程の爆音と衝撃波と光が領内の全体を走った。
視認出来る者はいない。
音速の17倍の速度で加速し、打ち上げられた砲撃は、たっぷり10秒後、アグネス領に迫る帝国の大軍勢の頭上に炸裂した。
爆音爆風で耳と目が眩むほどの威力が帝国の大軍勢の頭上に炸裂した結果、弾着地点の周囲150kmが灰となっていた。
「何よ……あれぇ……?」
「正解は合併して帝国入りではなく。合掌して棺桶入りが正解でした。」
「はぁあぁ?」
「いやね。前々から対帝国用に考えてたんだよ。大軍を一挙に蹴散らす兵器。」
「へ、兵器ですってぇ……?」
「まず最初に浮かんだのは原子爆弾なんだけどアレは世界を滅ぼしかねないから単純に破壊力と拡散力を最強化した兵器を考えたのね。それがアレ対大軍用撃滅砲。」
「あ、アグネス……X……?」
「積載火力700万t。効果範囲約150km。大概の軍はアレで吹っ飛ぶ。弾頭部には、対ドラゴン用に作った破龍鋼をふんだんに使った。」
「は、破龍鋼って……ドラゴンに対して絶対的特攻を誇る最新の素材じゃない!?」
「ああ。アレ、ウチのドワーフが作ったからね。制作費は金貨1000億と159枚。つまり我が領地の税収40年分と制作期間は7年掛かった金の掛かる代物だよ。」
「そ、そんなお金……どこから……?」
「どこって毎週のように人質になるお姫様の人質予算を宛がったに決まってんじゃん。いやー助かったよ。」
まるで世間話をするようにバンバン信じられない情報が飛ぶのでヘレンは開いた口が塞がらないでいた。
「で、どうする?帝国軍、殆ど吹っ飛んだけど?」
アグネス領から数十キロ離れても見えていたドラゴン達は真っ黒の炭になっていた。
「……どうする?」
「じ……!」
「え?」
「時代背景を考えろおおおおおおおおおおおおおお!!」
ここは異世界。中世ヨーロッパに準じた文化水準の世界で、魔法が文面を支える世界だった。
ちなみにこのアグネス領の領主佐川茂は勿論、異世界人である。
……ふう