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魔法が存在しない世界でパリィ無双~付属の音ゲーを全クリした僕は気づけばパリィを極めていた~  作者: 虎柄トラ
第二章 エインヘリャル最強決定戦編

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準決勝そして決勝へ

 その瞬間、僕は身体全体に強い衝撃を受けた。


 ドーーーーーーーーーンッ!!!!


 壁に叩きつけられた衝撃で肺から空気が「ガハッ……」という声とともに外に排出された。


 どうやら僕はさっき修羅刹と戦っていた中央付近から壁まで吹っ飛ばされたようだ。


 僕がいた場所から真後ろの壁まで10mはあったはずなのに、それなのに一度も地面に足が触れる事がなかった。


「はぁはぁ……ギリギリ間に合った……あと少し遅かったら、さっきの一撃で終わっていたかもしれないな」 


 修羅刹はあの後、僕に向かって双震掌底破(そうしんしょうていは)を放ってきた。しかもこのスキルの発動を目立たないようにするために、修羅刹は前の4種類のスキルをわざと大声を出して発動させていた。僕はそれにまんまと騙されたという訳だ。


 自分の作戦通り事が進んだのが余程嬉しかったのか、修羅刹がこっちを見ながら双震掌底破を発動してくれたおかげで僕は、その事に気づき掌底が身体に触れる直前、咄嗟にダガーで防御する事が出来た。それにしてもダガーで防御してなお……これほどの威力とは恐れ入った。


 双震掌底破とは籠手専用のスキルで、両手を同時に突き出して掌底する事で対象を吹き飛ばすスキル。正直この説明だけでは僕もそれほど使えそうなスキルとは思っていなかったが、このスキルをくらった今ならハッキリと断言できる。これは絶対に受けてはいけないと……。


 僕が放ったソニックブレイドは、不発同然レベルの発動だったようだ。原因としてはショートソードを振り抜く前に双震掌底破を叩きつけられた事だろう。


 僕と修羅刹が使ったダンシングイリュージョンなどの一定時間効果を発揮するスキルは、発声するだけで問題なく発動するが、攻撃スキルのように斬ったり突いたりなど、動作を組み込まないといけないスキルは、その動作が正しく行われないと不発に終わったり、発動したとしてもガッカリな威力になったりする。その分クールタイムが短縮してくれればまだ良心的なのだが、もちろんそんな事もなく通常のクールタイムに突入する。


 双震掌底破のクールタイムは3分、もう一度このスキルを受けたら僕は耐えられないだろう。だからといって修羅刹の巧みなフェイントを全て見切って、パリィ出来るかというと……それはたぶん無理。


 だが、攻撃スキルが全てクールタイムに突入しているこの今ならば、まだ攻撃手段が多い僕の方が有利なはず、ならやる事はただひとつ。


「速攻あるのみ、エアリアルステップ!!」


 まだダンシングイリュージョンと夢想の領域の効果中にもかかわらず、一切攻めてこようとしない修羅刹に向かって僕は駆け出した。


 修羅刹が発動中の夢想の領域というスキルは一定時間、全てがスローに見えるというものでこれは自分自身にも適応される。そのためプレイヤーによっては、ただ世界が遅くになるだけで使い物にならないと判断する人もいるが、その遅くなった時間だけ周囲を観察して考える時間が出来る。


 修羅刹はその場その場で、一番相手が嫌がるであろう事を状況を見て判断する事が出来る。つまり修羅刹とこのスキルの相性は完璧だという事だ。それなのに追撃してこないあたり、やはり攻撃スキルが使えない事が修羅刹の判断を鈍らせているようだ。


 壁にぶつかる前の場所まで戻って来た僕は、すぐさまアサルトラッシュを発動し修羅刹に攻撃を仕掛けた。


 まずはけん制用としてシャドーエッジを発動したあと、続けざまにショートソードを右斜め上から振り下ろした。修羅刹は飛んできた残影を左のガントレットで防御すると、僕が振り下ろしたショートソードを回避するためバックステップをした。


 僕はその瞬間、レイジングスラッシュを発動した。もやもやオーラで剣身が伸びた事により、ただ後方に下がっただけでは斬られると悟った修羅刹は、ショートソードの剣筋に合わせ今度は右のガントレットで防御態勢に入った。


 修羅刹が僕の動きを予想出来るように、僕もまた修羅刹の動きを予想する事が出来る。


 僕はショートソードを防ぐために上げた右腕をかいくぐるように、修羅刹の右わき腹を狙いダガーを投げた。


 修羅刹はグサッ!?という音が自分の身体から聞こえるまで、ダガーを投げられていた事に気づかなかった。


「えっ!?」

 

「悪いな修羅刹、今回は僕が勝たせてもらう!」


 僕はダガーが刺さった事で一瞬反応が遅れた修羅刹にそう言い放ち、右わき腹に刺さったダガーを全力で殴り身体に深々と刺さるように押し込んだ。


 修羅刹はダガーによる2回攻撃でガクッと膝から崩れ落ち、そして最後には前のめりに受け身も取らずに倒れた。


「困ったわ、身体が全然動かせないわ。ここまで深く刺さるとダガーでも致命傷になるようね……残念、今回は拙僧の負けね」


「双震掌底破を当てた後すぐに追撃していればそっちの勝ちだったよ……こちとら壁にぶつけられた衝撃で最初身動き取れなかったからな」


「それなら攻撃の手を緩めずにやっておくべきだった。あ~、もっと色々言いたいけど、そろそろ時間っぽいし敗者は消えるわね。あと最後にタクト!決勝戦の相手がサン、コタロウどっちが相手だったしても絶対に負けるんじゃないわよ!!負けたら……分かっているでしょうね?」


 修羅刹はうつ伏せに倒れたまま脅迫じみた激励の言葉を僕に贈って消えていった。


 残すはあと一試合……これで今大会の優勝者が決まる。僕の対戦相手はサンかコタロウのどちらになるのだろうか。


 僕はまたあの一室に転送されるとすぐイスに腰を下ろし、ふたりの試合がはじまるのをディスプレイを眺め待つのだった。


 ディスプレイにサンVSコタロウと表示されたあとすぐに試合が開始された。


 今までの試合では拳を交える前に対戦相手との交流を兼ねて、軽く挨拶やちょっとした会話をするのが普通だった。ディスプレイ越しでしかも無音のため、あの場でどんな話をしているのかまでは分からないが、それでも口が動いていたり身体を動かしたりなどのジェスチャーで、何かやり取りはしているんだなという事だけは理解する事が出来る。


 しかし、サンとコタロウの試合ではその行動がなく、軽く頷いただけでいきなり戦い始めたのだった。あの首を縦に振ったのは『両者、準備はよろしいでしょうか?』と聞かれた事に対して返事をしただけだろう。


 次の瞬間、僕は疑いたくなる光景を目の当たりにしたのだった。


「サンがあんなにあっさりと負けた……ウソ……だろ!?」


 雪月山花で一番防御力があるはずのサンがたった3秒でコタロウに敗れていた。


 ディスプレイ越しのためコタロウの動きをちゃんと観察した訳ではないので、何とも言えないがそれでも1秒間に7、8回は斬り、突きなど多彩な攻撃方法でサンの四肢に連撃をいれていた。またコタロウはこの試合でスキルを使った形跡が見当たらなかった。


 僕がスキルを使用せずにただ攻撃しただけではサンを10回、20回それ以上、攻撃したとしてもあいつは全然余裕で立っているだろう。そんなサンがスキルすら発動していないただの攻撃で、倒されたのが信じられなかった……。


 そして僕をあの舞台に招待するためにまたあの扉が静かに出現した。


「コタロウの動きは目で追えていた。ならあとはそれに合わせて剣を振ればいい……。コタロウの攻撃さえ当たらなければ勝てるはず、違う……勝つんだ」


 僕は扉の前で自己暗示をかけるように声を出し……一歩踏み出した。

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