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魔法が存在しない世界でパリィ無双~付属の音ゲーを全クリした僕は気づけばパリィを極めていた~  作者: 虎柄トラ
第四章 魔導書実装編

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キマイラは猫科

 キマイラは前回の防衛戦にて楓御前が打ち取った鵺に似たボスで、獅子の頭に山羊の胴、蛇の尻尾を持つ合成怪獣(キメラ)


 奥で寝そべっていたキマイラは、縄張りに侵入してきた獲物を見定めるため閉じていた目を開く。


 ギロっとした目が僕達に向けられる。


 即ボス戦が始まるのかと戦闘態勢に入る僕達をよそに、キマイラは猫のように前足を頭にのせてくつろぎ始めた。


「かっわいぃぃ!何あの大きな猫ちゃん!!」


「可愛いってお前……図体だけでもライオンの3倍ぐらいはあるぞ。それに尻尾とか蛇ですけど?」


「倒す前にちょっとだけ撫でていい?」


「撫でていい訳ないだろ!?って、もう走ってんじゃねぇか!!あと、お前『です』って語尾つける設定忘れるぞ!!」


「あ~、前足ぺロペロしてキレイ、キレイしてるの?か~いいねぇ!」


 凶悪な外見とは裏腹に可愛らしい仕草に、シノマツリはペットの猫を思い浮かべてしまったのか、サンの制止を聞かず無防備に近づいていく。


「なんだこの状況。この感じだとあの兄妹を戦力として考えるのは難しいかも、なぁ修羅刹」


「…………」


「あのぅ~、修羅刹さん。僕の話、聞いてます?」


「も、もっちろん聞いてるに決まってるじゃない!それで拙僧も撫でに行ってきていい?」


「ちょ、もう一回言ってもらっていい?ちょっと僕の耳がおかしかったのか、自分も撫でたいとかそんな感じの言葉が聞こえたんだが?」


 僕は耳に手を当て聞こえなかったジェスチャーをすると、修羅刹は大げさに両手を振って本心じゃないとアピールする。


「冗談、冗談に決まってるじゃない!マツリがキマイラに近づく前に先に倒すわよ!!」


「りょうかい」


 修羅刹の号令に合わせて僕は一気に駆け出す。


 僕達の殺気に感じ取ったキマイラは即座に起き上がり「ガゴォォォォ!!」と威嚇する。


 普通のプレイヤーならその威嚇だけで、ビクついてしまうほどの気迫があった。


 僕もサンもそのピリついた空気に一瞬飲まれそうになったが、女性陣はなぜか嬉しそうにしている。


「わ~!ねぇ見て見て、タクト!キマイラあくびしてるよ!!」


「ソウダナ……」


「お眠なのかな?あの猫ちゃん??」


「わたあめのおかげというか、わたあめのせいというか……兄として何とも複雑な心境だわ。つうか、マツリ近づきすぎだ!離れろ!!」


 シノマツリとキマイラとの距離はもう3mを切っていた。サンはさらにそこから2m離れた位置にいた。


 キマイラは威嚇するために大きく開いた口を閉じようとはせず、その状態を維持したままシノマツリを睨みつける。


「そこから今すぐに離れろ!マツリィィィ!!!!」


「えっ……なんか言った、バカ兄?」


 切羽詰まった兄の声にシノマツリは足を止め振り返る。


 サンの叫びがこだまする中、キマイラの口から火炎放射器のように勢いよく炎が吹き出した。


 シノマツリを燃やし尽くそうと炎が襲いかかる。


「あ~、だから言っただろうが!!!!」


 サンは右手を伸ばしシノマツリの肩に触れるとすぐにグッと自分の方に引き寄せ、炎からシノマツリを守るべく位置を入れ替わる。


「お兄ちゃん?」


 戸惑うシノマツリにサンは苦笑しながら話しかける。


「全くお前ってやつは……たまには兄の言う事を聞けよな」


 ゴオオオオオォォォォ!!!!


 そして真っ赤に燃え盛る塊がサンを覆いつくす。


 完全に油断していた。


 その結果がこれだ。


「サン!マツリ!」


 僕は自暴自棄気味に叫ぶ。そんな僕の肩に手をのせ修羅刹は静かに諭すように話しかける。


「大丈夫よ、タクト。ほら、見てみなさい」


 修羅刹はそう言うと炎に包まれているサンを指を指す。


 そこには炎をもろともせずピンピンしているサンの姿があった。


「一応ボスってだけの事はあるな、ちょびっとだけダメージくらったわ」


「ごめんなさいです、バカ兄」


「それ謝ってんのか?それともディスってんのか?」


「謝ってるに決まってるです」


「あ~、そうか。まぁそれならいいんだけどよ。さて、そろそろ火も消えそうだし次はこっちの番だな!準備はいいか、マツリ?」


「任せろです。あの猫にしつけをしてやるです」


 たくましい兄妹の会話を聞いた僕はつい吹き出してしまった。


「あっははははは!マジかよ、直撃くらっても全然余裕じゃないか、サンのやつあんなに強くなってたのか!」


「でも、拙僧達の中で一番弱い事には変わりないけどね♪」


「おい!聞こえてるぞ、修羅刹!!」


 ボス戦真っ只中だとは思えないほど、賑やかで楽しい一時を僕達は満喫するのだった。

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