4.気付けばいつも目で追っている
4.気付けばいつも目で追っている
朝の通学路で彼と会うことが無くなってから、数か月……。その間に自分から話しかければ良かったのかもしれないけれど、やっぱりクラスが違うのは色んな意味できつかった。
文乃いわく、休み時間でも帰りでも話しかけたらいいじゃん。って言ってくれてたけど、清澄君は学級委員で忙しくしていて、とてもじゃないけど話しかけづらかった。帰りにしても、部活なのかそれ以外の活動なのか、見かけることがなくて気付けばもうすぐ夏になってしまいそうだった。
「……まだ好きなの? 清澄くんのこと」
「や、待って! 何で最初から好きって前提なの? わたし、一言も文乃に言ってないよ?」
「見てればバレバレなんだけど? そんなに想っているなら告ればいいのに」
想うのは誰でも出来るし、簡単だよ? だけど、告白なんて簡単には行かないよ。目で彼を追って見るだけなら、それだけなら本当に簡単なのに……。どうして話しかけられないのかな。文乃とは数か月経ってようやく呼び捨て呼びが出来るくらいに、友達度が上がったのに。
数か月の間に、もちろん体育なんかは二クラス一緒にやることもあったけれど、どうして話かけられないのかなんて、そんなの分かりきっていることだった。でも、気のせいかもしれなかったけれど一瞬、目が合った時があって、そんな時に彼はわたしを見て笑顔を見せてくれた時があった。
なんか、その笑顔を見てそれだけで、好きを持続出来てる気がする。そんなこんなで、もうすぐ夏のイベントが近づいて来ていて、彼との距離が縮まりそうな予感さえ感じていた。
「もうすぐじめっとした季節かぁ。そんな時に体育祭とか、やばくない?」
「真夏じゃないし、そこは別にいいんじゃないかな」
「あ、そうそう、例のカレは委員だからテント周りにいることになるんじゃない? 何かの係りに立候補してみたら?」
「う、ん……そだね。何かに手を挙げてみる」
※
運が良かったかもしれない。体育祭の実行委員に選ばれるなんて、思っても見なかった。普通ならやりたくないし、縁が無いものだと思ってた。だけど彼も実行委員にいて、久しぶりに近くで会えてわたしの顔に気付いた途端に、声をかけて来てくれた。まるで待ち望んでいたのかなと思うくらいに。
「伊月だよね? 元気してた?」
「う、うん。清澄くん、も元気そう?」
「それがさ、委員に推薦されたからやってたけど、案外忙しくてさ~。やっぱ、俺は朝も帰りもゆっくりしたいんだよな~」
「委員ってやめられないの?」
「どうだっけ? あ、でも、学期が変われば変われるんじゃなかったかな? その辺分からないんだけど、センセーに相談してみようかなと。俺、みんなをまとめたりする側じゃないっていうか、動きたいだけなんだよね。伊月もそう思うよね?」
「うん、たぶんそうかな」
「だよな~」
数か月ぶりなのに、何でこんなにも楽しそうに話してくれるの? 駄目だよ……好きが膨らんでしまうよ。