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一緒に歩くキミが好き  作者: ハルカ カズラ
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5.ほんの僅かな時間

               5.ほんの僅かな時間



「用具係、なっちゃったね」


「俺的には嬉しいかな」


「……え」


「なんていうかさ、自由な時間って感じじゃん? 先生がそこにいるわけでもないし、俺たちだけで用具を取って来るとか、何かそんなちょっとの自由時間が嬉しいんだよね」


「そ、そうだね。そういう意味だよね。それならわたしも嬉しいかな」


 か、勘違いしそうになった。清澄きよとくんって面白いこと思ってるんだなぁ。用具なんて行って探して、持って行くだけなのに、それだけの僅かな時間なのに嬉しいだなんて、何かいいなぁ。


伊月いづき、せっかくだし、どんな用具があるか見に行ってみようぜ?」


「い、今から?」


「うん、どこに何がしまってあるかとか、置いているのかを見ておきたい」


「ん、いいよ」


 委員に向かないなんて清澄くんは言ってたけど、そんなことないよ。だって、行動力があるもの。ちゃんと意味のあることを言うんだから、みんなが清澄くんに惹かれてしまうよ。


 実行委員はみんながそれぞれで、役割が決まった。わたしと清澄くんは、一見すると地味な係だったけど、競技ごとに持って行くのがあるから結構忙しいかもしれない。それだともしかしたら、清澄くんの足を引っ張ってしまうかもしれない。それだけが心配。


「おー! たくさん、ごちゃごちゃ入ってるね~。伊月、これさ、本番までにきちんと分かりやすくしときたくないか?」


 清澄くんの言う通りかもしれないくらいに、整理されていない体育用具は、倉庫にごちゃごちゃと入っていた。中には名前も分からない物もあるし、重たい物だって適当な所に置いてあったりして、ひと目で大変だということが分かってしまった。


「うん、清澄くん。それ、いいかも」


「だよな~! じゃあさ、今日から体育祭の本番までにさ、放課後に少しずつやっていかない?」


「えと、それってわたしと?」


「他にいないじゃん、用具係。だから、俺と伊月だけ。もしかして嫌だった?」


「そ、そんなはずない」


「だろ? んじゃ、今日からよろしく!」


「う、うん」


 あれ? これってどういうチャンスなの? 今までずっと話も出来ない位に遠かったのに、急にこんな……しかも毎日二人きりとか、ど、どうすればいいの。


「お! そうだ、帰りもさ一緒に帰れるよな! 俺さ、伊月と朝会えない時に寂しく思っててさ。学級委員になったのを後悔しまくってた。初めて会った時に勝手に思ってたけど、朝も帰りも一緒に同じ方向に歩ければいいなぁ。なんて思ってたんだよね」


「や、でもわたし、歩くのすごく遅いし……。清澄くんが遅刻したらシャレにならないから」


「それならそれでいいよ。仲良く遅刻しようぜ。まぁ、でも朝はまだ無理かな。委員だし。でもさ、帰りはこれから体育祭まで一緒に帰れるし、一緒に帰りながら話をしようぜ?」


「ん、うん。あ、ありがと」


「ん? 何でお礼?」


「ううん、気にしなくていいよ」


「うし、じゃあやるか!」


 目を輝かせながら、ごちゃごちゃの用具を細かく分けていく清澄くん。共同作業ってこういうことなのかな? 清澄くんが何を考えながらわたしと一緒に帰るなんて言い出したのか分からないけれど、全然、何も思ってなくてそれでも、声をかけてくれてすごく、すごく嬉しい。


 片思いでもいい。好きになってもいいよね、清澄くん。

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