2.隣のクラスに彼がいる
「ね、心晴、聞いた?」
「んー? 何を?」
「2組に転入生が来たって。それも可愛い系の男子! 見に行かない?」
それって、もしかして? 朝に出会った男子なのかな。評判になってるんだ……分かる気がするかも。
「んん~わたしはいいよ。文乃ちゃんだけ行って来て」
隣のクラスなんだ。そうなると会えるのは休み時間とか、合同体育とか通学路くらいになるのかな。何かのイベントの時に会えたらいいな。そうしたら仲良くなれそうだし、なれたらいいな。
「いっや~~無理! マジ無理!! みんな、気になってたみたいでさー。教室入れないとかやばいって」
「そ、そうなんだ。そんなに人気あるんだ……」
「でさ、知りたい?」
「……もしかして名前分かったの?」
文乃ちゃんってこういうことが早いし、ちゃんと手に入れて来るのはさすがなんだよね。
「ふっふっふ……、水篠 清澄! 覚えた? 覚えたでしょ? まっ、頑張れ!」
「そ、そんなんじゃないってば。でも、清澄くん……って言うんだ」
※
朝に出会えた偶然は、この先を劇的に変えてくれるのだろうかなんて分からないことだったけれど、その偶然は帰り道にも待っていた。
「あれっ? キミ、朝の子だよね。今帰んの?」
「あ、うん。えっと……」
「俺、水篠清澄。転入生。って、もう知ってたよね。なんか、今日はそれしか言ってなくてさ~」
朝は偶然だったけれど、帰りも話しかけてくれるなんて偶然なのかな。何だか、面白い人。
「わたし、1組の伊月心晴です。あの、帰り……もしかして同じ道?」
「たぶんそうかも? 最後まで一緒か分からないんだけどさ、一緒なら嬉しいかも。てか、よろしくー! 俺のことは、清澄でいいよ。キミは……名前呼びはさすがに引くだろうから、いづきでいい?」
何でこんなに話しかけてくれるんだろ。しかもわたしの真横に並んで歩いてくれている。わたし、遅いのに……。でも、何だろ……何か、嬉しいかも。
「俺さ、転入して最初に話が出来た人がいて嬉しくてさ。同じクラスにいないかなって、思ってたんだけどいなくて。帰ろうとしたらキミが歩いてたから声かけちゃったんだよね。嫌かな?」
「そ、そんなことない……けど、それだけのことなのにわたしと歩いてていいの?」
「うん。何か、同じ道歩くのって楽しいし。朝とかも出会ったら一緒に歩けたらいいな~」
え、待って……胸ってこんなにも熱くなるものなの? なんでこんなこと言われて熱くなってるんだろ。まだよく分からないのに、きっと転入したばかりで一緒に歩く人がいなくて、わたしに声かけて来たのかもしれないし。
「そ、そうだね。一緒に歩けたらいいね」
うん、今だけなんだと思うことにしよう。だって、わたし歩くの遅いし。……きっと、そのうち置いて行かれるよ。清澄くん、か。同じクラスならもっと話が出来たのにな――