6.ウワサのふたり
6.ウワサのふたり
清澄くんとわたしの距離がちょっとだけ縮まった気がした、放課後。放課後は体育倉庫で体育用具の整理を二人だけで行なっているけど、帰りはまだ一緒に帰ることが出来なかった。どうしてかと言うと、彼は実行委員の他に、学級委員の委員会もあったから。
「伊月、ごめんな~。一緒に帰ろうなんて言っときながら、なかなか帰れなくて」
「ううん、そんなのいつでも出来るし。……清澄くんが帰れる時でいいから、気にしないでね」
「う、うん」
本当は一緒に帰りたい。せっかく、放課後にふたりで作業しているのにどうして、そのまま一緒に帰れないのかな……。この日も結局、一緒に帰ることが出来なくて整理を終えたわたしたち。
翌日、教室に入ると何だかざわざわしていて、何なのか気になってたら文乃がわたしを見ながら、焦る様にして声をかけてきた。
「こ、心晴、泣かずに聞いてね? あ、あのさ、あの……」
「お、落ち着いてよ。な、何? 泣くって何?」
「あのふたり、付き合ってるってウワサが流れているの。どうしよう……ねぇ、心晴」
「……え? だ、誰と誰が?」
文乃が視線を向けた席には、ウチのクラスの学級委員の唯奈さんが座っていて、彼女の席には女子たちが話を聞きたそうにして集まっていた。
「誰……のこと?」
「心晴の好きな人……」
「き、清澄くんのこと? う、嘘……」
「ホントかどうか分からないよ? けど、女子たちがあのふたりが一緒に帰っているのを何度も目撃してて、それでそんな関係なんじゃないかってウワサしてるだけだから……」
ウワサ……。そんなの、本人に聞かないと分からないことなのに。どうしてみんな、そんなこと言うの? 清澄くんはだって、わたしと……
「文乃。清澄くんは誰とも付き合ってないよ。ふたりとも委員だもの。一緒に帰るのは当たり前だよ。遅くまで委員会の作業をしてたら夕方とか暗くなるし、きっと唯奈さんを送ってあげてるんだよ」
「こ、心晴……。そ、そうだね。うん、きっとそうだよ! ウワサじゃん! だいじょぶだいじょぶ」
「うん、大丈夫だから」
だって、わたしも放課後に毎日、彼と会ってるんだもん。誰にも見られていないだけだもの……清澄くん。ウワサ、だよね? わたし、信じてるから。