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魔法が存在しない世界でパリィ無双~付属の音ゲーを全クリした僕は気づけばパリィを極めていた~  作者: 虎柄トラ
第四章 魔導書実装編

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殲滅の魔法少女シノマツリ

 一番乗りで3階層に上ったシノマツリはタクトに褒められたいという一心で、ひとり先行しダンジョンを突き進んでいった。


「あの魔物は初めて見るです。頭が牛さんです」


 シノマツリが出会った魔物はミノタウロス。


 身体は人間で頭は牡牛の魔物、手には大型の斧を持ち、ゴブリンと同じように腰布を巻いている。全長80cmほどのゴブリンと違い、このミノタウロスは筋骨隆々な上、角を含めると全長3mはあるであろう巨体。


 装備自体はゴブリンとそれほど大差ないが、武器も体格も段違い。一目見ただけでこの魔物は脅威だと断言出来るレベル。


 このミノタウロスの実力は76階層相当、それはタクトが戦った鬼と同等の魔物という事。ただこちらは防御と攻撃に重点を置いている魔物のため、動きはそれほど速くない。


 またミノタウロスは今回のイベントダンジョンにしか出現しない希少な魔物となっている。


 まだシノマツリに気づいていないのか、ミノタウロスは壁に向かってガンガンと斧を叩きつけ遊んでいる。


 先制攻撃するチャンスだと感じたシノマツリはグリモワールを開き、書き記した魔法を唱え始める。


 シノマツリが創造した魔法は火、水、氷の3属性。その中で今回選んだ魔法は氷属性。これはシノマツリが初めて自分で考えた魔法。


「この世のことわりときは今……」


 シノマツリが詠唱はじめた事で、ミノタウロスの注意を惹いてしまった。


 ミノタウロスは斧を壁に当てガリガリと音を鳴らし、こちらに向かって来る。その音は徐々に間隔が短くなっていくが、シノマツリはまだ詠唱を終えていない。


「この刹那を以て凍結される……」


 ミノタウロスの斧がシノマツリを襲うまで、あと1mまで迫った時、詠唱を終え魔法が発動する。


「おやすみなさい」


 その瞬間、ミノタウロスは一歩も動けなくなった。ミノタウロスの両足が氷によって地面と接着していたのだ。


 その氷はゆっくりと上を目指して広がっていき、じっくりと着実にミノタウロスを氷の中に閉じ込めていく。

 

 最後にはミノタウロスは氷山に封じ込められたマンモスのように氷漬けとなった。


 パチンッ!っとシノマツリが指を鳴らすと、その氷は氷漬けとなったミノタウロスごと粉々に砕け散っていった。


 ミノタウロスだったものはこの世から消失し光の粒子となり、かの魔物の魔石がコロンっと床に落ちた。


「この牛さん弱すぎです。これじゃ拓斗お兄ちゃん……じゃなかった。タクトに褒めてもらえないです」


 自分の兄でさえまだ到達していない76階層相当の魔物を倒したのにもかかわらず、当の本人は喜ぶどころか、グリモワールを力任せに閉じて不満そうにしている。


 修羅刹による打撃音などに比べると、かなり戦闘音は抑えられたはずだったが、それでも通路越しにいた魔物には聞こえていたようで、群れとなりシノマツリに向かって殺意むき出しで襲いかかる。


 ただそれでも距離にして10m以上は離れた位置、しかも曲がり角が多数ある入り組んだ通路。


 そんな通路に大量の魔物が我先に前へ前へと進めばどうなるか。


 渋滞を起こす。


 ミノタウロス、サイクロプス、オーガは移動速度が遅い。速く走れるケンタウロスも渋滞によって、他の魔物と同じ歩幅で進まなくてはならなかった。


 魔物がシノマツリを視界に捉えるまで早くても10秒はかかる。そこからさらに攻撃可能な距離まで近づくとなると最低でもその倍。


 それに対してシノマツリは5秒もあれば魔法を発動出来る。


 シノマツリはこっちに近づいて来る魔物の群れを、進行による足音と振動で感じ取っていた。


「もっと、もっと、もっと、もっと来るです!!」


 シノマツリは笑みを浮かべグリモワールのページをめくり、次の魔法を詠唱する準備に入る。


「次はこれにするです」


 シノマツリが開いたページに書かれていた魔法は水属性、これは今朝思いつき書き記した魔法。


「清き清流が全てを洗い流す……そうあなたという存在全てを……さようなら」


 詠唱を終えると一滴の水がシノマツリの眼前に現れ、そのままポツンと落ち床に染み込んでいく。水滴が染み込み薄っすらと影のようになったところで、この魔法は次の段階に移行する。


 今度は逆にその染み込んだ箇所から大量の水が噴き出した。最終的にはその噴き出した水は直径1mの球体となった。


 シノマツリはシャボン玉を突っつくように軽く人差し指で触れる。触れた箇所とは真逆の位置から、勢いよく球体から水が溢れ出した。その勢いはダムに空いた小さな穴に圧がかかって、決壊したかのような苛烈なものだった。


 その量は明らかに球体の許容量を大幅に超えていた。だが、一度もシノマツリの前に透明な壁でもあるかのように、そこで遮られ水がこちら側に流れ込む事は無かった。


「あっは~!みんな流れちゃえです!!」


 その水は止まる事なく10秒ほど出続けた。球体は水が止まると同時に消滅し、浸水するほど溢れていた水もいつの間にか消えていた。


 この魔法によって、襲撃しようとしていた魔物は全滅。あまりにも強力な広範囲魔法だった事が予想外の結果をもたらす。


 3階層にいる全ての魔物に自分がいる事を知らせてしまった。


 シノマツリは今までとは比べものにならないほどの足音が近づいて来るのを感じ取っていた。


「これ全部倒せば、タクトもきっと褒めてくれるはずです!!」


 シノマツリは創造した魔法の中で、唯一毛色の違う魔法が書かれたページを開き詠唱し始めた。


「空間座標固定……ターゲットロックオン……圧縮せしほのおよ!いま解放してやろう、全てを灰燼と化せ!!」


 その瞬間、眩い光が辺りを包み込んだ。次にシノマツリが目を開けた時には全てが終わっていた。

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