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魔法が存在しない世界でパリィ無双~付属の音ゲーを全クリした僕は気づけばパリィを極めていた~  作者: 虎柄トラ
第三章 最終都市防衛戦編

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防衛戦当日

 翌日……。


 僕はイベント開始予定時刻よりも30分ほど早くログインすると、早速デイリークエストを消化するためいつものクッキー屋に向かう。


 これは僕が勝手に決めたルールのようなもので、前にも述べたようにあの露店で購入出来るクッキーの上限はひとり3袋までとなっている。なので、買い忘れる事がないようにするためログインしたら、まずはクッキーを上限まで購入する事にしている。


 クッキー屋の少女は僕を見つけるなり元気よく挨拶してくれた。


「こんにちは~、お兄ちゃん!今日はいつもより買いに来るの遅かったけど、なにかあったの?」


「こんにちは。あ~……昨日はちょっと夜更かししてさ。どちらかというと、おはようが正しいかも」


 僕は頭をかきながら少女の質問に答えると、少女は呆れた様子で僕の顔を数秒見た後、後ろを振り返り僕達の会話を聞いていたであろう母親に、僕がつい先ほどまで寝ていた事を伝えていた。


「お母さ~ん、お兄ちゃん寝坊したんだってぇ~」


 母親は娘の言葉にうんうんと頷きながら微笑んでいた。


 いやまぁ正直に答えた僕も悪いと言えば悪いのだが……。


 昨日はあの後すぐにベッドに入り目を閉じて寝ようとはした。ただ自分でもビックリするほど、目が冴えて全然眠る事が出来なかった。それは例えるなら次の日の遠足が楽しみで眠れなくなってしまった子供。日が昇りはじめた時にようやく睡魔が訪れ眠る事が出来たのだが、その分起きるのが遅くなり今に至る。


 今回行われるイベントは最終都市防衛戦。


 これは先月開催されたエインヘリャル最強決定戦のようなプレイヤー対プレイヤーというものではなく、プレイヤー対魔物となっている。またイベントの名称に防衛戦と記されているように今回は、魔物の手からこの街を守るイベントとなっている。


 イベントの流れとしてはまず最初にこの街の東西南北にある門に、それぞれ各プレイヤーが割り当てられる。イベント開始すると街を目指して魔物の大群が押し寄せて来るので、各プレイヤーは侵攻してくる魔物を対処しつつ、門が破られないように防衛する。


 門を破られる事なく魔物を殲滅出来れば特に被害もなく、プレイヤーの勝利となり各種報酬が与えられる。しかし、もし殲滅できずに門を破壊され街に魔物が入った場合……。


 最初から門を突破される事を想定する事はやめておこう。


 それにはじめての防衛戦イベントだし、いきなり高難易度で来ることはないだろう。四方の門に振り分けられたプレイヤーの総合力も、大体同じようになっていたしきっと大丈夫。


 僕は頭の隅に残る不安が溢れ出てこないように自分に言い聞かせ蓋をした。


「お兄ちゃん~、いってらっしゃ~い!」


「いってきます」


 ハニージンジャークッキーを購入し、僕はふたりと別れ北門を目指して歩く。


 僕は北門に向かっていた時、笑顔で手を振ってくれた少女とニコッと微笑み会釈してくれた少女の母親……そしてこのゲームのNPCの事を考えていた。


 このイベントの事をNPCに話してもその事で心配する様子もなく、彼らはいつもの日常生活を送っている。これはNPCにとって僕達プレイヤーは、神によって選ばれ召喚された戦士。自分達を魔物から絶対に守ってくれる存在として信じて疑わない。


「期待に応えないとな。明日も美味しいクッキーを食べるため頑張ろう」


 僕はグッと拳を握り締めもう一度自分に言い聞かせるのだった。


 大まかな戦力としては僕達雪月山花は北門、コタロウ率いる桜花爛漫は西門、残りの二か所には僕達やコタロウを除いたエインヘリャル最強決定戦で本戦出場したプレイヤーの面々が振り分けられている。


 北門に到着すると、そこにはもうすでに数百人のプレイヤーがいた。


 地面に座り談笑していたり、目を閉じ腕を組んで壁にもたれていたり、連戦に備えて装備やアイテムを確認していたりなどし、各プレイヤーはそれぞれ北門が開くのを待っていた。


 その中には見知ったプレイヤーもいた。


 バケツのようなヘルムにハルニッシュ……僕があの予選で戦い最後に鼓舞してくれたプレイヤーだ。

 

 僕は指をコキコキと鳴らして北門を見ているタイタタンに背後から声をかけた。


「よぉ~、タイタタン」


 タイタタンは僕の声に気づき振り返ると、ドカドカと地を踏みしめこっちに向かってきた。


「あん?てめぇ、よぉ~じゃねぇよ!俺とてめぇはいつそんなに仲良しになったんだぁ!!!」


「確かにそう言われるとそうかもしれない。でもまぁ大会で戦った仲だし」


「そうかよ。それにしてもよぉ、まさかお前が優勝するなんて思いもしなかったぜ」


「僕だって本当に優勝出来るとは思ってもみなかったよ。でもさ、あの予選グループの代表として本戦出場した以上は簡単に負ける訳にはいかないだろう?それにタイタタンからもずっしりと重い言葉を受け取ってしまったからなぁ」


 僕がそう言うとタイタタンは過去に僕に向けて言い放った事を思い出して、急に恥ずかしくなったのか早口でしゃべり始めた。


「おまっ!てめぇ!あれはロールプレイしていただけで俺の本心じゃねぇよ!それにてめぇが俺の一撃必殺をパリィしたのをみた時に確信したぜ!てめぇが本戦出場してそこで終わりじゃねぇって事はよ!だがよぉ、俺もあれからさらにもっと鍛えたからよ!次は俺がてめぇをねじ伏せてやるから逃げんじゃねぇぞ!」


「お……おぅ、分かった。だけど、いまはこの防衛戦をクリアする事に集中しよう」


「てめぇに言われるまでもねぇよ。てめぇこそ油断するんじゃねぇぞ?」


「あぁ、もちろん。それじゃまた後で」


 タイタタンは会話を終えると、所定の位置に戻っていった。


 それから僕は先に北門に集合しているサンと修羅刹が待っている場所に移動した。サンと修羅刹は北門付近でしかも一番前にいた。前もってある程度合流場所は決めていたけど、ここまでまん前とは思っていなかった。


 僕に気づいた修羅刹は両手で大きく手を振って僕を誘導するのだった。


「タクトにしてはめずらしく来るのが遅かったわね?」


 デジャヴだろうか、ついさっき同じ事を聞かれた気がする。


「あ~、今回のイベントは休憩時間があまりないらしいから、ちょっと色々と準備していた」


「ふ~ん、そうなのね」


「タクトの言うように今回は波のようにずっと魔物が襲撃してくるを倒し続けるイベントだからな。つまりトイレに行きたくてもその時間が取れないって事だ」


「あぁ~、タクトの準備ってそういう事だったのね」


「すげぇ語弊がある気もするがまぁ……それでいいよ」


 ここで正直に12時頃まで寝てましたと修羅刹に伝えた事で、雷が落とされるよりかはマシだ。この程度の勘違いで済むのならこれで良しとしよう。


 そしてイベント開始まで残り10分に迫った時、四方にある門がいきなり轟音を立て開いた。


 ゴゴゴゴゴゴオオオォォォォ!!!!


 その地響きは門が開くにつれさらに大きくなり、最後には街全体を包み込んだ。


 僕達プレイヤーはその轟音に導かれるように一歩また一歩と歩みを進め、そして門を通り抜けていくのであった。

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