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03 チートウインドウで人生の難易度が変更できるなんてヤバすぎる

 ブレイ レベル2

  HP 8 ⇒ 12

  MP 6 ⇒ 8

  筋力 4 ⇒ 6

  知力 3 ⇒ 4

  俊敏 4 ⇒ 5

  魅力 1

  CP -2



 意味不明の文字だらけの窓を前に、呆気に取られる俺。

 テュリスは得意気な羽音とともに説明しはじめた。


「これはステータスウインドウといって、旦那の状態を示したものやな。

 『ブレイ』ってのは言うまでもなく旦那の名前のことで、レベルは強さの目安みたいなもんやな。

 旦那はレベルが2になって、初めて強くなったんや!」


 遠くから聞こえる声のように、ぼんやりとテュリスの声を耳に入れる俺。


「この俺が、強く……?」


 テュリスはすべてのステータスの説明を終えたあと、プーックスクスと笑った。


「しっかし旦那、いままでHPが1桁やったんやなぁ。

 ピッカピカの小学1年生クラスやん! こんなんでよういままで生きてこられたなぁ!」


「うるさいな」


「さーて、説明はこれくらいにして、チュートリアルの続きといこうやないか!

 とりあえずしばらくはこの森でモンスターを倒して、レベル上げをするんや!

 無駄なレベル上げは、RPGの基本やからな!」


 なんだ、RPGって? と思ったが、そのまま流す。

 コイツの言ってることの大半は意味不明だから、いちいち気にしてたらキリがない。


 俺はサプライムを倒す作業を開始する。

 すると、倒すたびにレベルが上がっていき、少しずつではあるが、強くなるのを実感した。


 今までにない感覚だった。

 今まではいくら努力しても、一向に強くなる気配がなくて、その場で足踏みしているようだったのに……。


 まるで成長期の身体になったかのように力がみなぎってきて、剣を振る速さと力強さが増していく。


 6回ほど斬りつけないと倒せなかったサプライムも、3回切るだけで倒せるようになる。

 敵からの反撃も3回ほど受けるとフラフラになっていたのに、今や6回受けても立っていられるようになった。


 俺はいま、着実に強くなっている……!

 それが楽しくてたまらなくて、夢中になってサプライムを倒しまくっていると……。


「ちゃはははははははははは!」


 ふと下品な笑い声が割り込んできた。

 見るとそこには、金ぴかに飾られた成金趣味の馬車が停まっていて、窓からはいかにもチャラそうな若者たちがニヤニヤしていた。


 アレは……俺を以前追放した、高校生勇者パーティだ。

 リーダーの勇者はたしか、ハーチャン……。


 ハーチャンは俺を指さし、馬車の窓枠をバンバン叩きながら爆笑していた。


「チャハハハハハ! 見ろよ、みんな!

 俺たちが捨てたオッサンが、サプライムとジャレあってるぜ!」


 仲間たちも一緒になって笑う。


「ぎゃははははは! マジかよっ!?

 サプライムってガキのお守りのモンスターだろ!?

 それをあんなにマジになって戦ってるなんて、ヤバくねぇ!?」


「あれって、ゴミスキルのオッサン!? わぉ、冒険者に復帰したんだ!」


「コレスコ、あんなの冒険者じゃないって! ただの荷物持ちっしょ!」


「えーっ、でもあーしらの仲間だったんじゃん!」


「おいおい、冗談言うなよコレスコ! あんなオッサンが俺たちの仲間だなんてキモすぎるだろ!」


 この手の罵りは俺にとっては日常茶飯事。

 高校生勇者どころか、小学生勇者にすらバカにされる。


 だから俺にとってはもう慣れっこだった。

 いつもなら無視していたところなんだが、今日は思わず目を奪われてしまう。


 なぜならば、窓から顔を出すハーチャンの頭上に、とあるウインドウが浮かんでいたからだ。



 難易度:イージー(4ポイント使用中)

 世界観:古典的RPG(1ポイント使用中)



 そのウインドウのデザインは、俺のステータスを表示するものと同じだった。

 俺はもしやと思い、そばで浮いている妖精に小声でささやきかける。


「なあ、アイツの頭の上に浮いているウインドウって、もしかして……」


「ああ、あれは『チート』ウインドウやな」


「チート? ちょっとっていう意味か?」


「ちゃうちゃう。

 『チート』は『神ゲー』スキルにおける、キモのシステムのひとつや」


「ということは、あのウインドウは俺の力で出してるってことか?」


「うぃ。その通りや」


「ウインドウには難易度イージーって書いてあるけど、アレはなんなんだ?」


「人生の難易度やね」


「人生の難易度? ってことはハーチャンの人生は簡単(イージー)ってことか?」


「うぃ、そうや。旦那はあのハーチャンとかいう勇者とパーティ組んだことがあるんやろ?

 『神ゲー』はチュートリアル開始前にパーティを組むと、CPを消費してリーダーの人生を自動的に『イージー』にしてくれるんや」


 言語的にも概念的にも理解しがたい内容だったが、俺はこの不可思議な説明に慣れつつあった。

 そして『CP』と聞いて、俺のステータスウインドウにあったある項目を思い出す。


「CP、って……。

 もしかして俺のステータスにある、ずっとマイナス2の項目のことか?」


 するとテュリスは「うぃ」と頷く。


 俺はすでにレベル5になっていたんだが、ステータスのなかで『魅力』と『CP』のパラメーターだけはいくらレベルを上げても数値が上昇しなかった。

 『CP』の項目に至ってはずっとマイナスだったので、なんだか気持ち悪くてしょうがなかったんだ。


 CPとは『チートポイント』の略だという。


「旦那は多くの勇者とパーティを組んだんやろ?

 そのせいでチートポイントをバラ撒きすぎたから、マイナスになってもうたんや。

 あのハーチャンともうパーティを組むことが無いようやったら、ポイントを取り戻しといたほうがええと思うで」


 俺の理解は完全ではなかったが、俺の力でハーチャンがメリットを享受していることだけはわかった。

 となれば、俺の答えはひとつしかない。


「チートポイントはどうやったら取り戻せるんだ?」


「簡単なことや、ハーチャンの難易度を『イージー』から下げればええ。

 『ノーマル』にすれば、かけたポイントはぜんぶ戻ってくるで」


 その後、俺は難易度変更の方法をテュリスから教えてもらう。

 ハーチャンを睨みつけて念じると、頭上にあった難易度は『イージー』から『ノーマル』に変わった。


 そして俺のステータスウインドウを確認してみると、


 ブレイ レベル5

  HP 20

  MP 12

  筋力 10

  知力 6

  俊敏 7

  魅力 1

  CP -2 ⇒ 2


 ずっとマイナスだった『CP』が、2ポイントになっている。

 「おお……!」と感激している俺の横で、テュリスはなにかを思いだしたようだった。


「そや、ポイントがマイナスの間は『チート』のウインドウはロックされて使えんのやけど、プラスになったから使えるようになったやで」


 俺はテュリスの説明に従って『チート』ウインドウを開く。

 そこにはふたつの項目があった。



 難易度:ベリーハード(マイナスペナルティ)

 世界観:リアル

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― 新着の感想 ―
[一言] 妖精?いまさらな感があります… まだチョイ読みですが遅くなった理由などが知りたいですが口調イラつきます
2020/09/16 12:37 にるばーな
[気になる点] オッサンになるまで放置されてる時点でクソゲースキルだよなぁ
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