8.キミの声
8.キミの声
クラスの中でわたしの友達は、文乃だけ。最初からそうだったし、目立ってたわけじゃない。それなのに、拡散って怖いなぁ。それと勝手な噂も怖い。清澄くんが好き。誰にも知られることなく、わたしだけが知っているだけで良かったのに……
「心晴って、超鈍足じゃね? なのにリレーに出るとか、クラス中を敵にするつもりなのか? 辞退とかしないのがマジ不思議なんだけど?」
「そ、それは……だって、多数決で」
「委員長の唯奈さんが優しさを見せたからだけなのに、そのまま言うこと信じるとか、ウケる!」
真実でもないことをみんなが信じてしまうって、ホントに怖いなぁ。幸いだけど、文乃だけは信じててしかも文乃の強さは絶大で、そんなに暴言が来ることは無かったのは良かった。いつまでもしつこく言ってくるのは、しつこい男子だけ。それも唯奈さんを密かに狙っていた男子だけ。
「心晴、平気?」
「う、うん。気にしてないから。それに、足が鈍足なのは事実だもん。反論しようがないよ」
「だとしてもさ、男子がガキすぎて腹立つ! 唯奈のことをウザがってた男子の手のひら返しとか、マジでムカつく!! 肝心の清澄くんにはこんなウチのクラスのことなんて言えないし、しょうがないことなんだけど言いたくなるよ」
「それはやめてね? 文乃」
「分かってるって! もうすぐ体育祭本番じゃん? マジでリレー出るの? あんた、マジで今の内に辞退してもいいんじゃ?」
「んーん、出る。わたし、普段の姿からは想像されないけど、リレーは得意なの! 文乃も応援してね」
「そ、そうなんだ。それなら、おなクラの友達だし応援するからね! アンカーは大変らしいけど、バトンを渡されたら心晴だけ応援するから」
「ん、ありがと!」
体育祭本番――
予想通り、実行委員の清澄くんとはまるで出会えなくて、出場種目のリレーが近づいてきた。いつもわたしを見ているクラスの子たち、男子たちは期待もかけてはいないけど、わたしを応援してくれる親や文乃の声に励まされたおかげで、スタート地点に立つことが出来た。
「鈍足心晴~~体育祭終わるまでには係にバトンを返せよ~」
「あいつら……! 小晴~~あんたの力を見せてやりなよ~~彼にもね!」
「ん、頑張る」
リレーがスタートする。スタートの合図とともに、一斉に走者が周回をして次々とバトンを渡していく。わたしはアンカーだから、出番まで待つしかなかった。
そうして、待っていたら清澄くんのクラスの走者も同じ早さみたいで、ほぼ同じ位置でわたしはバトンを手渡された。おなクラの文乃以外は結果が見えているといった諦めモードでわたしよりも何故か2組の走者を応援していた。
……清澄くん、どうか見ていてくれたらいいな。
「はぁはぁはぁ……」
クラス中のみんなが驚愕するほどに、わたしは足の速さを解放した。気付けば、2組の人は後ろを走っていて、わたしの前を走る人はいなかった。そんな時、実行委員が集まっているテント付近から彼の声が聞こえて来た。
『伊月ーー!! いっけぇ~~~』
――あ。
他の誰でもない、わたしへ向けて声を張り上げてくれている彼の声がはっきりと聞こえて来た。しかも違うクラスなのに。彼の声に応えるように、わたしはトップでゴールのテープを切った。
クラスのみんなの所に戻ると、心が一斉に変わったかのように誰もがわたしに優しさを見せてくれた。清澄くんのことで意地悪を見せていた女子たち、男子たちもよほど驚いたのか、一斉に謝って来た。
「い、いいよ。わたし、気にしてなかったから。それにリレー……走ることだけは得意だったから」
「すっごいじゃん!! 小晴って、何なの!? 普段は重りでも付けてんの? ヤバイんだけど」
鈍足のわたしは、リレーでおなクラのみんなからの評価を取り戻したみたいだった。唯奈さんだけは変わらず、わたしを認めてくれていないみたいだけど、目立って意地悪をしてこなくなった。それというのも、リレーで2組に勝ったことで、総合で逆転したらしくウチの組は最下位を免れたみたいだった。
それにしても、清澄くんの声……アレは間違いなく、わたしに言ってくれたんだよね? 清澄くんと話がしたいな。あんなにわたしの名前を呼んでくれたなんて、そのことを彼から聞きたい……