天国と地獄の愛を繋いだ銀の指輪9
タイトル
「天国と地獄の愛を繋いだ銀の指輪?」
「オギャー、オギャー」
「小金沢さん、よく頑張りましたね!」
看護師はタオルに赤ん坊を包んでお母さんに見せた。
痛く苦しく髪を振り乱して頑張っていたお母さんの顔が笑顔になり、知らない内に涙が溢れてきた。
「男の子と女の子の双子ですよ!」
分娩室の外で待っていた小金沢徹は赤ん坊の泣き声に顔が綻んだ。
「生まれましたよ!男の子と女の子の双子ですよ!お母さんも無事で元気な赤ちゃんです」
看護師に言われ緊張していた小金沢徹の顔も笑顔になった。
徹は看護師の手を握り「ありがとうございます」と何度も礼をした。
徹の顔は泣いて真っ赤に、そしてしわくちゃになり、生まれたばかりの赤ん坊の様になり、生まれた赤ん坊とそっくりになっていた。
数日間が過ぎて、新生児室で自分の子供の寝顔を見てきた徹は妻の絵理の入院している部屋に行った。
「絵理、どうだい、体の調子は?」
「ええ、もう大分いいわ!」
「頑張ったな!双子だもんなぁ!だから、あんなにお腹が大きく膨れていたんだね」
「ええ、私も看護師さんに見せられてびっくりしたわ。双子の、しかも、一卵性だって!まだ赤ん坊の内は判らないでしょうけど、これから二人とも顔が良く似てくることでしょうね!」
「これからが大変だな!一気に二人のパパとママになるんだからね」
「そうね、でもやりがいがあるわ!それに、男の子と女の子の二人だって言うから、あなたと私も喧嘩しなくてすむしね!」
「まあな、お前は女の子だったら名前は萌だって言うし、俺は男の子だった名前は実だって決めていたもんな!男の子か女の子かどちらか一方だったら、確かに喧嘩になっていたかもしれないな。神様はお前と俺の両方に、公平に名前を付けるチャンスをくれたんだろうよ」
「結婚してなかなか子供に恵まれず、七年目になって、やっと子供が出来たのも神様の思し召しなのかしらね」
「そうだな、一度流産してしまってから、ずっと子供に恵まれず、神様なんていないと恨んでたよ。ところが、もう半ば諦めていた所に妊娠して、生まれてみたら、双子だなんてな、一挙に二人も生まれて、七年分の子供が一回に生まれたのかもな。人生って解らないものかもな」
「そうよね、最初の子は流れて逝ってしまったものね。それから私達には、子供に恵まれないと、諦めて暗くなっていたことが嘘の様だわね!」
「そうだな、この実と萌は元気な子に育てような!やっと出来た俺達の大事な子供達だからな」
「そうね!」
その頃、天国では遼子が地上を映し出すテレビを見ていた。遼子は、たまたま通りかかったケンタを呼び止めた。
「なんじゃ、遼子と言ったかな。勝に振られてしまった女性じゃったな」
「『勝に振られた』は余計ですよ!ケンタ君」
「おお、すまん、ところでお前までわしのことケンタと呼ぶか!まぁ、いいじゃろう。ところで、お前さんは、ずっと地上界の様子を見ていたのか?」
天国では勝達が生まれ変わると言うことが話題になっていて、多くの人が興味津々でテレビを見ていた。
「うん、ちょっと泣けてきちゃった。勝と留美さん、とうとう生まれ変わったのね。ちゃんと人間にね。でも……」
「でも……なんじゃ?何か言いたいことがあるようじゃの?」
「これで良かったのかな?勝の魂は萌ちゃんと名付けられた女の子に、留美さんの魂は実君と名付けられた男の子に生まれ変わっちゃって……」
「性別が変わったぐらいはいいだろうよ。人間に生まれ変わって、しかも遠い所で一生会えない訳でもないし、憎しみ合う家庭に生まれ変わった訳でもない」
「でも、でもね、勝と留美さんは、二人の愛を遂げるために生まれ変わったのに、双子だなんて……。双子じゃ男として女として、相手を愛することは出来ないでしょうに……」
「そう言われてみればそうじゃな」
「しかもよ、一卵性双生児だから、相手の顔が自分の顔に似てくるだろうし、自分と同じ顔の人を愛することなんて、ほとんどないんじゃないかしら?むしろ鏡を見ている様な相手を見ていると、嫌に思えてくるものじゃないかしら?双子で顔も似ているから、親や周囲にもいつも何かと比べられてしまうだろうし……」
「この先、二人がどういう生き方をするのかは判らんよ。もしかしたらお前の言う様に同じ顔を持つ双子だからこそ、嫌悪感を抱いて大きくなるかも知れないし、また仲の良い双子として育っていくかも知れん」
ケンタは一呼吸置いてから、再び話し出した。
「でも、あいつらはあいつらの望みを叶えたのじゃよ。あいつらはいつも一緒にいたいと願った。そして、生まれ変わる選択をした。双子であれば、あいつらはいつも一緒に居られる。あいつらの願いは叶ったのじゃよ。これからは、自分達の力で幸せになっていくだろうよ!」
ケンタの言葉に、遼子は何も言い返す言葉はなかった。だが、少し遼子の心も晴れた気がした。
徹と絵理は萌と実を抱きかかえて病院を退院した。徹が萌を抱っこして、絵理が実を抱っこしていた。タクシーの後部座席に父親と母親に抱かれていた萌と実の顔は同じぐらいの高さにあった。
徹と絵理がタクシーに乗って前を向いている時、萌と実はお互いに顔を見合わせ、二人は可愛くちょっと微笑んだ。
萌を抱いている徹の左手の薬指と、実を抱いている絵里の左手の薬指には、銀の結婚指輪が、タクシーの窓から差し込む太陽の光を受けてキラリと反射した。




