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異世界温泉道中紀〜ゼロから始める温泉旅館の開業方法〜  作者: なつみかん
第一章 温泉英雄の誕生
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村長ソニア

タイトルと紹介文を少し変更させて頂きました。


燃え盛るような陽炎色の長髪をたなびかせる彼女はバブリア村6代目の村長「ソニア」である。


幼くして、村長に抜擢された彼女はかつて、神童と謳われるほど有望な存在だった。


しかし、幼い子供が村長に選ばれるということは異例であった。

この村の村長というものが代々、先祖の血筋からなるものであるため、親が早くに死んで、その子供が代替わりするということは一応の懸念事項としと憂慮されていたが、いかんせん今回が初であったため、村の者は騒然となった。


「本当に子供が村長になれるのか?」「まだ早いのではないか?」そんな不安が村長の務めに従事する「村方四人集」の耳にも入っていた。

彼らは村をそれぞれ東西南北に分けた地域で住民の揉め事やトラブルに直接携わり、また、村の中枢である村長を補佐していくという一定の権力を保持した重役達である。


彼らは村長を主な決議役に含めて度々、村の方針や各地域での出来事を合議制でこの巨大岩建造物の最上層の広間で話し合っている。


だから、子供のソニアが村長になるかという議論も、彼ら四人集の意見の元に裁定された。

そして、彼らに認められたソニアは今こうして、バブリア村の村長として采配を振るっているのだが……


「キョースケ、ヨーイチロー私の変装を見破れたかな?」


陽気な声でそう言った彼女は簡素な鉄の胸当てと腰当ての防具に身を包み、平形の鉄剣を携えていた。

その様は闘技場で剣戟を振るう女戦士のようだった。


すると、ここに来る途中まで不機嫌だった父が鬱憤を一気に晴らすかのように絶笑した。


「ハッハッ。村長さん、あんた本当にぶっ飛んだ人だ!

お陰で俺の息子はびっくりしてるぞ」


それを聞いた村長?はおどけた顔で軽く詫びをいてくれた。


「むっ!?お前がヨーイチローの言っていた親不孝の息子か?

すまんな。ちと悪ふざけが過ぎたな」


別に謝られるほど気にしてはいないのだが……


それに、広間の前に立っていた警護役が村長だったからといって驚いたりはしていない。

そう決して驚いてはいないのだ。


(触れてはいなかったけど、親不孝ってなんだ!?)


これでも俺は、いくら忙しくても、必ず母の日は祝っている。

父の日は覚えていたら、祝う程度だが……


「それにしても、この防具は本当に軽いな。

どんなに動いても邪魔にならない!」


彼女は回ったり、ジャンプしたり色々なポーズでその機動性を確かめていた。

その様子はかなり滑稽に見えた。


先ほどの突拍子もない行動といい、失礼だが、村長とはいえ村のトップがこんな剽軽な人で大丈夫なのだろうか?

この広大な村を治めているぐらいだから、もっと堅苦しそうな人だと思っていたのだが……


「あらためて、自己紹介をさせて頂こう私が6代目の村長"ソニア"だ」


憮然とした態度で名を名乗ったソニアさんだったが、先ほどの登場で台無しである。


すると、広間の入口から必死にこちらへ駆け寄ってくる人物がいた。


「ソニア様、勝手なことをされては困りますぞ!」


そう言いながら、現れたのは熟年の男性だった。

その男性の無数の皺と薄い白髪は長年の苦労を感じさせられた。


「申し遅れました。

私はソニア様のお側をさせて頂いているラパンと申す者です。

ソニア様が非礼を働いたようで申し訳ありません。」


恭しく礼をしながら謝罪をしたラパンさんとは対照的に、ソニアさんは気さくな態度で俺たちに接した。


「じぃ!ヨーイチロー殿らはそのような器の小さい者達ではないぞ。

現に、大いに笑っているではないか」


すると、ラパンさんは深く嘆息を吐いた。


「はぁ、そのような考えではいけませんぞ。

ソニア様はこのバブリア村の村長なのですから。

ヨーイチロー様達が寛大なお方であったら良かったとはいえ、ゴア村の部族ような癇癪を起こしやすい人であったならば、大変なことになりますぞ!」


そんなラパンさんの苦言にソニアさんは辟易とした表情を呈していた。


「じぃ、お前は少し周りに気を配りすぎだ。

もっと、肩の荷を下ろして振舞ったらどうだ?」


ソニアさんの忠言も気にせず、ラパンさんは泰然自若としていた。


「いいえ、周りに気を配らなければこうしてソニア様のお側に使えることはできませぬ。

むしろ、ソニア様がもっと周りに注視するべきなのです。」


1歩も引き下がらないラパンさんに、ソニアさんはどうやら諦めたようだ。


すると、ラパンさんが俺の隣にひっそりと佇んで静観していたナターシャさんを一瞥する。


「ナターシャ殿!あなたがいるにも関わらず、どうして止ソニア様を止めようとしなかったのですか?」


ナターシャさんは起伏のない返事で、事務的に答えた。


「私はソニア様のお客様をお連れするようにと言われただけですので、ソニア様の行いにまで、口を出すことは出来かねます。」


そんな彼女にラパンさんはため息を吐くことしか出来なかった。


「どうやら、あなたも関わっていたのですね」


俺は彼女達に振り回されるラパンさんに同情の眼差しを向けた。


(あの人も苦労してるんだな)


「気を取り直して、ヨーイチロー様、キョースケ様、この度は遠路はるばるおいで頂きありがとうございます。」


「いいえ、こちらこそソニア様と謁見の機会を頂き、感謝しております。」


京介さんは微笑しながら挨拶をした。


これが営業スマイルだろうか、京介さんは社会人としての凛々しい姿をしていた。


一方の父はというと、やや不遜な態度でラパンさん達に接していた。


「ラパンさん。こう言うのもなんだが、ソニアちゃんにはもう少し優しく接したらどうだ?

彼女は大人びた姿をしているが、まだ成人になったばかりなんだろう?」


「は、はぁ」


客人の前だったからか、ラパンさんはやや答えづらそうな返事をしていた。


この国の正確な時間の測り方は曖昧だが、日付に関してはおそらく、月であろう衛星の満ち欠けを観測して、1年の日数を決めている。

しかし、この国の場合、1年中小雨量で気温が高い気候のため、季節という概念は存在しない。


たまに雨が降るか降らないか程度の違いで、人々は特に気づくことは無いらしい。


また、その満ち欠けを一ヶ月とし、約12ヵ月の周期を1年と数えている。

ちなみに、村によって異なるが、バブリア村の成人の歳は18歳ということらしい。

述べてはいなかったが、俺は日本の暦法で数えて17歳であり、彼女は俺と1歳年上ということになる。


(いや、もしその衛星が月だったら、年齢の数え方って若干誤差が生じないか?よくわからんけどな……)


そんな事を考えていた他所で、父達はラパンさんと話を進めていた。


「ソニア様はこれから正式なお召し物に着替えますので、どうか、少しだけお待ちいただけないでしょうか?」


流石に剣と防具というのはこの場では憚れたのだろう。

ロパンさんに注意されたソニアさんはナターシャさんを連れて渋々、着替え場に向かった。


俺たちはそれを気長に待つことにした。


(古くから女性の着替えは時間がかかると言うしな)


俺は多少なりとも、そんな女性の心持ちをわかってはいた。


どれくらい待っていただろうか、手持ち無沙汰になってしまったので、俺は好きな歌の歌詞を脳内で数回に渡って再生していた。


歌というのは1人の男性パイロットとその彼を慕う2人の女性が歌で人類を脅かす敵に立ち向かうという宇宙を舞台にしたSFロボットアニメのTVシリーズ3作目となる作品のOPである。


(うん、やっぱり何度聴いても歌詞の意味がわからない。)


「待たせたな」


どこかの傭兵ボス風の名ゼリフを玲瓏な声音で言ったのは、着替えを済ませたソニアさんだった。


その姿は日本の教科書に載っている卑弥呼の司祭的服装に露出を加えた感じだろうか。

絶妙な露出度とのバランスがどこかのRPGゲームに出てきそうな感じである。


(それにしても、この村の人の肌は皆いい小麦色をしてるな)


この村の露出的な身なりで映えて見えるというのもあるが、本当に良い肌の色をしているのである。


だが1つ言っておこう、どこかの"しげる"のような濃さではない。

例えるなら、グァムやハワイのビーチにいそうな自然に肌を焼いた美女のような感じである。


決して、日サロで人工的に焼いた濃さでは無いのだ。

だからといって、彼が日サロであの肌を維持しているとは思わないが……


また、俺はどちらかという色白より、部活やスポーツで肌を適度に焼いた子の方が好きである。


これ以上言うと、俺の性癖がバレてしまうので、詳しいことはやめておこう。


そんな変態的な事を妄想していた俺にソニアさんが徐に話しかけた。


俺は彼女と目線を合わせる。


(綺麗な人だとは思っていたが、服のせいか、美しさが倍増してるな)


彼女の身なりがその美貌を引き立たせているのは確かだ。


否、正確には彼女の美しさがその身なりを引き立たせていたのだ。


「時に、ヨーイチローの息子よ。

お前の名を教えてはくれないか?」


彼女の姿に見とれていた俺は現実に帰ると、ソニアさんの質問に慌てて答える。


「は、はい。私の名は松田洋一郎と名乗るものでございますです。」


動揺しすぎたせいで、言葉が滑稽なほどおかしくなっていた。


そんな俺の反応に、彼女は先ほどの豪快な笑い声とは想像できないほど、無垢に微笑んだ。


「フッフッフ、そんなに気を張らなくてもよい。お前はじぃではないのだからな」


引き合いに出された当のラパンさんはムスッとした表情をした。


「ソニア様!私は」


「じぃ、うるさいぞ!」


ソニアさんに諌められたラパンさんはシュンと小さくなってしまった。


ここまでくると、可哀想に思えてくる。


どうか、ラパンさんの思いは報われてほしいものだ。

ラパンさんに同情をしていた俺にソニアさんは色々質問をした。


歳はいくつだ?とか、この村は気に入ったか?等だ。


それに一つ一つ答える俺にとってはソニアさんは満足気に笑っていた。

無邪気なその笑顔に俺は周りを忘れて、ソニアさんとの話に没頭してしまった。


「ああ〜、明るくて可愛い子と話せたからって俺達の事を忘れてもらっちゃあ困るな龍。」


父は場所を忘れて、夢中で話していた俺を我に帰らせた。


「すみません」

俺は深く土下座をして謝罪した。


(なんで、土下座までしたかって?)


隣でずっと、微笑して俺を見てくる京介さんが怖かったからだ。



「キョースケ、ヨーイチローすまんな。

私が、彼に多くを質問したせいだ。」


「いいや、龍の気持ちも少なからず分かる。

こんな美人に笑顔で話しかけられたら、そりぁ周りも顧みないよな」


父に自分の気持ちを諭された俺は顔を赤らめてしまう。


「そんな不純な気持ちで接したわけじゃねぇよ」


俺の幼稚な反応を父は面白そうに見ていた。


一方のソニアさんは父の言葉の意味を理解していなかったのか、キョトンとした表情をしていた。


その様子を黙り込んで見ていた京介さんが俺たちの顔を正視すると、こう言った。


「よ・う・い・ち・ろぉ〜?

話しが進まないから余計なことを言わないでくれるか?龍くんも、こんな奴に構っていないでしっかりとして欲しいんだけど?」


京介さんの顔は笑っていた。

しかし、口調とその目は一切笑っていたかった。


「す、すみません。」


俺は京介さんの怒気を含めた忠告にただ謝罪するしかなかった。


色々あって、ようやく話が本題に入った。


本題というのは、もちろんこの村に温泉施設を作るということだ。


父は松田屋を、京介さんは新たな温泉施設を建造するという対立する計画のなかで、話が進むように思われた。


というか、この場所に温泉などあるのだろうか?

そんな事を父に尋ねたところ、どうやら可能性としては十分にあるらしい。


それはバブリア村から離れた場所。

俺が転移した場所の近くにあったマスディオ火山と関係している。


温泉には非火山性温泉と火山性温泉の二つがある。


非火山性温泉は雨などによって地下に浸水して、溜まった水が地熱によって温められてできるもの。(温泉源は地下深くに存在する。)


そして、今回の温泉埋蔵地と考えられる火山性温泉は

地下のマグマ溜まりによって温められた地下水が断層(地下の地層もしくは岩盤の割れ目)や掘削などによって割れた層から湧き上がるもの。

(非火山性温泉と比べ、浅い場所でも発見される)


非火山性温泉には他に細かい区分があるが、だいたい、こんな所である。


また、以前に京介さんがこの地に訪れたころ、マスディオ火山の地質調査をしたらしい。


その時に超膨大な量の水源を発見したらしく、火山近くであることから、温泉であると推定したそうだ。


それゆえに、父と京介さんはこの地で温泉事業を進め、それの現地協力を得るため、マスディオ火山に近いバブリア村に依頼したというわけだ。


「キョースケ。

昨日の話しを検討した結果、私は承認することにした!」


「ありがとうございます!」


京介さんは満足そうな顔をしていた。

しかし、その横でラパンさんは驚愕としていた。







































































区切りがいいので次回は登場人物と用語をあらためて、紹介します。

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