現実3
「ねぇ…忍?」
「ん?なぁに?」
範囲の確認に集中してたあたしは生返事で返していた。
「最近なにかあった?」
「亜弥どうしたの?急に」
「質問に質問で返さない。最近の忍ぼーっとしてるし、顔色良くない。
本当は何かあったんじゃないの?悩み聞くよ?」
「何でもないよ。亜弥の気のせい気のせい♪
夜更かししてるから、そのせいかなー?」
………ウソ。本当は毎日続く悪夢に参りかけてる。
あんな悪夢を毎日見てるなんて言えない、亜弥が登場してる悪夢見てるなんて。
「………単なる夜更かし、ね。
悩みじゃないならいーけど、睡眠はちゃんととりなよ?」
やっぱり苦し紛れの誤魔化しに気付くか。でも踏み込んで聞いてこないのは亜弥の優しさだね。
………………嘘ついてごめんね?亜弥の性格に甘えて利用しちゃった。
踏み込んで欲しくない所には、あたしから言い出すまで遠慮してくれる性格を……本当にごめんね?
あたしは内心自己嫌悪になりながらもそれを勘付かれないよう気を付けて亜弥とお喋りしながら、チャイムが鳴るまでノートを睨みつけていた。
時間も経ち、ようやく始業チャイムが校内に響く。
「あっ、チャイム。亜弥、ノートありがと!」
何でもないようにお礼を言ってノートを返すと亜弥も明るい笑顔でそれを受け取る。
「どーいたしまして!せっかくノート見せたんだから赤点なるなよ〜!」
「が、頑張るっ。せっかくノート貸してくれて赤点とるのは流石にね」
「じゃあ、結果楽しみにしとくね♪」
「うっ!1言ヤブヘビったかも」
あたしの撃沈ぶりがツボったのか席に戻っても後ろから堪えきれてない笑い声が聞こえる。
みんな席についたタイミングで先生が到着し、朝のホームルームが終わり静かになったのを見計らってテスト用紙が配られていく。
「お互いテスト頑張ろーね♪」
亜弥は先生に聞こえないようこっそりとあたしに一言言ってテストに向かった。
ふぅ……とりあえず書けるとこは書けた。時間もまだ残ってるし、ちょっと寝とこうかな?
あたしは書き終えた答案用紙を裏返して、腕を枕にして寝る事にした。