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短編集『錦上添花』其の二.  作者: アルトシエル〈Artciel@Art' World Crafts〉
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16.コリアンダー

遂に故郷へ辿り着いた。

尤も、まだ後で行くつもりだったし、まさか誘拐だなんて想像すらしなかった方法で偶々着いたけど…

「しかし此処が、お前さんの故郷か…」

「うん。」

忘れもしない。帝国で一番、青い空のよく見える街。

だがその下はと言えば、毒と湿気の大地だ。

底まで綺麗に見える、何処までも透明な川(リレー河の下流に流れ込んでいるらしいが、生き物1匹住みつかない)。

のたうち回る様に地を這いつくばり、曲がりくねって伸びる草花(其の花の名前を僕達は知らない)。

壊れたまま、放置されたコンクリイトの四角い建物(横に長い直方体型なのは、王国の生活様式に合わせているのだとか)。

焼け野が原から無作法に生えた樹々の合間には、何処にも行けなくなった破落戸や、今も終戦宣言を知らない自律人形や敗残兵――帝国から見て未帰還兵――が居ると言う。

「ついさっき最後の一人確保しました…」

「光学迷彩とサイレンサーガンはいかん…前から撃たれて尚分からん物だとは…」

「そう言えばエメットさんガチで撃たれてませんでした?」

「肩と腕の継目を撃たれた、御陰で利き腕が使えん。」

「着弾位置が正確すぎる恐ろしい!」

敗残兵はほぼ帝国謹製第二種機密事案;出張中の諜報員に該当するので、顔と名前を一致される訳にはいかない。それで、顔と名前を一致されたら問答無用で相手を殺す…戦時中の帝国謹製第二種機密事案とはそういう規則だったのだという。

「現に僕マジで殺されかけたんですけど…」

「帝国の法律は厳しいな。いや、技術流出による損害を考えたら

 寧ろウチの国もそれくらいすべきなのか…?」

御国みくにがぬるい、以上だ。」

だがしかし、そういう法律の所為で当時の諜報員達は現地の人・設備に頼る訳に行かなくなり、更に通信機類を喪っていた為に現場を出る為の手段に辿り着けず、死ぬまで敗残兵として戦地を彷徨う事になったのだという。

昨今の記録を見る限り、100年前から最寄の“戦争”までは帝国領ゴテルフォン区、“戦争”後は王国領ネクロポリスと呼ばれ支配されてきた。

しかし、元々沼地から始まった土地であり、機械類に始まりあらゆるものの不調・故障が続出した。この土地を持てあましていた帝国は“戦争”ついでに統治放棄を決め、“戦争”が始まる直前までに全員疎開を完了させた。だから、此処は“戦争”で帝国が残した産業廃棄物だらけだ…

偉い人に訊いたから、間違いない。

「あれ、この草だけ普通に伸びてる。」

そんな中、アサヒはまともな植物を見つけた。

つやつやとした葉が九枚、しゅっと伸びて三つ叉に分かれる茎で揺れている。

この汚染された大地に生える草があるとは。

「これはコエンドロだな。」

正体は、一緒に救助に来てくれたお兄さんが教えてくれた。

「調理や医療に使われる草だが、最近は専ら生食か調理利用に集中している。

 我が国の輸出量2位を」

「ってパクチーじゃん!?今これめっちゃブームなんだよ。

 なんか、ランチで山盛り乗ってる。」

「毒素の排出に使える植物だからな、分からんでもない。

 要るなら採っていけ、そろそろ帰るぞ。」

「はい!助けて頂いて、ありがとうございました。」

「フン、別にどうと言う事もない。」

負傷した仲間の手当が終わった所で、リノクのアサヒは故郷を後にした。

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確かタイだったと思うが、その辺りの国に、水銀で汚染されている地域があるのだとか。この話が本当なら日本で言う処の工業病が流行っていそうだが、そういう事も無く、人々が生きられるのは日々このコリアンダーを食べているからだという。

全草+種まで食用出来るとは、パクチーさまさまである。

今最高に問題になっている放射性物質も重金属。これを機に取り入れてみては如何だろうか。

種からの栽培は、ミントやラベンダーなどメジャーなハーブ達よりは作りやすい。丸い種を割って播いてみよう。

尚、セリ科なので、低発芽率と移植厳禁には注意したい。

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参考ホームページ

・趣味の料理ビギナーズ「育てておいしいまいにちハーブ」

https://a.r10.to/hfS0gK


・コリアンダーには重金属排出作用がある

http://suigyu.com/noyouni/hibari_morishita/64.html

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CAST

・リノクのアサヒ

・モーニ=ゼルコバ

・エメット=トゥエール

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