7.発覚
7.発覚
清澄くんと唯奈さんが付き合っているウワサは瞬く間に広がり、清澄くんを狙っていた女子たちは、彼が帰る時に誰と歩くのかをチェックし始めていた。わたしは、帰りこそ一緒ではなかったけれど、彼とは体育祭本番でも同じ係になるだろうし、今も放課後は倉庫で一緒に整理整頓を続けていた。
「伊月は、何か部活やってないの?」
「んーん、わたし遅いから」
「遅い? って、足がか?」
「ん、そう……それもあるかな」
「そうかなぁ。俺は気にしたことなかったけど、あ、そうだ! 体育祭終わったら委員も落ち着くだろうし、伊月と一緒に歩きたいな。朝も帰りも一緒に歩いて、話をしようぜ?」
あれ? でも、帰りは委員会の唯奈さんと一緒に帰ってるんじゃないの? なんて、聞けない……
「うん。た、楽しみにしているね」
「うしっ! 今日はこんなもんでいいかな。あと少しで体育祭本番だし、結構片付いたよな。伊月はリレーか何かに出るのか?」
「ま、まだ分からないけれど、そうじゃないかもしれないし分からない……」
「んー? そっか。でも、出られるといいな! そしたら俺は――」
えっ? 何を言おうとしているの?
「あ、そこにいたんですね? 清澄さん。もうすぐ委員会があるので、教室に戻って下さい!」
「え? も、もうそんな時間? そ、そっかごめん。じゃ、じゃあ伊月。またな?」
「あ、うん」
気のせいか分からないけれど、いつも優しい唯奈さんがわたしを見て睨んでいた? まさか、ね。
※
翌日になって、教室に行くと唯奈さんを応援していた周りの女子たちが、わたしに詰め寄って来て文句や悪口を言って来た。どうしてそんなことになっているの?
「ちょ、ちょっと、心晴。廊下に出て」
「文乃? え、なに?」
「あんた、清澄くんと毎日会っていたってマジ?」
「あ、うん。体育祭の用具係になってそれで、一緒に倉庫の整理を……」
「あー……それでか。あの唯奈は何だかんだで面倒な女だったかも。付き合ってもいないみたいだけど、清澄君と一緒に帰っていたせいか、その前にあんたと一緒にいる所を知って内心、穏やかじゃないみたいでさ~。取り巻き? の女子たちを味方にしてあんたを清澄君から遠ざけようとしていたみたいよ?」
「ええ? そ、そんなこと言われても……そんなに仲がいいわけじゃないし、係が同じなだけだし」
「や、女子はそうは見ないし。体育祭本番ですごく言われちゃうかもだけど、休まないでへこまないで頑張りなよ? あんたの頑張りは私は知ってるし、好きな人のことは諦めちゃ駄目だからね?」
「……ん、大丈夫だから」
不思議なもので、付き合っていることが本当じゃなくても唯奈さんと清澄くんの関係を邪魔しているわたしをまるで邪魔者扱いとして見てしまうのか、唯奈さんをそれまで怪訝していた男子や女子たちが一斉に応援しだすのはさすがに理解出来なかった。
それでも、文乃だけはそのことを知っているから味方してくれていたのが救いだった。そうした環境のまま、いよいよ体育祭本番の日を迎えることになった。足の遅いわたしは、そのことを責められながらもリレー走者として選ばれてしまった。わたしはわたしなりに懸命に走るだけ――清澄くんに見て欲しいから。